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Vol.51 作り上げたコミュニティをさらに続けていくことはもっと大変ですが…。

  • 2010年7月1日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回は、新しく人の集まりを作っていく、そして新しく何かを始めようとする場合に気をつけるといいんじゃないかなあと思うことを僕なりに書いてみましたが、今度は続けていくことについての話です。例えばエコの取り組みのように、絶対的な答えをみつけにくいこと、なかなかゴールにたどり着きにくいことをなんとか続けてきて、さらに続けるために、自分も含め集まってきている人たちのモチベーションをどういうふうにキープし、また盛り上げていくかということを課題として考えている人は多いんじゃないでしょうか。

 で、僕がまず思うのは、“これのための団体だから、これしかしない”というふうにしてしまうと、すごく難しいんじゃないかということです。例えば「街をきれいにする団体」というものを作りました、と。それで、活動を進めていくなかで「きれいにしても、またゴミが出てくるね」というようなことが繰り返され、「どうしたら、ゴミが出てこなくなるのか?」みたいな話にも進んでいくと思うんですが、現実的には、それは“いたちごっこ”的な話になりがちだろうと想像します。つまり、短期的には、完全な解決は相当難しいんだろうなと思うわけです。そういう状況にあるときに、僕が思うのは、グループとしての魅力を高めることを考えるのも大切じゃないかなあということです。

ビーチ  ここでひとつ確認しておきたいんですが、目的意識もなく、ただ“いいことだから”という意識でやってるのなら止めたほうがいい、と僕は思っています。いま“いいこと”だと思っていても、ひとつの価値観が30年続くことはほとんどないわけですから。そうじゃなくて、自分の欲望としてやっているんだというというところか始められるといいんじゃないかなあ。例えばビーチクリーンに取り組むのは、ビーチ・バレーやサーフィンみたいに、海でスポーツするのにビーチがきれいじゃないと自分が嫌だからやるんだ、と。それは、すごく継続性があると思うんです。自分がサーフィンをやりたい、ビーチ・バレーが楽しいと思っている間はずっとそれがモチベーションになり続けるわけだから。そういう意識から始めないと、あまり意味がないと僕は思ってるんです。(補足:「漠然とした良いこと」をしたいという欲求を否定している訳ではもちろんありません。もちろん、単純に綺麗な海が好きだから、砂浜が好きだから、さらにはみんなでできれば何でもいいから海辺を掃除する。そこにも意義があると思います。あくまで運営側の意識の問題、欲求の自覚の問題を論じています。)

 まずは、自分の欲望から始めたんだと自覚できる状況に立つ、と。その上で、最終的な落としどころを見失わないことですよね。もちろん、欲望にもいろいろあります。“もっと食べたい”とか“いろんなものを手に入れたい”とか。そういう欲望と、“自分の子どもがもっと幸せに生きてほしい”という欲望とどっちが大切かということを、普段あまり考えていない人もいるかもしれないけど、それを問いただされたら、子どもがいない僕でも“どっちかと言えば、子どものためになることをしたほうがいいのかな”と思いますからね。一人ひとりが折にふれてそこのところを確認するべきだろうし、また集団のなかでそういう視点をうまく提示することができる人がいるところは、コミュニティがうまくまわっていくと思うんですよね。

 また、自分の欲望からスタートしたという意識の人たちは、同じチーム、同じ団体でなくても、運命共同体みたいな関係でつながれるんじゃないかと思います。だから、その人たちで例えば“私たちが考えるビーチに優しいバーベキュー・パーティー”とか企画して、みんなで楽しめばいいんじゃないでしょうか。“ビーチをきれいにする団体なのに、バーベキューなんてやったらビーチを汚すことになるじゃないか”なんていうふうには考えないでください。大切なのは“どうやって自分たちなりの楽しみ方をみつけるか?”ということを広くプレゼンしていくことで、そうしないと集まりがどんどん疲れていってしまうし、ということは元々のリソースを食い尽くしていくだけになってしまいます。そういう状況を避けるためにも、自分たちで、自分たちのモチベーションを追い炊きできるような形に持っていければいいと思うし、そういう意味ではやはり“楽しんだ者勝ち”なんだろうと思うわけです。

 そのあたりは、エコの取り組みと音楽活動はすごく似ているかもしれません。ゴスペラーズも、“いい音楽、いいステージ”という答えがなかなかみつけにくい問題とずっと真正面から向き合ってきて、やっと15周年というひとつの区切りの活動をやり終えたところですが、これからの活動をさらに充実させるために、メンバーもスタッフも一生懸命に次の展開を考えているところです。まあ、“楽しんだ者勝ち”というのはまさに“言う容易く、行うは難し”ですが、ゴスペラーズの“次”にもぜひ期待していてください。

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