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第21回 麗澤大学教授 / 大橋照枝さん
ロハスの極み、幸福大国“ブータン”

  • 2010年1月21日

花は切らない、蝿一匹殺生しない

豊かな自然と独特の文化、仏教を土台にした生活様式は?

ブータンのジグメ・Y・ティンレー首相と大橋さん
ブータンのジグメ・Y・ティンレー首相と大橋さん
 ブータンには切り花を売る花屋はありません。仏教の教えが深く浸透しているブータンでは、チカラいっぱい生をまっとうして咲く花を切って売り買いすることはご法度です。
 また、例えば蝿がコーヒーカップに入ったとします。「大丈夫」とブータン人が聞きますが、これはコーヒーが大丈夫かでなく、蝿が大丈夫かを聞いています。「すぐ蝿を(救い)出せ」となります。
 道端に犬が寝そべっています。近づいても動こうとしないので「野良犬」と聞くと、「いえ私たちみんなの犬です」というわけでみんなで餌をやり世話をしているのです。


巧みな国際関係づくり

環境や文化を守る国づくりはどのように・・・

ブータンの第2の都市“バロ”
ブータンの第2の都市“バロ”の市街地を見下ろす
 ブータンの収入は、インドへ売電している水力発電の電力で歳入の40%を占め、2番目が観光業、3番目が農産物(じゃがいも、リンゴなど)と林業(チーク材など)です。人口の70%が農業従事者ですが、農に何らかのかかわりをもつ人は98%になり、自給自足の国です。その中で、教育と医療は無料。その費用が歳出の約30%を占めるのです。
 そして、ブータンの歳入の不足分、約33%は、国際援助(日本からの援助も含まれる)。つまり、援助を受けた分を、そっくり、教育と医療に回しているといってもよい。
 国連、IMF、FAD、世界銀行などに加盟し前国王(第4代国王)のたくみな政策で、国際関係づくりがうまく、GNHのキャッチフレーズは、欧米先進国にも浸透しています。
 GNHという誰も反対できないスローガンで、援助などもうまく引き出していると思われます。


「貧困」の定義や基準はGNHの国にあてはまらない?

 ブータンの生活水準は確かにまだ高いとはいえないかもしれませんが、人が困っていたらみなで助けあいの手をさしのべる国であり、97%が“幸福”と答える国です。
 一方国際的には1日一人1$以下で暮らしている国を貧困と定義されており、この定義にてらせばブータンも貧困な人達は少なくないかもしれないが、助けあいのセーフティネットがあるブータンでは欧米流の価値観だけの尺度で、幸福度は計れないのではないかとも思っているのです。
 18冊目の単著(ブータンに関する本)へ乞うご期待を!

主な著書
『リゾート立国—モナコにみる開発戦略』(NTT出版)、『パーソナル消費時代のマーケティング戦略情報システム』(TBSブリタニカ)、『ニューシングルズパワー』(東急エージェンシー)、『未婚化の社会学』(NHKブックス)、『デジタル時代のパーソナル・マーケティング』(NTT出版)、『静脈系社会の設計—21世紀の新パラダイム』(有斐閣)、『環境マーケティング大全』(麗澤大学出版会)、『満足社会をデザインする第3のモノサシ』(ダイヤモンド社)、『ヨーロッパ環境都市のヒューマンウェア』(学芸出版社)

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