コロナ禍の中で迎えたいちご狩りシーズン。今年のいちご狩りを中止する農園もある中、いちご生産量日本一を誇る栃木県真岡市では、自宅にいながらいちご狩りが楽しめる「オンラインいちご狩り」が開催されている。外出自粛でいちご狩り農園も苦境の中、同市初の試みとなった「外出しないいちご狩り」の魅力とは。
■新種「とちあいか」をZoom越しにいちご狩り、摘んだいちごはパックで配送
真岡市が主催するオンラインいちご狩りは、市内のJAはが野井頭観光いちご園で開催。オンライン会議アプリ「Zoom」を用いて、農園と1回につき5組の参加者とをカメラで繋ぎ、生産者の大塚さんがおすすめするいちごを、大きさや色合いが分かるようにアップで映し出す。参加者はほしいと思ったいちごがあればカメラ越しに挙手で希望し、選ばれたいちごを大塚さんが摘み取ってカップにしまっていくという仕組みだ。また、大きさなど参加者側のいちごの希望があれば、その条件に合ったいちごを大塚さんが選んでくれる。いちご狩りの時間は約30分から40分ほど。
このイベントで摘めるいちごは、2020年に初出荷され、今シーズンから本格的に収穫がはじまる完全新種「とちあいか」。摘んだいちごはその日のうちに参加者に配送され、まだ市場にあまり出回っていない希少ないちごを自宅で味わうことができる。また、イベント中は、生産者の大塚さんがおいしいいちごの見分け方のコツをレクチャーするなど、現地の生産者とやり取りをしながら好きないちごを探せるのもポイントだ。
■コロナ禍でオンラインイベント普及、「いちご狩りでも」と初の試み
真岡市では近年、県外に向けたいちごの積極的なPRにあたっており、有楽町でのいちごの無料配布など、さまざまな取り組みを行ってきた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年3月に市内で開催が予定されていた「全国いちごサミットinもおか」の開催延期をはじめ、県外に向けたいちごのPRイベントが行えない状況が続いている。そうした中で、オンライン飲み会などネットを活用した在宅イベントが話題になったことから、オンラインでのいちご狩りが発案されたという。
「コロナ禍による外出自粛で、市内の観光いちご園の来園者も減少していますが、今年も変わらずおいしいいちごがなっています。昨年はオンラインを活用したイベントがメディアでもよく取り上げられ、広まっていた時期でしたので、いちご狩りももしかしたらできるのではないかと考え、この取り組みを実施しました」(真岡市情報政策課シティープロモーション係・小宮さん)
■抽選倍率3倍越えの反響、北海道や九州からの参加も
オンラインいちご狩りは真岡市では初の試みということもあり、イベント進行やオンラインでいちごの魅力がうまく伝わるかなど、不安な点もあったと話す小宮さん。だが、12月に行った50組の募集には、全国から183組の応募があり、抽選倍率3倍を超えるほどの反響を集めた。
画面上でも映えるように、いちごがすずなりになるタイミングをいちご農家の大塚さんが調整。いちごの大きさを伝えるために500円玉と比較したり、大塚さんおすすめのいちごを参加者がじゃんけんで勝ち取るゲームを行ったりするなど、随所でオンラインでもイベントの臨場感を高められるような工夫を行ったことで、参加者からは好評だ。
「これまで参加されたみなさまの全員から、『楽しかった』という声をいただいています。ご家族で参加された方もいて、お子さまにも楽しんでいただけたようです」(小宮さん)
さらに、今回のイベントには、北は北海道、南は熊本県や宮崎県など、遠方からでも参加できるというオンラインならではの利点もあった。小宮さんも「これまでの県外イベントは首都圏までしか行けませんでしたが、オンラインでエリアがぐっと広がって、コンパクトにアピールできる」と可能性を見出す。
リアルイベントの単なる代替ではなく、オンラインだからこその魅力を秘めた新しいスタイルのいちご狩り。真岡市は、オンラインいちご狩りと新種「とちあいか」が好評だったことに加え、緊急事態宣言による外出自粛という状況を踏まえて、2月にオンラインいちご狩りの追加日程を決定。1月27日(水)までネット上で参加抽選予約を受け付けている。コロナ禍の中でもいちごシーズンを安全に楽しめる新体験に注目だ。