2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で会場デザインや運営、テーマごとの事業を担当するプロデューサーが決定。7月13日、大阪市北区のリーガロイヤルホテルで発表記者会見が行われ、映画監督の河瀨直美氏をはじめ、10人のプロデューサーが発表された。
■「いのち輝く未来社会のデザイン」を世界に発信する
会見の冒頭、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会会長の中西宏明氏は「この万博は『いのち輝く未来社会のデザイン』を世界に発信したい。関西・大阪から発する世界へのメッセージと思って盛り上げていきたい」と意気込みを語った。
また、梶山弘志経済産業大臣も映像を通して「会場は新たな技術の実験場としたい」とメッセージを送った。
プロデューサーは東京会事務総長の石毛博行氏から発表。メインテーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現するため、会場をデザインする会場デザインプロデューサー、万博を成功させるための運営を担当する会場運営プロデューサーに加え、「いのち輝く未来社会のデザイン」を8つのテーマに分けて各プロデューサーの指揮のもと、事業を展開する。
■メインテーマを8つに分割し、事業を展開
会場デザインプロデューサーには東京とパリに事務所を持つ建築家の藤本壮介氏が就任。会場運営プロデューサーはプランナー、プロデューサーとして活躍し、2005年の愛知万博でチーフプロデューサー補佐を務めた石川勝氏が担当する。
8つのテーマのうち「いのちを知る」を担当する生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一氏はあいにく来場できなかったため、映像で「生命は38億年の長い進化を経て成り立っている。コロナという困難を乗り越え、新しい人類の未来を拓くような展示を」とメッセージを伝えた。
■これは未来に渡すバトンを作る仕事
アニメーション監督でメカニックデザイナーの河森正治氏は宇宙や海洋、大地に宿る命をテーマにした「いのちを育む」を担当。映画監督の河瀨直美氏は「いのちを守る」がテーマ。「心の豊かさ、明るい未来を作るのは私たちそのものの生命」とメッセージを送った。
「いのちをつむぐ」がテーマの放送作家の小山薫堂氏は故郷の熊本の水害に触れ、悼みを述べるとともに「これは未来に渡すバトンを作る仕事。その価値を問われるのはもっと先」と襟を正す。
■50年後、どんなレガシーを作れるのか
ヒューマノイドやアンドロイドの開発で知られる大阪大学栄誉教授の石黒浩氏は「いのちを拡げる」がテーマ。50年前の大阪万博を振り返り「今でも影響を受けている。これからのミッションは今後の50年にどういう新しいレガシーを作れるか」と意欲的だ。
音楽家で数学研究者の中島さち子氏は「いのちを高める」がテーマ。メディアアーティストの落合陽一氏は「いのちを磨く」をテーマに、フィジカルとバーチャルの融和により、自然と調和する芸術の形を追求するとする。
最後に登壇した慶応義塾大学の宮田裕章氏は「いのちを響き合わせる」がテーマ。「万博のレガシーは、日本が世界と響き合わせながら新しい形を作っていく。万博への取り組みはすでに始まっている」と締めくくった。
■宇宙飛行士の山崎直子氏はシニアアドバイザーに
今回、10人のプロデューサーが発表されたが、全体を統括するプロデューサーはおかれない。建築家の安藤忠雄氏をはじめ、昨年就任した13人のシニアアドバイザーが統括する役割を担う。なお今回、新たに河瀨直美氏、宇宙飛行士の山崎直子氏がシニアアドバイザーに就任したことが発表された。河瀨氏はプロデューサーと兼任することとなる。
取材・文=鳴川和代/関西ウォーカー編集部