災害時のための「非常食」。いつやってくるかわからない自然災害に備えて、できるだけ準備しておきたいものですが、ただやみくもにストックしておけば良いというものでもありません。
何をどれだけ購入し、どのように保管するか、いざというときにあわてないよう、暮らしニスタの防災危機管理アドバイザーの山田明日美さんに、備え方のコツをうかがいました。
■教えてくれたのはこの人!
防災危機管理アドバイザー・ライフオーガナイザー
山田明日美さん
片付け講師として全国にクライアントを多数抱える山田さん。自宅を安全基地にする防災危機管理アドバイザーとしても活躍中で、防災グッズや備蓄に関する知識も豊富。お仕事&2人のお子さんの育児に忙しい毎日。
「近年では、災害発生からライフラインの復旧まで1週間以上を要するケースが多いというデータがあります。そのため、災害が発生して最低3日、できれば1週間分の食糧を用意することが推奨されています」と山田さん。
災害が発生して電気や水道などが止まってしまったら、まず冷蔵庫にある食品から消費するようにし、それを2、3日分とカウント。残りの4日分を非常食で用意するのがおすすめだということです。
内容は、主食となるお米、アルファ米やカップ麺、保存期間が長いカレーなどのレトルト食品、缶入りのパン、肉・魚・豆などのパック・缶、フリーズドライのスープや野菜ジュースなど、普段食べ慣れているもので保存がきくものを用意します。
山田さんによれば「平常時に家族みんなで、非常食として何を食べたいか話し合っておくことで買い物にも迷いません」と、非常食の購入計画には、家族の意見をじょうずに取り入れることが大切だそう。
「備蓄する際に、『非常時の朝は、ごはんとスープとさんま缶』など、献立を紙に書いて保存食と一緒に置いておくと、いざという時スムーズに用意できるのでおすすめですよ」
非常食を含む7日分の防災備蓄品のリストは、東京都総務局の「東京備蓄ナビ」(https://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp/)で見ることができます。家族の人数や住まいの形態などにより、何をどれだけ用意すれば良いか、質問に答えるだけでアドバイスを提供してくれるので、備蓄の目安にぜひ使ってみてください。
備えの大切さがわかったところで、非常食としてどういうものを買えば良いか、購入する際の5つのポイントを教えていただきました。意外と見落としているチェックポイントなど、山田さんからの防災のプロ目線でのアドバイスです。
「非常食として用意する場合は、最低3年以上保存できるもの選ぶのがおすすめです」と山田さん。3年ももつものというと、缶詰くらいしか浮かばないかもしれませんが、昨今の非常食ラインナップには、長期保存できるおいしそうな食品もたくさんあります。
賞味期限の長いものを選ぶメリットは、ストックの賞味期限切れの確認作業を減らせること、何度も購入する手間を減らせること。
また、非常食を購入したら、食品ロスを防ぐためにも、1年に1回は非常食の保存期限を見直すことをお忘れなく。
保存期間の長さだけで食品を選ぶと、実際食べたときに、口に合わない、食が進まないということが起こります。
「せっかく用意したのに非常時に使えないのでは、お金の無駄と不要なごみを生み出すことになってしまうので、できるだけ好みのものを購入しましょう」
また、非常時はストレスが多くかかるものなので、普段食べ慣れている食品や、それに近い食事でホッと安心できることも大切です。
「非常時に食事をとれることは元気の源。購入時に、食べたいと思える食品を選びましょう!」
水や電気、ガスなどが使えなくなることも想定される非常時、 開封しただけですぐ食べられる栄養バランスのとれたクッキーや缶入りのパン、飴やゼリー飲料などを用意しておくのが最優先、次に最低限の加熱調理で食べられるものを備えます。
「温めるだけ、水やお湯を入れるだけ、のレトルト食品など、ライフラインが止まっていても、もしくは回復途中でも調理が簡単にできるものを用意しましょう。また、非常時は体調を崩すことも多いので、ゼリー飲料や紙パックジュースなども用意しておくと安心です」
災害時に体調を悪くした場合に備えて、消化が良く、のど越しの良いものもリストに入れておきましょう。
非常食のカテゴリで売られているものの中には、煮汁やタレが多く残る商品も意外と多いもの。水道が使えない場合などは、これが後片付けの処理に困る原因になってしまいます。
「食べる際にできるだけ液体として残りにくいもの、すべて食べきれそうなものを選ぶことをおすすめします」というアドバイスは、ふだんの暮らしからはなかなか想像ができないポイントですね。
「災害後は、ごみ収集の再開まで時間がかかることが多いので、自宅でゴミを保管することになります。食品だけでなく、生活用品でもゴミがたくさん出るため、同じ食事内容でパック・パウチ商品があれば、たたんでコンパクトに処分できるのでおすすめです」と山田さん。
保存期間の長さで選ぶと缶詰に偏りがちですが、大量に用意すると保管場所も必要になり、ゴミとして処理する時もかさばって場所をとります。パック・パウチ商品と缶詰、バランス良くどちらも揃えておきましょう。
非常食に適した食品のチェックポイントを知ったところで、山田さんが実際に食べて良かったものや、利用者の口コミで高評価のものなど、これから購入するなら具体的にどんなものを買えば良いか、山田さんのコメントを交えながらご紹介します。
●お湯か水だけで食べられるごはんセット
尾西食品
アルファ米人気商品5種×2袋 合計10袋セット
炊き立てご飯のおいしさをそのままに急速乾燥した「アルファ米」を使用。お湯か水があれば簡単に、ふっくらご飯を楽しめる同社のシリーズ。白飯、えびピラフ、わかめごはん、五目ごはん、ドライカレーと、人気の5つの味がセットになっています。「いろいろなメーカーのアルファ米を食べた中で、一番おいしかったのがこちら。白米は食べやすく、味付きご飯もいい塩加減で、おかずとの相性もばっちりです」。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08BJMYGJ1
●ストレス下でものどを通りやすい優しい味
ONETABLE(ワンテーブル)
LIFE STOCK 備蓄ゼリーお1人様3日分セット
いつでも、どこでも、すぐに、水なしで食べられるゼリー状備蓄食で、なんと製造から5年間もの間常温保存が可能。宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共創プロジェクトから生まれたレシピだそう。山田さんは「備蓄だけでなく、家族の避難リュックにも入れています。緊張感が高い時でも、のどが通るものとして用意」しているそう。避難所生活になった場合でも、炭水化物に偏って不足しがちな栄養素を手軽に摂ることができます。
https://www.amazon.co.jp/dp/B097XZNFHB
●何を買えば良いか迷ったときにはセット品を
防災専門店MT-NET
【防災専門店の 非常食セット 】 非常食 3日分 長期保存 アルミシート付き
「何をどれだけ用意したらいいか、どう組み合わせていいかが一目瞭然。これから非常食を揃えたい人に便利ですね」と山田さんもおすすめの非常食セット。ご飯やパン、汁物、おかずに加え、カンパンやようかんなどの他、防寒・防風用のアルミシート、いざという時あわてない防災手帳までバランス良く詰められているので、購入してそのまま保管しておくだけで安心です。保存期間が5年と長いのも◎。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01N4IDB3S
●賞味期限お知らせでフードロスも削減
江崎グリコ
常備用カレー職人・中辛170g×3食
植物性油脂を使用しているので、常温でもおいしく、なめらかにいただけるレトルトカレー。災害時、レトルトを温めるお湯がもっちたいない、という声から生まれた商品です。「お湯で温めなくても良いこと、何より賞味期限をお知らせしてくれるシステムがすごいんです。スマホやPCで賞味期限お知らせシステムに登録しておくと、その商品の賞味期限が近付いたらメールが!食べ忘れを無くしてくれるフードロス対策もある非常食です」。
https://www.amazon.co.jp/dp/B084RZ3QRD
●折りたたみ容器付きでかさばらない
信州一味噌
ポケットワン コーンスープ 1食×3袋
粉末スープと具にフリーズドライのコーンを使用した、ホッとするおいしさのコーンスープです。 非常時にも便利な折りたたみカップ・スプーン付。お湯が沸かせない状況でも、水を注いで10分待てば食べられます。「寒い時期の避難生活となったとき、あたたかいスープが飲めるのは、体にも心にも嬉しいことですね。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09KBF5N2J
●備蓄スペースが少ない人にもおすすめ
尾西食品
長期保存対応 携帯おにぎり 鮭・五目おこわ・わかめ 3個×3種アソート
やさしい薄味のおにぎりで人気の高いこの商品。「一般のアルファ米だと2杯分のご飯の量が入っていますが、こちらは1個分のおにぎりができる軽量さと手軽さがあります。1回で食べきれるサイズ感と、備蓄に場所をとらない薄さがいいですね」と、山田さんは保管のスペースが少なくて済むことにも注目したいそうです。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07B11VPGB
●甘くてふんわりおいしいパンが手軽に
パン・アキモト
PANCAN パンの缶詰め 6缶セット
「通販サイトで『普段から食べたいくらいのおいしさ』と高評価の非常食です。大変なときでも、こんなふわふわのパンをおやつに食べたらほっとできそう」と、山田さんも口コミが気になっていた商品。製造から約3年間おいしく食べることができ、お湯で温めれば焼きたてのような食感を再現できる、パン派にとっては嬉しい非常食です。ブルーベリー、オレンジ、ストロベリー味。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07H2P49GX
●ファンの多いカップ麺を長期保存可能に
日清
カップヌードル保存缶 69g×2食入
国民食ともいわれる有名なカップ麺。スーパーやドラッグストアで手に入るものは賞味期限が短いけれど、こちらは長期保存版(3年)です。「非常時に食べ慣れた味でホッとできる安心感をもたらしてくれそう。ローリングストックで入れ替えをする際にも、カップヌードルなら違和感なく日常のごはんとして食べられますね」と山田さん。紙カップと折りたたみフォークも付属で、お湯さえ手に入ればおいしくいただくことができます。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00E9OII1G
●バラエティ豊かなレトルトおかずのセット
MT-NET
非常食 防災食品 LLF 長期賞味期限食品 9品セット
レトルトの保存食として人気がある LLF ( ロングライフフーズ ) の非常食、長期保存セットです。レパートリーは、子どもから大人まで、人気のハンバーグや肉じゃがなど。「開封後すぐに食べられる手軽さと、普段のおかずとしてそのまま使える汎用性が◎。パウチタイプでごみ捨てが楽なところまで、よく考えられていますね」。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0732WBWB3
●災害時の栄養バランス調整にぴったり
カゴメ
野菜たっぷりスープ 4種×各2個
タンパク質や食物繊維が多い野菜や豆がたっぷり入っているので、避難中に偏りがちな栄養バランスを整えてくれます。「非常食の中には塩分が高いものが多いですが、こちらは1食当たりの食塩相当量は1g以下と、優しい味付けになっています。ローリングストックとしても、日常的に食べられるおいしいスープです」。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0877J8DQL
●災害時に欠かせない栄養食品
大塚製薬
カロリーメイト ロングライフ3年・チョコレート味 2本入り <3個セット>
11種類のビタミンと5種類ミネラル、タンパク質、脂質、糖質を気軽に補給できるカロリーメイト。「栄養が偏りがちな非常時にこれだけの栄養素をバランスよく摂れるのはありがたいこと。携帯しやすいので、備蓄だけでなく、避難リュックに入れておくのも良さそうですね」と山田さん。普段からバッグの中にしのばせておくのにもピッタリな形状です。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01LYI19UP
●アレルギーのある人の安心のために
尾西食品
21種類 アレルギー対応 非常食セット(特定原材料27品目不使用)
アレルギーのある人は、避難所で配られる食事が食べられないかもしれない。そんな場合を想定してセットされたこの商品。「主食からお菓子まで揃うラインナップに、パッケージもパウチタイプでごみ捨ての楽さが〇。健康でも急激なストレス下でアレルギー症状を発症することもあるので、1セットあると安心が増すと思います」。
https://www.amazon.co.jp/dp/B075V9D6FV
では、こうした非常食をどのように備えておけばいいのか、山田さんに上手な収納法を教えていただきました。
●取り出しやすいところに分散して収納
賞味期限が半年くらいの非常食は、普段よく食べる物と一緒にキッチンに気持ち多めで用意(ローリングストック法)。保存期間が長い非常食は押入れやクローゼット、階段下収納など、室温があまり変わらないところでまとめて保管します。
ダンボールで保管すると本体に虫が湧く危険があるので、プラスチックの収納用品に保管がベストです。中身が何かわかるように、「アルファ米」「スープ」「缶詰」といった食品名を書いたラベリングをしておくと、誰でもすぐに使えるので便利。
備蓄品を箱ごと積み上げて収めがちですがが、緊急時に下のモノがとれないと大変不便です。ラックや棚を活用して、一段ずつ収納することをおすすめします。
●水の備蓄は部屋に分散して保管
災害時には、食品だけでなく「水」も不可欠。水は1人1日3ℓ×日数分を目安に用意しましょう。家族4人分で計算すると、3日で36ℓ、7日だと84ℓ必要で、その数なんと2ℓペットボトルが42本。
全てまとめて置くことは難しいですが、部屋に分散して備蓄すると可能になります。1ケースをクローゼット下に、など空いているスぺ―スを見つけて置いてみてください。
●収納場所が適切かどうか…
備えること以上に大事なのが、いつでも使えるようにしておくこと。そのために最低1年に1回は家族で非常食の賞味期限を見直しましょう。
そして、落下したとき危なくないか、逃げる際の動線をふさぐ場所に置いていないかなど、収めている場所が適切かもチェックすると、毎年、安心と安全が得られます。
食べるということは、単に体に栄養を補給するだけでなく、心もしっかり支えてくれること。もし地震などの影響で避難することになったら… 電気もガスも使えなかったら…自分は、家族は、何が食べたいか、何を食べたら元気が出るか。非常食を揃えるときには、そんな視点も大事なんだなと、山田さんのお話から学ぶことができました。
まとめ/伊波裕子