みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
前々回のこの連載で、「覚悟は決めたものの、“よし、やるぞ!”みたいになってないのが自分としては気に食わない」と書きましたが、実際のところ、あまり気合いを入れ過ぎると逆に良くないなというのが最近の実感です。というのも、復興に関して本気で深く関わっていくと、じつに複雑にいろんな問題が絡み合ってといることがすぐに見えてくるし、しかもこの問題は先にも書いた通り、10年、20年とかかる問題ですから、いまからあまり前のめりになって、それで長く続かないようでは意味がありません。だから、自分たちにできることのなかで、何が有効であるのかをしっかり見極めて淡々とやっていくしかないんだろうと思います。そういうことについても、一応が覚悟はできているつもりなんですが、とは言え自分でやると決めたことの“大海原”のなかで、“世界はなんて広いんだ”とあらためて思わせられることも少なくないんですが…。
でも、そこでただ手をこまねいているわけではありません。僕が仲間と立ち上げた団体「Always With Smile」(AWS)がいま取り組んでいるのは、被災地でこれまでがんばってきた人に対して、後付けではあるんだけれど、金銭的な援助をしよう、というものです。具体的には、現地のボランティア・センターに人にお願いして、これまでの貢献度はもちろん、なるべく地元の人がいいけれど、そうでなくても個人として入ってきてすごくがんばっている人、しかも瓦礫処理のリーダーがやれて、みんなのことを仕切れる人、というような条件で人選をしてもらっているところです。それは、ここまでがんばってきて、そのおかげでじつは精神的にも物理的にもかなり厳しい状況に直面しているボランティアの人たちのサポートをしたいという気持ちがまずあります。加えて、そうした個人のボランティアとしてがんばっている人たちに対して、定期的、継続的にお金を支払うというある種の雇用の枠組みがどれくらい効力があるのか、というようなことを調べる意味合いもあります。というのも、これまでみんな無償でやっているということで成立していたところに、一部の人には金銭的なサポートが行われることになったおかげでそのバランスが崩れてしまう危険性がないとも言えないからです。そして、逆に、もしその枠組みが有効であるという具体的な結果がデータとして残れば、それをもとにこの枠組みに参加してくれる企業や団体を探すこともできるだろうと考えています。
こうした枠組みはじつはかなり以前の時点でその必要性を感じていたのですが、現地での瓦礫処理ボランティアに対するニーズがちょっと落ち着きつつあった時期があり、それで取り組みを進めるかどうかの判断をちょっと保留していました。というのは、瓦礫処理に関しては、あがってきた被災者の方のニーズに応えて、ボランティア・センターが具体的な作業を進めてきたんですが、例えば東松島で聞いたところでは沿岸部はまったく手つかずのままでした。なぜかと言えば、ニーズを出す人が亡くなってしまっていたり、どこかに疎開してしまっていたりするので、ニーズが出てこず、そうなると誰も手をつけられないわけです。土地権利者のニーズがないままに処理をやろうとして土地に入ると、それは不法侵入になってしまうんですよね。「瓦礫処理に関する法改正」とか「瓦礫処理のために超法規的な対応を」といった報道を目にした人もいるかと思いますが、現地では法律がそういうふうに復興の足かせになっていたりするわけです。ところが、最新情報によると南三陸町ではボランティアが瓦礫処理をしてもいいということになったそうで、そうなるとボランティアの仕事が増えるということですから、僕らとしてもいよいよやってみることにしたわけです。でも、最初の話に戻りますが、あまり気負い過ぎずに、淡々と、あるいは着々と、やるべきことをやっていきたいと思っています。