沖縄・宮古島を舞台にした小説「お父さんはユーチューバー」(双葉社)が、7月27日、発売された。
「お父さんはユーチューバー」は、映画化もされた小説「AI崩壊」などを手掛けた、1979年奈良県生まれの作家・浜口倫太郎氏による小説。「読書メーター」の読みたい本ランキング(6月1日〜6月8日)でも1位になるなど、発売前から期待の高かった作品だ。
丸紅茜氏の表紙のイラストが印象的な本書の舞台は、沖縄の宮古島。主人公は、この島でゲストハウス「ゆいまーる」を営む勇吾で、小学生の一人娘・海香と一緒に暮らしている。
勇吾は、いかにも“海の男”のような大らかで豪快な父親で、のんびり楽しくゲストハウスを営むかたわら、頭では常に手っ取り早くお金を稼ぐ方法を考えているような、どこか調子のいい一面を持つ。
ただ、その性格には人を引きつける魅力があり、最初は客としてこのゲストハウスに来た元気と一休(いっきゅう)という2人の若者が勇吾に惚れ込み、住み込みでヘルパーとして「ゆいまーる」を手伝うようになった。
また、勇吾の幼なじみ虎太郎、さらにこちらも勇吾の人柄に惚れて宮古島に移住した唯というカウンセラーも、ことあるごとに「ゆいまーる」に集まってくる。
そんなある日、勇吾がいつものようにお金儲けとして、今はやりのユーチューバーになると言い出し、周囲を巻き込んで急速にのめり込む。
最初は再生回数5回という寂しいスタートだったが、無謀にも10万回の再生はあるだろうと目論んでいた勇吾ががく然とする“リアクション”を撮影して投稿したところ、図らずもそれから右肩上がりに視聴回数は伸びていった。
物語は、そんな勇吾のユーチューバー生活、島の人たちとの交流とともに、勇吾が若かりし頃に東京で芸人を目指して貧乏生活をしていた過去の話が随時差し込まれる形で進行していく。
テンポ良い物語構成はもちろん、島特有のお酒の飲み方「オトーリ」や「花ブロック」「宮古まもる君」「サーターアンダギー」「池間島の八重干潟(やびじ)」「与那覇前浜」など、沖縄や宮古島の文化やスポットが随所に入り、沖縄ファンへの仕掛けも楽しく読み進められる。
そして、物語後半176ページからの急展開は、そのタイトルからは想像もできない結末へと向かっていく。
宮古島を舞台にした感動の物語が、また1つ誕生した。
「お父さんはユーチューバー」
発売中 1,400円(税別) 双葉社