新型コロナウイルス感染症の影響によりニューノーマル(新常態)時代を迎えた現在。働き方はもちろん、人々のライフスタイルも大きく変化した。そんななか、親子で楽しむ“おうち時間”のひとつとして「模型製作」への回帰が注目されている。実際、模型ツール専門店「ゴッドハンド」の営業事業部・村山さんによれば、ニッパーや紙ヤスリといった主力商品のほか、「こども用ニッパー」が大きく売り上げを伸ばしているのだという。
■ニッパーとしては高価格帯、それでも支持される要因は…?
――ゴッドハンドは模型ツール専門店とのことですが、工具のラインナップと主力商品を教えてください。
「ラインナップとしてはニッパー、ヤスリ、筆、ピンセット、ニッパーメンテナンス用品などです。変わり種として、回して使える彫刻刀スピンブレードや、交換式刃のアメイジングカッターがあります。主力商品としては、アルティメットニッパーと神ヤスがメインになります」
――ゴッドハンドの代名詞である「ニッパー」について詳しくお聞きします。御社のニッパー「ゴッドハンド アルティメットニッパー5.0 プラモデル用工具 GH-SPN-120」は、通販サイトで7000円以上の値段で売られているものもあります。これは模型用ニッパーとして一般的な値段なのでしょうか、それとも高額なのでしょうか。
「アルティメットニッパーは希望小売価格が4800円(税別)なので、やはり高額な部類にはなります。模型用ニッパーは安いもので1000円以下、実売3000円前後の価格帯の物が人気のようです」
――いま、ニッパーは100円ショップで手軽に購入できます。御社の高価格帯の工具が支持されている理由といういのは?
「弊社のニッパーは、燕三条(新潟県の三条市と燕市は『金物の町』として有名)の刃物職人が手作業で刃付けを行う切れ味の優れた極薄刃になっています。そのため、職人技による切れ味のよいニッパーをご提供させていただいております。ニッパーの切れ味がよいことで作業の疲労感が軽減でき、切断後の作業も楽になります。また、使い方をご提案させていただいていることで作業性を格段に上げることができ、“模型工作の楽しさ”を純粋に味わえるところが支持されているのだと思います」
――高いクオリティの工具を生み出す苦労もあったかと思います。
「苦労した点はニッパーの刃付けですね。切れ味を確保するために刃を極限まで薄くしていることで刃折れが起きてしまい、強度との兼ね合いを出すのにとても苦労しました。さまざまな刃折れの防止機能や刃の見直しを行い、皆様が扱いやすい今の状態になっております」
■『こどものニッパー』の売り上げ増は、家族で模型製作を楽しんでいる証拠
――コロナ禍により、ガンプラなど“おうち時間”で楽しめる模型の売り上げが上がっていると聞きます。御社の模型用工具の売り上げにも変化がありましたか?
「アルティメットニッパーは職人が手作業で刃をつけている都合上、生産数が上げられず売り上げはあまり変わらないです。ですが、他の商品、特に神ヤス(スポンジ一体型の布ヤスリ)などは、お陰様で売り上げが昨年比50%増しとなっております」
――外出できない親子が模型作りで共に時間を過ごし、かつて模型に親しんだ大人たちが久々に模型を手にして組み立てている…という模型業界の話が聞こえてきます。こうした「模型回帰」は感じますか?
「弊社で取り扱っている『こどものニッパー』(税別3200円)の売り上げが、コロナ禍に入ってから売り上げが伸び、昨年比で約1000%アップとなりました(※2019年5月~2020年4月と2020年5月~2020年11月までを比較)。これはつまり、模型に復帰した親御さんがお子さんにニッパーを買ってあげて、一緒にプラモデルを作っている証左ではないでしょうか」
――こどもと一緒に工作をするために、お父さんが「よいニッパーを買ってあげたい」と思ったんでしょうね。模型製作における「工具の重要性」とは?
「模型を作るうえでより『楽しく』なることだと考えています。よい工具を使うことで面倒な手間が省けたり、新しい改造に挑戦できたりします。弊社製品はそういった部分のお役に立てるように開発・設計を行っております」
――コロナ禍において「模型業界」の今後はどうなると考えますか?
「コロナ禍により家の中で模型を作る方が増えました。この増えた方々が少しでも模型に楽しさを感じて、模型工作を続けてくれるようにするのが課題だと考えています。弊社の工具が少しでもそのお役に立てるように、引き続き努めて参ります」
取材協力:模型ツール専門店「ゴッドハンド」