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モラハラやDVは親子で連鎖する? 社会派コミック『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』著者インタビュー

  • 2024年5月29日
  • レタスクラブニュース


モラハラ当事者の視点で描かれ大きな反響を呼んだコミック作品『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』に続編が登場。原作者・中川瑛さんと漫画家・龍たまこさんが贈る第二弾『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』は、父親のモラハラが原因で決別した親子のそれぞれの思いをリアルに描き出しています。

原作者の中川さんは、ご自身もモラハラの当事者だった経験から、パートナーや仲間をDVやモラハラで苦しめてきた人々の『変わりたい』という願いをサポートするコミュニティサービス『GADHA』を運営されています。そんな中川さんと、漫画化を手掛けた龍さんに、新作『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』についてお話を伺いました。

『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』あらすじ




大手商社の管理職・鳥羽晴喜は、自身のモラハラとDVが原因で離婚し、妻子からは絶縁されていました。自分の行動を顧みた鳥羽は、会社でもパワハラ的な態度を改め「仏の鳥羽さん」と呼ばれるような理解ある管理職になっていました。家族へのモラハラを深く悔いている鳥羽は、今は同じように家族を失った赤城・深沢と男3人でルームシェアをして生活しています。



一方、そんな鳥羽と絶縁した娘の浅間奈月は、今は広告会社勤務でバリバリと働く会社員。彼女は恋人の陽多と同棲していますが、子ども時代の父親のモラハラがトラウマとなり、陽多にキツくあたってしまうこともありました。奈月は今も父親から受けた心の傷で、悪夢を見て苦しむこともあって……




『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』著者インタビュー


──今回の新作では「加害の連鎖をどう断ち切るか」というテーマが描かれています。奈月は父親から受けたモラハラが傷になり、大人になっても自身の感情を制御できずに苦しんでいます。この「加害の連鎖」についてご意見をお聞かせください。

龍:子どもの頃に安心安全な環境で育つことができないと、自分の本心を抑圧した状態がデフォルトになってしまい、大人になっても、自分の本心がどこにあるのかわからないままです。いわば自分の基礎工事がしっかり出来ないまま、グラグラの状態で社会に出ていくようなものなので、これは本当に不安定で生きづらいんですよね。

親子関係というのは人生最初の「親密で安心な関係」なのに、そこでうまくいかないと、大人になってから恋人や親密か関係を持とうとしたときに、過度に依存的になってしまったり、逃避的になってしまったりします。とにかく人との距離感が上手く掴めない、自分の子どもにもどう接してあげて良いかわからない。「愛する」って何なのかわからない。そんな状態で子どもを持って育てていくことがどれほど困難かわかりますよね。

自分は絶対に親と同じような親にならない、と決意しているのに、気付いたら親と同じ事を繰り返してしまう。加害の連鎖を断ち切るのは本当に難しいことだと思っています。




──原作を担当した中川さんは、パートナーや仲間をDVやモラハラで苦しめてきた人々の「変わりたい」という願いをサポートするコミュニティサービス『GADHA』を運営されています。多くの当事者の方と関わりがあると思いますが、この「加害の連鎖」についてはどう思われますか。

中川:よく「加害は連鎖しない」「虐待は連鎖しない」という言葉を耳にしますが、これはおそらく、虐待を受けていた人が親になる際の不安や恐怖に対して、「必ずしも連鎖するわけではないから、子供をちゃんと育てられますよ、安心してね」という励ましや応援の文脈から生まれた言葉だと思います。

しかし、連鎖を止めることは決して簡単なことではなく、連鎖自体は起きてしまうが、それは学び変わろうとする意思あってこそ止められることもあるといった性質のことなのではないかと思います。





──「加害の連鎖」はどうして起きてしまうのでしょうか。

中川:自分が受けていたことが良くなかった、許せないものだと理解していても、ストレスを抱えた時にどう振る舞えば良いのか、その代替手段を知らないために、被害者自身が加害者になってしまう…という連鎖がよくおきます。

イライラしたら物に当たるという親を見て育つと、イライラした時に、他にどんな手段でそれを緩和できるかがわからないということです。ダメだダメだと思いつつ、親と似たようなことを自分もしてしまっている…と絶望する方はたくさんいます。

また、これよりもさらに難しいのは、親から愛されていると受け取ったものを、愛しているつもりで他人に伝える際、それが加害や支配になるパターンです。普通のこと、当たり前のこと、自然なこと、家族だからこういうものだと思っていたことが、現代においては加害だということもよくあります。

教育虐待などは典型だと思いますし、体型を馬鹿にしたり、「からかい」が実は人を深く傷つけるものだということがわからず、愛情だと思ってしまって、子どもを傷つけることになったりすることもあります。

──では、『加害の連鎖』を止めるにはどうしたらいいでしょうか?

中川:人は学び変わることができるため、連鎖もまた、起きることを前提とした上で、それを止めることもできると思います。『連鎖』という言葉が強すぎるのかもしれません。

それは社会的学習、生まれ育った中で身につける人間関係のコミュニケーションのパターンであり、それを学習しない、それから影響を受けないということはありえない、と考えると当然のことであるとさえ思います。しかし、その学習を学び直すことは可能なのだ、と僕は思います。





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『加害の連鎖』を断ち切ることの難しさを認めつつも、「人は学び、変わることができる」と力強く語る中川さん。ご自身もかつてパートナーをモラハラで苦しめてしまっていたことを認め、そこから努力して行動を改め関係を再構築していったことを発信されています。

かつて親からモラハラを受けていたことで、『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』の奈月のように周囲とうまく関係性を築けずにいる方もすくなくなさそうです。ただ、自分の心をしっかりみつめ、学び直すことで、連鎖を回避することは決して不可能ではないと、ご自身も当事者だった中川さんも語ります。自分ひとりで乗り越えるのが難しい場合も、互助コミュニティなどを利用したり、周囲の人や専門機関に相談するなどして、外部の助けを得ることが大切かもしれません。



取材=ナツメヤシコ/文=レタスユキ

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