サイト内
ウェブ

Vol.98 仲間作りというのも大切だとは思うのですが…。

  • 2012年5月31日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 新しい生活が始まったタイミングだからこそ自分がやりたいことについて自問自答を繰り返してみよう、という話をそれこそ繰り返してきましたが(笑)、それは仲間作りという局面でもすごく大事なことだと僕は思っています。

 この連載での一貫したテーマのひとつである“新しい地域コミュニティ”を生み出すという作業はある種の仲間作りと言えるでしょうし、そもそも若い世代の人たちにとっては何をするにも仲間作りというのがとても大事な作業であるように見受けられます。でも、仲間を作るのが大事だと思うなら、なおいっそう自分が何をやりたいのかをはっきりさせるべき、というのが僕の立場です。

仲間作りというのも大切だとは思うのですが…。
 仲間作りに関する話で、「大学時代じゃないと見つけられない仲間がいる」という話がありますが、あれは嘘だと僕は思っています(笑)。ただ、「大学時代じゃないとできない仲間との体験がある」というのは、その通りだと思います。要するに、費やせる時間の問題ですよね。ある事柄に費やした時間が作り出す絆みたいなものは確かにあるから、それを求める人がいるのは理解できます。が、仲間を作ることに集中してできる仲間って何なんだろう?と、僕は思うんです。実際、仲間がいないとやれないことは確かにあります。でも、だからと言ってそれをやるために仲間を作るということはなかなか難しいと思うんです。しかし、これはAWSでもよく言ってるんですが、同じ音楽的な到達点に行こうとする体験を共有すると、それはもう“ハモり仲間”になります。何かの達成のために一緒に苦難を乗り越える人を仲間と呼ぶならば、そういうふうに自分が好きなこと、やりたいことをやっていくなかで自然と、同じような指向を持っていたり同じような目標を持っている人とつながりが生まれていくものなんですよね。

 それに、例えばアカペラで被災地支援をやりたいと考えたときに、ボランティアのスキルを持っている人にアカペラを教えるよりもアカペラができる人にボランティアのスキルを伝えるほうがずいぶん話が早い。それと同じように、仲間を作って自分がやりたいことを実現するという順番ではなく、自分がやりたいことを実現しようとする過程を経て結果的に仲間というものが出来上がっていく。で、後から、“これは仲間と一緒じゃなきゃできなかったな”と思うわけです。逆に言えば、自分がやりたいことには仲間がついてくる、という絵が描けないのであれば、その仲間は本当の仲間ではないと思ったほうがいいんじゃないかなあ。

 ちなみに、何かをやっているなかで仲間がなかなかできなくて寂しいと感じたら、それは寂しさに耐える力を蓄えるチャンスだと捉えるか、あるいは寂しさを紛らすためにはどういうことが有効かいろいろ試すチャンスだ、と考えるのがいいと思います。どんなことにも、プラスの価値があるものです。

 さて、自分が本当にやりたいことは何なのかについて自問自答を繰り返してみて、“やっぱり、これは自分がやりたいことではなかった”と思ったら、それはおそらくやめるべきなんだろうと思います。いざやめるとなったときに「オマエがいなくなったら困る」と言ってもらえることはある意味ではありがたいことですが、でもその言葉に引っぱられて自分の気持ちを曲げるのは自分にとっても仲間にとっても多分いいことではないと思います。それに、自分が思っているほど、人は自分の変化によってダメージを受けないものですよ(笑)。特にビジネスの世界においては。「オマエがいなくなったら困る」と言うのは甘えているだけで、いなきゃいないでなんとかなるし、なんとかするんですから。それがビジネスというものです。

  ただし、ここまで書いてきたことは、転職/転籍/転校のススメではありません。大事なのは、繰り返しになりますが、自分がやりたいことは何なのか、本気で、かつクールに、繰り返し自問自答することです。その繰り返しによって初めて、自分が今続けていることが自分にとって価値あることだと言い続けることができるんだと思います。恋人だから好きなのではなく、好きだから恋人なのです。こうして文字にするとアホみたいにあたりまえのことですが、僕らは往々にして人生に慣れ、自分の環境が認識とちがっていたり、意識が当初の目標とずれていたりすることに気付けなかったりします。ふとした時に目を閉じ深呼吸をして、自分と向き合う時間を持つ。なにか書いても良いかもしれません。そうして自分という軸がしっかりすれば、いつのまにか、かけがえのない仲間の輪の中にいる自分を発見できるはずです。


キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。