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幾度もの被災経験が生きた。3.11の在宅避難者に聞く「子どもの命を守った方法」とは

  • 2023年9月18日
  • レタスクラブニュース


関東大震災から100年。これをきっかけに、防災について改めて考える人も多いのではないでしょうか。
何をどれだけ準備すればいいか。そのヒントは、震災経験者のお話の中にあります。

「地震被災者の防災術」今回は、東日本大震災で在宅避難を経験されたyuccowさんにお話を伺いました。
子どもの頃から何度も大きな地震に遭ってきたというyuccowさん。その経験を生かした防災対策が、震度6強の地震により半壊した家屋の中で、子どもの命を守ったそうです。

*こちらで紹介するグッズや商品は、一部の被災者が必要だと感じたものです。被災内容や環境によって、必要になるものは異なります。

▶︎お話を伺ったのは
yuccowさん
被災当時:教員助手として小学校に勤務。住まいのあった宮城県仙台市では、震度6強を記録。夫、高校生だった子どもと住むマンションは半壊。電気は3日間、水道は1週間、ガスは3週間停止。出張中の夫は地震発生から3日目に帰宅。


過去に何度も震度6レベルの地震を経験。家の中に作った「安全地帯」が命を守った

東北地方を大地震が襲ったその日、yuccowさんは勤務先の小学校の職員室にいました。
「最初の揺れのあと、ハッと思い立ち、生徒たちを避難させるために校庭に向かったのですが、下から突き上げるような揺れに足を取られて歩くこともできなくて。まるでトランポリンの上を歩いているような状態でした。しばらくすると、今度は地割れがこちらに向かって走ってくる。はうようにして、地割れから逃げ続けました」
震度5程度の余震が何度も起きる中、生徒の保護者への引き渡しが完了。yuccowさんも息子さんが待つ家へと急ぎます。
「帰宅前に何度か息子に電話をしたのですが、全くつながらなくて。心配で胸が潰れそうになりながら家にたどりつき、玄関前にいた息子の姿を見つけたときには思わず抱き締めてしまいました。この瞬間のことは一生忘れません」
家に入ると家具はすべて倒れ、家電は床に転がっているような状態。そんな中でも息子さんにケガ一つなかったのは、以前から家の中に設けていた〝安全地帯〞のおかげでした。
「宮城県で生まれ育った私は、震度6レベルの地震を何度も経験しています。そんな過去の経験から作ったのが、「安全地帯」です。各自のベッドの上、リビングのソファー、玄関付近は倒れてくる家具や落ちてくるものがないように徹底。子どもにも、地震が来たらそこに逃げ込むようにと、ことあるごとにいい聞かせていました」
地震の瞬間、キッチンにいた息子さんは、自室のベッドに駆け込んだおかげで無事だったのだそう。
「当時、お風呂のお湯を翌日まで取っておいていたのも過去の経験から。おかげで断水時にもトイレが使えて※、本当に助かりました」
※排水管が壊れている場合など、被災状況によりお風呂の残り湯をトイレに流してはいけないときがあります。その際は簡易トイレなどを使用しましょう。

スマホの充電を忘れていたことを後悔

■【地震発生当日】突き上げる揺れでトランポリン状態に
震度6強の突き上げるような揺れが5分ほど続いたあと、震度5程度の余震が何度も起きたそう。
「少し揺れが落ち着いた頃、雪がひどくなったので屋外から体育館に移動しましたが、床があまりに冷たくて立っていられないほどでした」

スマホの充電忘れを大後悔
この日に限ってスマートフォンの充電を忘れて、電池残量は50%以下。家族への電話も電池残量が気になり、充電忘れを悔やみました。


■【当日帰宅後】家具、家電はすべてひっくり返る
「以前に住んでいた家では、家具には突っ張り棒タイプの転倒防止バーをつけていましたが、この家は天井が弱くて設置できなかったんです。代わりに転倒防止プレートを家具の下に敷いていましたが、効果なし。家具は全部倒れていました」


食器棚は倒れ冷蔵庫は1m移動。

安全地帯作りが役立った
キッチンは食器棚が倒れ、足の踏み場もない状態。それでも「安全地帯」を作っていたおかげで、家にいた子どもは無傷でした。


■【当日の夜】お隣から食料の差し入れが。ラジオも貸してもらう


隣家が差し入れしてくれたカップラーメンとクラッカー、冷蔵庫にあったヨーグルトがこの日の夕食。「『足りないものは?』と聞かれ、ラジオがないことを告げると電池式のものを貸してくださったんです。このラジオには本当に助けられました」

ラジオのことばに救われる
ラジオから聞こえてきた「一緒にがんばりましょう」という声に、「自分一人じゃないんだ!」と力が出たのを覚えています。

■【翌日】水と食料調達に奔走する
入店3時間待ちのスーパーよりも行列が短い洋菓子店を見つけ、40分並んで焼き菓子を購入。
「いざ食べようとしたら息子がアレルギーを起こしてしまう食材が入っていて。結局この日の食事は、クラッカーのみに」

水がない! 容器もない!


水を入れる容器がなく、給水所で充分な水がもらえなかったことも。後日購入した給水袋は転居先で被災した際に役立ちました。


■【3日目】スマホ充電サービスを利用


近くの小学校で行なわれていた充電サービスで、スマートフォンを充電。「前日の夜に窓から街を見たら、中心部に電気のついている場所を発見。この日の夜になってわが家の電気も復旧し、実家とも電話がつながるようになりました」


■【4日目】他県に食料調達に行く
スーパーの食材が途絶えたのがこのころ。「出張先から車で帰宅した夫が、途中で立ち寄った山形では食料を売っていたというので買い出しに。帰りに数日ぶりに温かい食事を食べ、入浴施設でお風呂にも入れて生き返った心地に」

ハイブリッドカーで助かった!
震災後はガソリン不足が続きましたが、わが家はハイブリッドカーだったので少量のガソリンでも走行でき、心強かったです。


■【約1ヵ月後】再びやってきた震度6強の地震
家の中の片づけが終わり、ホッとしたのもつかの間、震度6強の余震が発生。
「家の中はまたぐちゃぐちゃな状態に逆戻り。本震よりこの余震のほうが精神的にきつかったです。心が折れてしまい、再び片づける気になれなかった。周りでもそういう人が多かったです」

割れた食器の片づけに紙袋が大活躍
ビニールのゴミ袋に食器の破片を入れると袋が破れてしまいますが、紙袋は大丈夫でした。思った以上に丈夫です。

■もし地震の1日前に戻ったら何をする?
□スマホの充電
□災害時の避難ルールの確認
スマートフォンの充電は絶対にするというyuccowさん。そして、息子さんにはこんなことを。「震災では、お年寄りに避難を促しているうちに津波にのまれてしまった方がいたと聞きました。息子には『そういう場面に遭遇したら、2回声をかけなさい。それでもその人が逃げないといったら、その人を置いて逃げなさい』と伝えたのですが、震災の1日前に戻ったらもう一度伝えたいですね。もしものとき、罪悪感を感じなくてすむように」

被災後にどんな生活が待ち受けているかは、想像しづらいもの。ライフライン復旧のタイミングや余震のことなど、参考になりますね。
この機会に、ぜひ「我が家の場合の防災術」について考えてみませんか。

イラスト/oyasmur 取材・文/恩田貴子


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