旅の中でダライ・ラマと同行取材をしていましたね。
生きた言葉、常に全力投球で演説、リスペクト!
初めてダライ・ラマを見たのはダライ・ラマの王宮前にあるお寺の本堂でした。「大きい!」というのが第一印象です。法衣とヘアースタイルがそう思わせるのでしょうか。圧倒的な存在感。みなぎっているのに静か、とても大きな、クジラのような安定感を感じました。
僕の前を通り過ぎると本堂の玉座に座り、マイクで何時間もお経を読まれました。本堂内も本堂外の通路、一階、お庭にもエンジの僧衣を着たお坊さんがぎっしりいました。千人ほどの僧による一斉の読経は重低音が全身の骨に響き波打つような迫力を感じました。その中に俳優のリチャード・ギア氏もおられました。その日はチベット語の響きを耳にするだけで何を言っておられるのかは全然わかりませんでした。
ところが次の取材で、僕のダライ・ラマに対する認識は一変しました。デリーの上流階級の人々を相手に公演された時、通訳の方から内容を聞いて驚いたのです。要約すると、
「やるかやらないか迷った時にはやってみるといい。こうすればこうなるかも!と思いついた時点で人はそのアイデアをかなりものにしている。やってみるといい結果に繋がることの方が多い。やってみて、間違いだと気がついたらその時はすぐに止めればいい。やり始めたことだからとか、男がすたるからといいながらやり続けていると当然悪い結果がやってくる」
なんてシンプルなんだ!と感動している自分に気付きました。なぜだろう?これくらいカレンダーにだって書いてあるはずなのに。ダライ・ラマの言葉で聞いたから感動したのでしょうか。
またある時は、お坊さんを前にして「仏教とは真理を説くカギである。それ以上でも以下でもない。仏教の中にこの世界があるのではなく、この世界をより良く生きるための道具として仏教を使うのだ」と言われました。
またある時、亡命チベット人小学生、千人ぐらいの前でのお話にも驚きました。
「わたしだっていつかは死ぬ。だから今、お前達は勉強しないといけないんだよ」
子供相手だからといって輪廻転生して帰ってくるよ、とか適当なことは言わないんです。
僕は通訳の方に聞きいてみました。「ダライ・ラマは超常現象は起こせないんですか?」 と、すると通訳は「以前同じ質問をした人にダライ・ラマが言ったの。そしたら『それができるくらいなら、私は首の後ろの皮膚病を治してるよ』って言ったの、法衣の襟が当たって痛いらしいのよ」と言いました。
こうして、僕はダライ・ラマのファンになっていきました。僕にとってダライ・ラマは単に一つの宗教の最高指導者というよりも、今の人類を代表する賢者の一人として映っています。
最後に次回作についてを教えて頂けますか?
ヤオ族の最新ファッション Photo by miwaco
実は、第2回監督作品の題材は中国なンです。雲南省の少数民族の民族衣装がいかに素晴らしいかを伝えるアートミュージックドキュメンタリーロードムービー(雲南COLORFREE http://www.colorfree.jp/)です。今も生き続けるアヴァンギャルドな民族衣装にアヴァンギャルドなサウンドを合わせたンですよ。
ボアダムズのYOSHIMIOが音楽を担当し、ソニックユースという伝説のバンドのキム・ゴードンさんもヴォーカルで参加してくれています。昨年11月に坂本龍一さんが主宰するコモンズというレーベルから発売されました。
『チベットチベット』をつくったからといって、決して中国そのものが嫌いというわけではありませんからね。念のため。(笑)
そして今、インドバックパッカーの旅をテーマにした笑えるドキュメンタリー映画を制作中です。今後も海外へ一人で撮影旅行出かけ、個人的な視点で語る旅のドキュメンタリーを作り続けていきたいです。
唯、その前にダラムサラで『チベットチベット』を上映したいです。難民2世、3世の若い世代は祖国であるチベットに行ったことがないですからね。チベットの現状を伝えたいんです。