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Vol.54 自分のからだを大事にするということと社会を考えることはつながっているという話 その2

  • 2010年8月12日

 

  みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回の冒頭に、自分の体調を管理することとエコの意識はまったく地続きだと思うと書きましたが、地続きということは往ったり来たりできるということですよね。というわけで、前回は環境問題をウォッチするのと自分のからだをウォッチするのは同じようなことという話でしたが、今回は逆の流れの話、つまりからだと対話する感覚が社会の実状を見極めることにも通じているという話です。

自己と環境  前回書いたように、脳が活動する場合には脳自体の仕組みが“環境”としてまずあって、次にその脳全体をひとつの自我として捉えた場合には自分の体が“環境”としてあるというふうに言えますが、その意識をさらに拡大して自分の体が外界から得た情報を“環境”と捉えれば、体全体が自我であるということになります。そういう捉え方にすっと馴染むようになったら、今度は自分のからだと誰かのからだを合わせてひとつの自己と捉えて、その“自己”を取り巻く状況を“環境”と考える、と。それは具体的には会社とかクラスとか、そういうことになりますが、そういうふうに“自己”のイメージを広げていくことをじつは人間は普通にたくさんやっています。例えば、クルマに乗ってるときにはシャシの大きさが自分の体の大きさのような意識でぶつからないように運転しますよね。つまり、体の感覚がシャシの大きさまで拡張しているわけです。同様に、他人のことも含めて“自己”として認識する、そのひとつになった塊と周りの“環境”というふうに世の中の有り様を捉えてみると、それはいわゆるエコが取り組んでいる環境活動につながる意識でもあるなということにみなさんも気づくと思いますし、そういう捉え方のなかでは「世界を変えるには自分を変えなければいけない」というようなフレーズが腑に落ちるという感じになると思います。僕も昔は、「オレが変わっても、戦争はなくならないぞ」なんていうふうに思っていたんですが、そういうことじゃないんですよね。

 ところで、本当にびっくりするような現実があることを最近知りました。あまりにも驚いたので、この話をみんなにしたくて仕方ない今日この頃なんですが(笑)、アメリカでは虫垂炎になった場合に病院に行って切ってもらうだけでなんと300万円かかるそうです。1週間入院すれば1700万円。そういう社会だから、アメリカの自己破産の原因のかなりの比率を占めているのが医療費だということです。つまり、何か病気になったときには、病気を治すために自己破産するか、自己破産しない為に治療しないか、というような、まさに究極の選択を迫られることがあるということですよね。日本で病院に行くときにそんなことを考える人はあまりいないでしょ。そんな心配をしなくて済む日本の社会はある意味では恵まれているわけですが、そうした状況にただ安穏としていると、まさに“平和ボケ”と言われるような状態に陥ってしまうわけです。

 僕が強くアピールしたいのは、自分のからだと対話するクセをつけて体調がいい状態で維持される仕組みを理解していく意識が身についた人なら、同じ感覚で社会がいい状態で維持されていく仕組みを考えられるようになるだろうということです。先のアメリカの医療の現実のように、とくに隠されているわけではないけれどあまり知られていないことを知っていくことによって、自分たちの国である法案が巡ってどうして議論が巻き起こっているのかとか、政治的な流れがどうしてこういう傾きになっているのかとか、そういうことに興味を持てると思うんです。逆に言えば、日本というものを“自分”と捉えるためには、“からだ”にあたる社会の成り立ちや現状をもっと知らないといけないということにもなるでしょう。だから、例えば自分の毎日の食生活を振り返るように、自分の地元でどんなことが起こっているのかということに目を向けてみたりすることが多分、快適な暮らしにつながっていったりすると思います。

 最後に、ヨガというのはもうブームというような状況を通り越して、かなりポピュラーになっていますし、この連載の読者のなかにもヨガをやっている人は少なくないと思います。その「ヨガ」という言葉に、内宇宙と外宇宙をつなぐという解釈があるということは知ってましたか? つまり、自分の内側の宇宙、からだや精神といった部分と自分の外側の宇宙、いわゆる社会や環境をつなぐということだと思いますが、そういう感覚が本当の意味での健康なからだと暮らしをもたらしてくれるんだろうと思います。

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