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Vol.98 THE TRUE COST ファッションと、途上国の労働環境

  • 2015年12月17日

 「エシカルファッション」という言葉は以前からよく聞いていましたが、近年になってかなり広まってきているようです。素材やデザイン性のみで判断されがちだった過去の歴史に対して、倫理的に正しく製造され、なおかつ地球環境への配慮がされているかという基準に沿って、服づくりをすることを指します。

 代表的なブランドのひとつは、ポール・マッカートニーの次女が運営する「ステラ・マッカートニー」。アルバム「RAM」以降、動物愛護に力を注ぐようになった父の影響もあると思いますが、洋服に動物素材を使わないことで有名です。社会起業家のサフィア・ミニー氏が日本で立ち上げた「ピープル・ツリー」の店舗もよく街で見かけます。こちらは生産をまかなう途上国の人たちへ正当な対価を支払うべく、フェアトレードを積極的に取り入れています。

 そんなエシカルファッションの台頭よりも一足先に、しかも気が付けばあっという間に市場を席巻していたのが、ファストファッション。ひとつひとつの服が非常に安価で、商品の入れ替えも早く、今やコンビニ感覚で服が買えるようになりました。そんなファストファッション業界をはじめ、大企業の服の生産の裏側について、倫理的な観点から問題を投げかける「THE TRUE COST」という映画を、先日見に行ってきました。

THE TRUE COST

 ちなみにファストファッション系のお店に行くと、昔に比べてどうしてここまで安く服が買えるんだろう、古着でもないのにこんなに安くて手に入れてしまっていいのかな、というちょっとした後ろめたさを感じるのは、僕だけでしょうか。でも正直言うと、すでにその安さに慣れてしまっているところもあります。そんな便利さの影で、低収入のなか縫製してくれている、おもにアジア諸国の人たちがいるんだろうなということは、やっぱり手に取るたびに感じます。

 映画「THE TRUE COST」のなかでは、バングラディシュの首都ダッカにある縫製工場の崩落事故を取り上げています。あちこちの壁に亀裂が走るほどの脆弱な造りをオーナーは無視し続け、結果的に千人以上の死者が出てしまいました。この大事故をきっかけにして、現地の服づくりにおける劣悪な労働環境が次々と浮き彫りになっていきます。

 過去20年間で、アメリカの衣服の消費は4倍に拡大しているそうです。しかし前述したように、服のデフレ傾向はとどまるところを知らず。日本も同じような状況です。そうなると結局いちばんに影響が及ぶのは、発展途上国の労働者たち。ひとりひとりの賃金が下がる傾向にあっても、統括する工場の経営者でさえ、ほかに仕事をまわされるわけにはいかず、NOと言えません。労働環境を守るための設備投資も、後回しになってしまいます。

 しかし目線を変えれば、良いニュースにも出会うことができます。例えばユニクロは、リサイクル品を使ってアフリカなどの国々の難民支援をしています。とくにバングラディシュでは「グラミンユニクロ」を立ち上げ、現地で生産・販売をした利益を、同国のソーシャルビジネスに再投資しているそうです。もしもこの先もファストファッションの流れが止められないのであれば、CSR(企業の社会的責任)事業を通して、誰も負担のない、気持ちの良い循環が成り立つ世界を目指してほしいと、切に願います。

 オーガニックフードが注目されるようになった頃、食べ物がどのようにしてどこからやってくるか、そんな映画が多く作られ、僕もよく見に行きました。そしてエシカルファッションが広まってきているこのタイミングで、僕たちが毎日袖を通す服が、どんな人によってどんな過程で作られているかをあらためて知るのは、とても意味のあることだと思います。

 僕もこれから、服に対する目線が変わりそうです。たとえば綿の栽培からでなくても、縫製は国内でしているとか、そんな地産地消に近い工程で生まれた服を、すすんで探してみたくなりました。




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