また、高津川は国土交通省の水質調査で「清流日本一」に複数回選ばれており、一級河川でありながらダムの無い、日本では珍しい川です。水質が良い=水が澄んでいる事の恩恵を受け、高津川で獲れる鮎は日本有数の味わいとされており、全国を食べ歩いている食通からの評価も非常に高い次第です。また、河口で獲れる大型の天然本ハマグリ「鴨島蛤」も格別の味わいを持っています。山や木々の恵みをたたえた清流、それが高津川です。
高津川の鮎は6月上旬に解禁され、10月中には禁漁にしているとの事。子持ちの鮎、いわゆる「落ち鮎」は資源保護の観点によりあまり獲られる事が無いそうです。残念な事に漁獲量は年々下がっており、組合の取扱量として、10年前は15トンあったところ、平成22年頃から7〜8トンに下がり、平成25年の水害のあとは約2~3トンまでに減っているそうです。理由としては、鮪のような乱獲ではなく、大雨などの自然災害による影響が最も大きいそうで、近年の気候変動は頭が痛いところです。いただける時には、自然の恩恵と漁師さんへの敬意を持っていただきたいところです。
旨さの秘訣はズバリ、時間と手間。フレッシュな天然モノを大量に用い、カメで3年間熟成して作っておられるそうです。熟成による旨味成分の変化を科学的に調べたところ、3年目以降にアミノ酸が増加し、5年程で天井に到達し、3年あたりが良いとのことで製品化されたとの事です。「うるか」だけでなく「子うるか」も美味しいので、合わせていただくと楽しいかと思います。また、界隈では甘露煮はあまり作らず、むしろ一夜干しや鮎鮓などシンプルな料理で食す事が多いそう。そして、お正月の雑煮は鮎出汁との事で、いただいてみたくなりました。高津川漁協謹製の食品は、東京のアンテナショップ、「にほんばし島根館」でも入手出来ます。東京にお住まいの方は、是非!
女将さん、若女将の接客もきめ細かく、心地良く御料理を楽しむ事が出来ます。鮎シーズンのコース料理は基本的に鮎のみで構成されており、文字通り余すところなく鮎を満喫出来ます。
定番の【鮎の背ごし】や【鮎の塩焼き】は定番の調理であるが故に、高津川の鮎の素晴らしさをダイレクトに伝えてくれます。そして、【鮎の清汁仕立て】や【うるか茄子】など創作的な御料理に鮎の奥深さを再認識し、締めの【鮎めし】では、たっぷりの鮎にお腹も心も満たされて至福のままにコースを終えます。わざわざ足を運ぶ価値のある、唯一無二のお店だと感じました。尚、鮎以外のシーズンには天然のスッポンや河豚のコースを供されておられ、ツガニや島根県産の松茸もいただけます。
【美加登家:鮎の背ごし】
鮎のお造りと言えば、矢張り背ごし。高津川の厳選された鮎を用いた背ごしは、高貴とも言える素晴らしい香りを楽しませてくれます。そして、旨味、甘みが幾度となく届き、軽い苦味がキリッと引き締めてくれます。しかし、余韻から逃れる事は出来ません。一度口に運べば、ひたすら幸福な余韻に包まれるのみです。
【美加登家:鮎の塩焼き】
鮎の塩焼きは素材の良さのみならず、焼きの技術に味が大きく左右されます。料理人の経験とセンスが特に物を言う魚です。美加登家さんの塩焼きは完璧とも言える振り塩と焼き方であり、頭から尻尾まで丸ごとリズミカルにいただけます。頭はカリッと、皮はパリッと、身はホロホロしっとりに焼き上げています。塩焼きのイメージが変わる事かと思います。
【美加登家:鮎めし】
極上の鮎をたっぷりと楽しませていただいた後、これでもか!と喜びの追い打ちをかけてくれるのが、こちらの鮎めし。米粒は一粒一粒に鮎の旨味をまとっており、コースの最後まで香りを楽しませてくれる秀逸な締めものです。鮎は丁寧に骨が取り除かれており、味付けのみならず調理も繊細です。
美加登家
住所:島根県鹿足郡津和野町日原221-2
電話番号:0856-74-0341
営業時間:11:00~19:00(要予約)
定休日:毎週月曜日、8月13日~16日
益田にあって知る人ぞ知る名酒場、田吾作。居酒屋巡りで著名な太田和彦氏をして「日本一の居酒屋」と言わしめた田吾作では、日本海の極上の素材をいただく事が出来ます。女将さんは20歳の頃にお店を開き、2017年で開店から50年を迎えます。なんとイカ専用のタンクを積んだトラックを走らせ自ら仕入れに行き、店内にはイカたちが泳ぐ大きな生け簀が設置されております。イカ一つとってもここまでの熱量を注いでおられるため、他の素材も抜群の美味しさである事は言うまでもありません。
この度訪問するにあたり、我々は先ずこちらのお店で供されているお酒を造っておられる桑原酒場さんを訪問しました。
桑原酒場さんは、フルーティな香りや甘みを追求したお酒は造っておられず、昨今の流行とは異なる硬派な酒造りをされています。
故に、魚を引き立てる。田吾作さんでは店舗専用の酒「田吾作」をいただけます。定番の【真イカの刺身】でスタートし、杯を傾け、その他季節の刺身をいただきつつ、夏には【高津川の鮎の塩焼き】や【鴨島蛤の酒蒸し】など、益田が誇る極上素材に舌鼓を打ちます。「居酒屋」の枠を超えた独自の魅力があるお店です。
【田吾作:真イカの刺身】
イカは鮮度が大切な素材で、鮮度によって味わいと食感を大きく変えます。イカ専用タンクを備え付けたトラックで仕入れ、店内の大きな生け簀で管理された田吾作のイカ刺しは他店とは一線を画します。全国で考えてもトップクラスのイカ刺しでしょう。
【田吾作:鴨島蛤の酒蒸し】
美味しい鮎が育つ清流、高津川が海と合流する地点、それが鴨島。鴨島の蛤は高津川と益田川に挟まれたわずか1.5kmほどの浜で育ちます。7cm未満は獲る事が出来ず、出漁時間や漁獲量が規制されており、サステイナビリティに考慮したブランド蛤です。田吾作では極上の蛤をシンプルに調理。蛤本来の旨味が引き出されています。
【田吾作:鮎の塩焼き】
居酒屋で高津川の天然モノの鮎を頂けるとは嬉しいですね。何よりも香りに富み、旨味もしっかりした鮎は夏の喜びを与えてくれます。思わず飲んでいるお酒のペースを落とし、黙々とかぶりついてしまいます。
田吾作
住所:島根県益田市赤城町10-3
電話番号:0856-22-3022
営業時間:12:00~24:00
定休日:無休(不定休)
高津川の鮎を食べられるお店