35周年を迎えたキリンビバレッジの『午後の紅茶』。今や“午後ティー”の愛称で浸透しているが、35年に及ぶ長い歴史のなかには、低迷期での苦難や、それを乗り越えるための試行錯誤があったという。そんな道のりを今回、キリンビバレッジマーケティング部・加藤麻里子さんに聞いた。
■初年度は数十万箱という規模が、現在では約5000万箱という市場へ拡大
――今では老若男女問わず愛されている紅茶飲料ですが、35年前の紅茶市場はどんな状況だったのでしょうか。
【加藤麻里子】発売当時(1986年)は、缶の紅茶しかなく、味もすべて甘いものでした。そんななか、当時の開発者が「缶やペットボトルに入っていてすぐに飲めて、紅茶本来の味わいが楽しめる美味しいアイスティーが作れないだろうか?」という疑問から開発がスタートしました。
当時の年間出荷箱数からみると、初年度は数十万箱という規模でしたが、現在では約5000万箱という市場へ拡大しています。また、2020年での清涼飲料水の市場としては午後の紅茶ブランドは8位となっています。しかも、紅茶としてTOP10にランクインしているのは午後の紅茶だけなので、皆さんから愛され支持されているのだと実感しています。
――今の人気になるまでに開発面で苦労もあったかと思います。
【加藤麻里子】1番最初に午後の紅茶を開発した方から伺ったエピソードなのですが、午後の紅茶を発売するにあたり「ペットボトル容器で飲める」という点が絶対条件だったそうです。紅茶は急速に冷やすと白く濁ってしまうという性質があり(当時は白く濁らないようにする技術が存在しておらず)、問題を改善するために何回もトライしたようです。
――その課題を解決した突破口というのは?
【加藤麻里子】その開発者は当初「白く濁らないようにする」という点に注視していたそうですが、それではなかなか突破口を見出せなかったそうです。そこで「濁りをとる」という発想の転換から“クリアアイスティー製法”が生み出され、ペットボトル入り紅茶の商品化に成功しました。そこで生み出された成功や理念は発売時から変わらず、今も「茶葉から淹れたクリアな紅茶」にこだわり続けています。
■築いてきたアセット(資産)やイメージを壊していたのが“逆境”の要因に
――35年という歴史のなかで、どんな逆境があったのでしょうか。
【加藤麻里子】過去35年間を遡ってみると、2000年~2002年の3年間ではさまざまな要因が重なり、低迷期を迎えた事実があります。要因は複数ありますが、まず無糖茶系のトレンドがやってきて「甘くない」ニーズが高まってきたという点があげられます。
そして、パッケージ面では、午後の紅茶のトレードマークであるアンナ・マリア(夫人像)を削除したり、ロゴにある“午後の紅茶”表記が1行から2行になっていたりと、今まで午後の紅茶が築いてきたアセット(資産)やイメージを壊していたのが、低迷の要因だったと考えています。その後、2003年より味の改変を行い、お客様のニーズに合わせて「ゴクゴク飲めるよ」というリニューアルを行ったことで、問題を解決してきました。
――午後の紅茶は「飲んだ後も楽しめる」印象的な仕掛けを行ってきました。
【加藤麻里子】ディズニーデザインラベルや、並べて楽しい夢の午後ティーパーティーをはじめ、銀座コージーコーナーさんや森永製菓さんなど、さまざまなコラボや仕掛けを試みてきました。また、大きなイベントだけでなく、スーパーに行って“午後の紅茶を購入するとプレゼント!”などといった楽しい施策もあり、これからも展開していく予定です。そして、まだ詳細はお伝えできないのですが、35周年記念というところで、たくさんのお客様に楽しんでもらえるアイデアを進行しているので楽しみにしていてください。
■組み合わせで“意外な発見”も?「カップ麺との相性がピッタリ」
――さまざまな楽しみ方がある午後の紅茶ですが、食べ物とのオススメの組み合わせなどありますか?
【加藤麻里子】「おにぎりと紅茶」というコミュニケーションから始まり、最近ではカレーとの組み合わせも打ち出し中です。おいしい無糖が口の中をさっぱりさせるので、次の一口も新鮮でおいしくいただける提案です。このようにストレートティーに関しては、さまざまな組み合わせでおいしくいただけるのですが、個人的なマイブームですと「ハンバーガー」がオススメです(笑)。また、レモンティーだと「いなり寿司」、ミルクティーはピザのようなチーズがのっているものと合いますね。
また、意外な発見もあって、昨年の秋からセブン&アイグループ限定で発売しているキリン 午後の紅茶 おいしい無糖レモンと、セブンイレブンが展開している「カップ麺」との相性がピッタリなんですね。個人的には豚骨味が強いラーメンほど、スッキリなレモン味とマッチしていると考えています。
――おにぎりと紅茶も新鮮でしたが、いろいろな料理とマッチするんですね。
【加藤麻里子】紅茶の本場イギリスでは、ティータイムだけじゃなくディナーでも紅茶を飲む習慣があるので、午後の紅茶の“おいしい無糖”によって、日本の食卓でも午後の紅茶を日常茶として楽しんでいただけるよう定着させていきたいです。
――35周年ということですが午後の紅茶における第1号デザインはどんな感じだったのでしょうか。
【加藤麻里子】先日、35周年のブランド発表会に際して、35年前に発売したストレートティーを復刻させました。商品のラベル部分に、オススメの飲み方が書いてあったんです。そこには「そのままでも、ジャムやブランデーと合わせても」って書いてあり、「お酒?」と少しビックリしたのと同時に、35年の長い歴史を感じられる瞬間でした。
――今後、午後の紅茶ブランドはどんなことに挑戦していきますか?
【加藤麻里子】これからもっと長く皆さんから愛されるように、午後の紅茶ブランドを通して「幸せなときめきを届ける」という信念を大事にしていきます。お客様が午後の紅茶を見たときに、少しでも幸せな気分や幸せなときめきを感じていただけるようになるために細かな点までこだわっていきたいです。
また、キリングループとしても宣言しているのですが、午後の紅茶発の社会貢献活動なども持続性をもって行い、より多くの方たちに幸せなときめきをお届けできればと思います。