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Vol.138 新年に思うのは「やはり今はチャンスではあるんだろう」ということです。 

  • 2014年1月16日

 みなさん、あけましておめでとうございます。ゴスペラーズの北山陽一です。今年もよろしくお願いします。

 昨年末は、東京・国立市でオフグリッド生活を続けている二人の女性にたて続けに取材したわけですが、やはり大いに刺激も受けたし、またあらためていろいろ考えることがありました。例えば杉若優子さんは「いまは太陽光パネルを使ったオフグリッド生活をしているけれど、これはもっと自然に還っていける暮らし方をいろいろ模索している過程の、その途中の状態という感じ」と話していましたが、確かにオフグリッド生活というだけでそれが十分に人間らしい生活かと言えば、そんな単純な話ではないことは明らかですよね。人間が地球上で好き勝手やっても平気な数を軽く超えてしまって様々な問題が吹き出し続けている最中、「本当の人間らしい生活とは…」というような話をするには、僕らはまだ世代的に早過ぎるような気がするんです。これから3世代くらいの間にいろんなことをがんばって、諦めざるをえないことを悟り受け入れながら様々な角度から生活のあり方を模索するなかで、ようやく“人間って、どうやって生きるのがいいの?”ということがちゃんと考えられるようになるんじゃないかなというのが、今のところの僕の感触です。実際、国立には杉若さんの言葉を借りれば「面白い人」がたくさんいて、彼らは従来の常識にとらわれない暮らし方を実践しているようですが、でも家庭を持つとそういう人たちもコミュニティから離れていってしまうということです。それが、残念ながらそういったカルチャーやコミュニティの現時点での限界で、現実的に東京では、というか現在の都市社会でそうした生き方が成立しないということだと思います。その現実はクールに見据えておかないと、夢に傾き過ぎて足元をすくわれることになるという気がするんです。具体的に何かの力に押しつぶされるというようなことでなくても、あるいは大きな悪意のようなものに飲み込まれてしまうというようなことではなくても、昔ながらの常識やしきたり、ならわしといった生活習慣はけっこう手強いですからね。功罪あるにしても、意味と実績があるから常識であり、習慣なわけですから。

 もっとも、見方を変えれば、それだけ手強いものが根を張っている社会にあっても、確実に「面白い」暮らし方を指向する人は増えていると言っていいんだろうと思います。震災以降周りの人々のようすを見ていると、これまで「幸福な生活」として語られてきた暮らし方の多くに疑問を感じている人の数は間違いなく増えているし、だからこそ新しいライフ・スタイルを生み出していくチャンスではあるんだろうとも思います。

 特に、僕が藤井さんや杉若さんに興味を持ったのは、オフグリッド生活を、他でもない東京で続けているというところです。現代社会の暮らしに嫌気がさして自然が豊かな場所に移り住む、という人はこれまでにもたくさんいたし、だからそういうライフ・スタイルの変更についてのマニュアルや必要なものはある程度整えられていたりします。ところが、藤井さんや杉若さんにはそういうマニュアルがなく、それを逆に面白がっているという、そこにすごく可能性を感じました。先に書いた、3世代くらい先の人たちが「本当の人間らしい生活とは」ということを考える際に有効な選択肢を整えるために、いろんな人がいろんなことをやっていくなかの、とても大切なひとつの試みだと思います。

 というわけで、大いに刺激を受けた僕も今年は具体的に何か成果をあげていきたいなと思っている次第です。藤井さんの話を紹介した回でも書いた通り、春頃までには何か具体的な報告ができればいいなと思っているのですが…。そう言えば、毎年新年最初の更新でも1年の目標を書いていましたね。今年は、ひと言で言えば、衣食住の充実をはかりたいと思っているのですが、詳しくは次回ということで。どうぞ、今年もよろしくお願いします。


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