猛暑やゲリラ豪雨など地球温暖化の影響を感じるようになり、環境問題に対する意識は近年急速に高まってきています。そんななか、日本生命保険相互会社は、公式サイト内の「ご契約者さま専用サービス」にて、環境問題に関するアンケート調査を実施。今回は、ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト・矢嶋康次(やじま やすひで)さんとその調査結果について振り返ります。
(調査概要)
・実施期間:2021年9月1日~14日
・実施方法:インターネットアンケート(「ずっともっとサービス」のサンクススマイルメニュー)
・回答者数:10,138名(男性5,101名、女性4,851名、性別回答なし186名)
環境問題に関して75.5%の人が関心あり。20代以下・30代はやや関心が低い傾向に
環境問題に関しては、全年代で13.9%の人が「とても関心がある」、61.6%の人が「関心がある」と回答。合わせて75.5%の人が環境問題に関心を寄せていることがわかりました。いっぽうで、「とても関心がある」「関心がある」と回答した人を年代別の割合で見てみると、20代以下では59.5%、30代では69.5%と、比較的関心が低い傾向にあることが見て取れます。
最も関心が高い環境問題は「気候変動・地球温暖化」
関心がある環境問題は「気候変動・地球温暖化」が全年代で75.8%と回答が多い結果となりました。やはり身近で影響を感じやすい「気候変動・地球温暖化」は関心がある人が多いようです。
環境問題に対して取り組んでいること1位は「マイバッグ・マイボトルなどの持参」
環境問題に対する日常的な取り組みとして、全年代において67.8%の人が「マイバッグ・マイボトルなどの持参」と回答。次いで、64.5%が「ごみの分別廃棄」、46.8%が「節電・節水」という結果になりました(※複数回答可)。
ここまでを振り返って、ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト・矢嶋さんはこのように語ります。
「今回のアンケート結果からは、環境問題に対する個人の取り組みが着実に広がりを見せていることがわかります。レジ袋有料化を機に使用が増えたマイバッグの持参をはじめ、価値観が変化し具体的な行動を伴ってきています」
環境へ配慮していない商品よりも価格が高い場合でも、環境負荷のない商品を購入する人が73.2%
全年代で73.2%の人が、環境へ配慮していない商品よりも価格が高い場合でも、環境負荷のない商品を購入するという結果になりました。環境へ配慮していない商品との価格差は、全年代で29.3%の人が「1.2倍以内の価格であれば、環境負荷のない商品を購入する」と回答し、最も高い割合に。
環境がテーマの金融商品へリターンが下がっても投資をしたいか、に対しては「したくない」が47.5%
環境がテーマの金融商品(投資信託など)への投資は、83.8%の人が「経験がない」と回答。リターンが下がっても投資をしたいか、という質問に対しては、47.5%の人が「したくない」と回答する結果となりました。
矢嶋さんは、「環境へ配慮していない商品との価格差があったとしても、環境負荷のない商品を購入すると回答した方が73.2%いることからも、消費者の環境問題への意識の高さが伺えます。いっぽうで、近年拡大しているESG投資などで環境がテーマとなっている金融商品については、リターンが下がっても投資をしたいという方は少ないようです。企業にとっては、環境に配慮しながらも、同時に収益性も追求しなければならない厳しい経営環境となってきています」と説明しました。
「SDGs」について77.0%の人が「知っていて内容も理解している」「知っている」
「SDGs」については、全年代で27.9%の人が「知っていて内容も理解している」、49.1%の人が「知っている」と回答。合わせて77.0%の人に知られていることがわかりました。
「パリ協定」について73.4%の人が「知っていて内容も理解している」「知っている」
2015年にCOP21で採択された「パリ協定」については、全年代で13.8%の人が「知っていて内容も理解している」、59.7%の人が「知っている」と回答。合わせて73.4%で、こちらも比較的よく知られているようです。
「ESG投資」については70.9%の人が「聞いたことがない」
いっぽうで、「ESG投資」という言葉については、全年代で70.9%の人が「聞いたことがない」と回答しました。
環境問題についての情報源は1位がテレビ。若年層ほどインターネットが多い結果に
環境問題に関する知識や情報を得ている先として、全年代の43.1%の人が「テレビ」と回答。インターネットから情報を得ていると回答した人が、若い世代ほど高くなりました。
これらを踏まえて矢嶋さんは、「環境関連の用語は、CSR、ESG、SDGs、カーボンニュートラルをはじめ、非常に多く存在します。一度は聞いたことのある言葉でも、内容まで理解している方は少ないようです。政府や企業などは、環境問題への理解醸成に努めるとともに、むやみに専門用語を使うのではなく、わかりやすく発信することも重要です」と話します。
続けて、「また、最近では若い方を中心に、テレビや新聞といった従来からある媒体から、インターネットメディアへのシフトが進んでいます。今後は、そうした技術を活用することで、環境問題への関心を一層高めていくことも重要です」と締めくくりました。
今回のアンケート調査を振り返って、環境問題について関心を持ち、日常的に取り組んでいる人が多いことがわかりました。いっぽうで、「ESG投資」といった環境がテーマとなっている金融商品についてはまだ理解が進んでいないようです。今後は、金融商品などを通じた環境への取り組みにも関心を持つ人が増えるといいですね。
文=秋武宏美