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Vol.174 プラスチック油化の技術について見学してきました。その3

  • 2015年7月2日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今回は、株式会社ブレストを見学した、そのレポートの3回目。ここでは、プラスチック油化装置や同社の取り組みから離れて、伊東社長の話を聞いていて、伝わりやすいプレゼンテーションのポイントについて書いてみたいと思います。というのは、単純に社長の説明がわかりやすかったからで、そのわかりやすさについて改めて考えてみると、情熱や理想を伝えるのに必要なポイントがちゃんと備わっているなと思ったわけです。

環境授業(パラオ)  まず、理系の技術を説明する上では基本中の基本とも言えることですが、どのような事柄についても、数字的なデータがしっかりインプットされているということがあります。それは、伊東社長が単なる経営者ではなくて、バリバリの現場の人であることも大きいでしょうし、またいろいろなところに出かけていって場数を踏み、その先々で一度突っ込まれた事柄については確実に押さえているという印象でした。僕らとのやりとりのなかでも、僕らが思いつくようなことはたいていすでに試されていて、隙がないなあという感じです。しかも、ブレスト社の取り組みは、東南アジアのゴミ捨て場ではずっと問題になっている注射針(「感染系医療廃棄物」と言うそうです)の処理、果てはセシウム濃縮の問題にまでもおよんでいて、その一つひとつの事柄に対する情報量や取り組みの深さは生半可なものではありません。

 ちなみに、この会社の油化装置を使ってプラスチック・ゴミ1キロを1リットルの油にするのに1.2キロワットの電気が必要で、そうして出来上がった1リットルの油から3.5キロワット発電できるそうです。つまり、2.3キロワット電気が余る。だから、リサイクルする意味がある、というのが社長の説明です。わかりやすいですよね。かつてペットボトルのリサイクル施設を見学した際、そのリサイクルの行程のエネルギー収支について質問したところ、「日本には“もったいない”という文化がありまして…」という説明をされて愕然としたことがありましたが、逆に期待していたプラスチック油化がこんなにプラス収支になるということを聞いて、予想以上の数字にびっくりしました。

環境授業(パラオ) それから、社長のお話には、そうした数字データの使い方も含め、なかなかに優れたコピーライターだな、ということも感じさせられる場面がしばしばありました。例えば「ゴミ1キロが1リットルの石油に」というのはこの油化装置の機能を過不足なく伝えていますし、その装置のコンセプトは問われれば「茅ケ崎駅から品川で乗り換えて博多まで新幹線で行けるチケットを買う能力があれば運転できる装置」と説明してくれます。あるいは、小学生が持ち寄ったプラスチック・ゴミから油を作る取り組みを「スクール油田」と呼び、ゴミ処理という問題においてはその品物を生産する人も流通させる人も売る人も買う人もすべてに責任があるということを伝えるのに「赤ちゃんは、オムツというゴミの生産者なんです」と言って、にっこり笑ってみせます。「自産自消」というのも、大事なコピーですね。ブレスト社の油化装置のベースには、「自分が出したゴミを、目の届く範囲で燃料に換えて、その場で使う」という発想がありますが、それを称して「自産自消」と言っているわけです。

 もっとも、そうしたコピー・センスや数字データの蓄積も、そのベースに真っすぐな情熱があってこそ、ということは忘れてはいけないと思います。僕たちが、今回見学に行って大いに説得されたいちばんの理由も、2時間余りの間ずっと話し続け、しかもまったくテンションが落ちない伊東社長のエネルギーの高さだったと思います。伊東社長の声の魅力も大きかったと思いますが、伊東社長は小林旭さんの大ファンだそうです。あっ、これはあまり関係ないか(笑)。いや、関係あるかも(笑)。

 というわけで、3回にわたってブレスト社のプラスチック油化装置について見学したレポートを紹介しましたが、いつにも増して大いに刺激を受けました。改めて、お礼を言いたいと思います。伊東社長をはじめ、ブレスト社のみなさん、本当にありがとうございました。そして、ますますいろんなところに出かけていきたいという思いを強くした北山でした。

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