サイト内
ウェブ

Vol.143 マイファーム代表・西辻一真さんとの対話その1

  • 2014年3月27日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今回は、マイファームの西辻さんとの対話から一部をご紹介していきますが、西辻さんと話していると本当にいろんな部分で“僕と同じだな”と思うことがありました。例えば、なぜ子どものときの喜び体験からブレずに農業を仕事にすることになったのか?という質問に対する西辻さんの答えが印象的です。

西辻:すごくわかりやすい話で言えば、僕の名前は「一真」というんですが、つまりひとつのことに真っすぐなんですよね(笑)。ひとつのことを思うとずうっとそのことばかり思い続けるという性質があることを自分でもよく理解していて、だからあまり周りの人を見てこなかったというのが良かったんじゃないかなあと思うんです。例えばみんなサッカーやってるから僕もサッカーをやる、という感覚は全然なくて、僕のやりたいことは野菜作りだから、それをやるっていう。親に「勉強しなさい」と言われたこともありましたけど、あまり聞いてなくて(笑)、でも農業がやりたくなったので物理と化学と生物だけはむちゃくちゃがんばります、というふうになったり。そういうふうに、人それぞれにその人が進む道があるんじゃないかなあと思っていて、僕の場合はそれが農業だったということだと思います。
北山:僕もまったくそういうタイプなんです。で、大きな話をすれば、日本の教育はそうあるべきなんじゃないかとも思ってるんです。基本的に、本人が必要性に気づいたり、やりたいと思っていなければ、それは結局無駄に終わるじゃないですか。そういう意味でも、農業のようにひとつのことにすごくたくさんの科目を含み込んだものに取り組めばいいと思うんです。今は職業にしても学校の科目にしても、ものすごく細かく分かれていますけど、畑作をやろうと思った瞬間に、20くらいの科目を全部まとめて勉強することになるんですよね。
西辻: その通りです。それに、農業はいろんなことを含み込んでるから、同じ農業界のなかでもお互いは敵にならないんです。例えば漁業の世界では同業者はライバルですよね。漁場が同じなら、そこで誰がいちばんたくさん穫るかという話になりますから。ところが、農業の世界では、まず需要と供給のバランスで言えば、世界で少なくとも8億人が飢餓で亡くなっていると言われている状況ですから食料は足りないということが大前提としてあるわけです。しかも、農作物を作るのは、それぞれが農地さえ確保してしまえば、決して敵にはなり得ないですよね。むしろ、協力者になる可能性が高いです。「堆肥を共同で仕入れよう」とか、「共同で出荷しよう」とか、共同の精神がいちばん強い産業であるというふうに言えると思います。だから、同じ農業をやっている人との関係性が作りやすいんです。
北山:もうひとつ農業がすごくいい勉強になると思うのは“いのち”ということについてなんですけど、例えば犬を飼うとなると、うまくいっても何か失敗をしても、その犬と10数年付き合うことになりますよね。でも例えば畑作の場合は、1年ごとに試行錯誤を積み重ねることができる。それは、いちばん短い期間で学べる“いのちの勉強”かもしれないと思うんです。
西辻:農業のいいところは何か?という話になりますが、どんな仕事でも普通は納期があるように、人間が時間をコントロールしようとするのが工業の考え方ですけど、農業は逆に自然の時間の流れに僕らが合わせないといけないんですよね。農業をやっていると自然に畏敬の念を抱くということがよく言われますが、まさしくその通りで、僕らの会社は7年目で、ということは7回しか植え付けができないということなんです。だから、例えば3月20日に夏野菜の種を蒔き、5月に苗を植えて、やがて収穫の時期になります。で、8月の暑い時期にいったん終わって、また9月20日に種まきをして新しい作物を育て始めます。このスケジュールが1週間でもズレると、作物はできません。この流れというのは、もう決まってるんです。つまり、自然から、「この時期にやりなさい」と言われているということですよね。そうなると、僕たちとしては、無理なく仕事ができるんです。誰かに、仕事のスケジュールを動かされることがないですから。人間の都合で、「納期を早めろ」と言われても、それはできないことですからね。だから、農業の世界では仕事ができる/できないということは基本的にはないんですよね。
北山:やめない人ができる人、ということですよね。
西辻:そうです。続ける人が、いちばんプロフェッショナルな人である、と。何か差ができるとしたら、それは例えば種を蒔くまでにどれだけいろんなことを考えて準備したり工夫したりできるか、またいろんな人の話を聞けるかということだけなんです。誰でも受け入れてくれる産業なんじゃないかなということはすごく思います。

 どうですか? あなたも農業をやりたくなってきたんじゃないですか(笑)。次回も、もう少し西辻さんとの対話から紹介します。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。