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Vol.12 若山利文さん
一石三鳥といえる環境にやさしい新技術にかける

  • 2007年11月1日

フランスの養殖牡蠣は、日本原種の末裔

写真  1970年代初め、フランスの牡蠣の養殖場で病気が発生し、ほとんどの養殖牡蠣が壊滅状態に陥ったことがあり、フランスの業者に頼まれて、日本から緊急に病気に強い広島や仙台の的矢牡蠣の種を大量に空輸でフランスに持ち込んだという。日本産の種牡蠣は、フランスの環境に見事に順応し、壊滅に瀕していたフランスの養殖業を救っただけでなく、新しい種の導入により、日本原種の牡蠣が美食家フランス人の味覚を楽しませているが、そのことを知っている日本人は少ない。

 フランス人と食卓を囲んだ時にその話をすると、「生牡蠣」の大好きなフランス人は目を丸くして、「今我々が食べている牡蠣は日本から緊急輸入された物の末裔だということは知っていたし、有名な話だけれど、あれはあなたがやったのか、ブラボー、メルシー」と敬意に満ちたまなざしで礼を言われ、ときには握手を求められるという。

 この時、食の安全の大切さを知ったという。現在取り組んでいるバイオマス事業の有機水産や有機農業への思いもここにあるようだ。


自然の摂理を利用した新技術「ズーコンポスト」

 食の洋風化や農業の近代化が進むなかで、飼料を輸入に頼る加工型畜産が主流になり、このため大量の家畜糞尿を抱えるようになり、悪臭、川や湖沼、地下水の汚染など深刻な畜産公害と呼ばれる問題を引き起こしています。

 家畜ふん尿は枯れ葉や藁と混ぜ合わせ堆肥とし、農地に返すことが基本ですが、堆肥化に4〜5ヶ月掛かることや効率の良い化学肥料の普及で需要が伸びていません。若山さんが着目したのは、ロシアの宇宙技術のなかで、リサイクル技術として研究されてきたイエバエの活用でした。

写真
イエバエの卵がふん尿を分解し、7日間でサラサラの有機肥料に
写真
抗菌、高タンパクの幼虫は有機飼料に
 豚糞にイエバエの卵を接種し、幼虫に孵(かえ)しその幼虫にふん尿を処理させるというものです。もちろん温度や湿度を整え、幼虫の本来の活動を活発化させ、僅か7日間で優れた有機肥料(写真右上)とタンパク質の豊富な幼虫(写真右下)を生産するというもの。このロシアで研究された幼虫は自らの特殊な酵素でふん尿を分解し、肥料も幼虫自身も抗菌性の高い物質なのだそうです。これが限られた宇宙空間で人間が生き延びるために開発されたシステムなのです。

 この幼虫を乾燥粉末化し、生体の細胞を活性化し、病気の原因となる活性酸素を除去する力を持ったマイナス水素イオン粉末を加え、養殖魚、ウナギ、養鶏などの飼料に10%程混ぜて与えると抗生物質の投与がなくても罹病せず、健康で安全な食品に仕上がると言います。

 糖尿病、膠原病、心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病や癌に、活性酸素が関与していることはよく知られていますが、水素粉末を食品に配合することで多くの病気を治すことが出来るという臨床的可能性が学界で相次いで発表されています。水素を粉末にする画期的な発明の独占的事業化権を持つ若山さんはこの水素を活用して、鶏インフルエンザや鯉ヘルペスを予防し、安全な魚やウナギと有機肥料で栽培された新鮮な野菜を食卓にという「夢のリサイクルシステム」に向かってスタートを切りました。


ズーコンポストで「食の安全・安心」を

写真  飼料の高騰に悩む畜産農家にとっては、ふん尿廃棄の費用が不要になり、蓄糞公害が解消され、副産物の肥料や幼虫が販売出来ることで収入が増えるという夢のようなプロジェクトなのだ。

 近年、生活者の「食の安全・安心・品質」への関心は高く、安全で、良質な野菜、穀物が望まれている。有機肥料の供給で農薬の使用が軽減され、安全で食味のよいものが生産され、養殖、養鶏で薬品の投与が減少し安心して食べられる魚や鶏は受け容れられると確信しているようだ。まさに一石三鳥というのも頷ける。

写真北海道、神内ファーム会長に熱っぽく語る若山さん  イエバエの培養や実証には既に宮崎県都農町に実験農場を持ち、10年以上の研究を重ねてきて全国から見学者も多く関心は高いという。養殖エビや養殖うなぎを輸出商品にしてきたベトナムなど東南アジアからの引き合いも多く見学に訪れているという。

 化石燃料の弊害が顕著化した今、植物由来の原料を活用して石油に代わる、バイオ燃料、植物性プラスティック、蓄糞をリサイクルしてメタンを取り出しエネルギー源としていく、ズーコンポストで有機農業、有機水産に有効に活用していく事業は21世紀型の持続可能な社会の実現に近づくだろう。この一片を担う若山さんのプロジェクトにかかる期待は大きい。


取材後記
取材を通じ、常にポジティブな若山社長のこの事業に賭ける意気を感じた。既にマイナス水素イオンの固定化に成功し「毎日水素」というサプリメントで健康食品業界を独走中なのだ。有機農業への思いは都農町に10万平米の農地を取得し、今後も増やしていく計画ということに感じられる。バイオ技術で持続可能な社会づくりに励む若山社長の活躍に注目。


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