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Vol.52 「きこえる・シンポジウム×かねあいキッチン 2013 冬 in 砂川」 レポート その2

  • 2014年2月6日

 前回に続き、今回も昨年の11/30に北海道砂川市で開催した「きこえる・シンポジウム」のレポートをお送りします。このイベントでは「食」のテーマとは別に「身体の環境」についても、取り上げました。

 Vol.46のコラムでも紹介した「アレクサンダーテクニーク」。身体の緊張を解いて、本来の骨格のデザインの通りに自然体の動きを目指すことが目的で、ポール・マッカートニー、スティングなどのミュージシャンのほか、俳優、スポーツ選手などが多く取り入れ、実践に生かしています。この日は認定教師である高橋美代子先生を東京からお呼びし、アレクサンダーテクニークの本格的なワークショップを「砂川市地域交流センターゆう」内のミニホールで開催したのですが、大ホールの方でも簡単な体験コーナーを作っていただきました。ここではそのミニ・ワークショップの模様をお届けしたいと思います。

高橋美代子先生
高橋美代子先生
(写真提供 5枚とも:新居幸洋さん)

 「みなさんこんにちは、高橋と申します。アレクサンダーテクニークってご存知ない方がほとんどでいらっしゃると思います。私がお伝えしたいのは、身体の自然な動き方、楽な動き方のお話です。もしかしたら、私たちの知らないすごく自然な動き方があるんじゃないかって思って下さい。身体のどこかが痛くて辛いときはこう考えませんか、年を取ったから、筋肉が弱ったり関節が硬くなったから、何か自分に弱いところがあるから、、、。でも、こう思ってもらいたいんです。『本来の動きを取り戻したら、無理に鍛えなくてもいいかもしれない』と。」

 先生にははじめに、頭を動かすときの楽な方法について、話していただきました。どこにも負荷をかけず、もっとも軽い力で頭を動かすには、どうすればいいのでしょう。そうそう、首の骨って意外と後ろの方にあって、かなり上の方まで続いてるんです。

 「ほお骨と後頭部の真ん中に、首の骨の始まりがあります。耳と耳のちょうど真ん中です。ではまず順番に、ほお骨を触って、後頭部を触って、右の耳、左の耳を触ってみてください。右の耳を上に持ち上げたら、左の耳は下がりますよね。反対に左の耳を上にしたら右耳が下に。次にほお骨を下に動かすと、後頭部が上がり、後頭部が下に行ったら、ほお骨が上がります。首の骨と頭が出会う位置が把握できたら、頭がダンスをするみたいに、何度か軽く揺らしてみましょう。わたしたち脊椎動物の本来の動きを感じてください。」

 次に手を動かすとき。上や前方に腕を伸ばす際に、頭も一緒に持って行こうと思うと、とても楽な動きになります。

 「右手をゆっくり上げます。そのとき頭を動かさないで、、、はい、下ろします。では今度は、頭も上に上がるんだという気持ちで、、、どうですか。頭が最初に行ってくれると、手は上に行きやすいんです。ところが頭が下りたままだと、頭の重さがブレーキになる。それと、わたしたちの手は肩から動くと思っているかもしれませんが、 手の動きの第一関節は鎖骨です。鎖骨に手を当てながら腕を上げてみると分かると思います。鎖骨→肩→肘→手首→指の順に動く。これが手の動きになります。後ろ側は肩甲骨の真ん中にある筋肉が最初です。」

アレクサンダーテクニーク

 僕らもステージに上がってお客さんと一緒になって、腕をいろんな方向に動かしてみました。鎖骨や肩甲骨を触ると、自分の骨がどんな風に動きを取っているのかがよく分かります。たとえば楽器を扱うとき、前の方で弾くときは鎖骨から、体全体で演奏するときは背骨の中心を意識して、肩のことはいったん忘れてもいいのかもしれません。

 「鎖骨から小指の先までが手なんだと思って、大ホールの天井の電球を掴みにいくような気持ちで、手を上げてください。皆さんどうでしょう、肩がちょっと柔らかくなってきませんか。洋服には肩のパーツがありますが、骨格上には肩はないんです。けれどわたしたちは筋肉を固めてわざわざ勝手に作る、だから肩凝りになったり。あ、そうか、真ん中に骨はないんだ、前の骨と後ろの骨でぶらさがっていて、鎖骨と肩甲骨を起点にして動きを取るんだ、と思ってみてください。」

アレクサンダーテクニーク
(左から)河野丈洋(GOING UNDER GROUND)、Quinka、HARCO、フタキダイスケ

 次は座ったときの姿勢についてです。腰のウエストラインが上半身と下半身の分かれ目だとつい思ってしまいますが、骨盤の横にくっついている股関節から始まる大腿骨から先が、下半身なんだそうです。その下半身、つまり足を自由にさせるところから「座る」という行為は始まります。

 「ちょっと手のひらをお尻の下に入れていただいてもいいですか? グリッとした骨があったら、その下に手を挟んでください。そして片方ずつ手を抜きます。では、椅子の上でお尻歩きをしてみてください、右の座骨に乗ったり、左の座骨に乗ったり。次に、背もたれにお尻が付くくらい、椅子になるべく深く座って、背もたれに寄っかかってください。
 椅子に座るとき、どこかに力を入れて良い姿勢を自分で作ろうと思っているなら、それをやめてみてください。背もたれに上半身をまかせる、座面に足の重さをまかせる、床に足の裏をまかせる。そうすれば身体のどこにも力を入れずに、楽に座っていられますよね。わたしたちは力を入れずに立つことも可能なんです。ましてや座るときなど、どこにも力を入れなくていいはずです。
 自然体というのは、頑張って構えを作ったりする必要がないんです。背中が丸まってしまうんじゃないか、背筋が伸びないんじゃないかと心配になるかもしれませんが、実はわたしたちの呼吸そのものが、背骨の上下運動になっています。緊張を解けば解くほど、息そのものが背中を広げる効果になっていくんです。背骨は長くなり、頭を上へと向かわせてください。身体はとても長く、大きいです。」

 その後、僕たちはゆっくりと演奏の準備にとりかかります。先生の目的の中のひとつに、皮膚感覚で音楽を聴いてほしい、というのがありました。

 「身体はまわりのものに支えられているんです。立っているときは床に。座っているときは椅子の座面と背もたれ、足は床に。身体の重さは上から順番にそれぞれの関節を通して、足の裏を通して、床に体重が落ちたとき、自然に動くように出来ています。こうしよう、ということは忘れて。楽に鼻から吸って、鼻から吐いてください。そして皆さんの足下のその床は、舞台に繋がっています。これから流れる音楽を、耳から聴いて、足からも聴いて、背中からも聞いて、座骨からも聴いて、頭の上からも聴いていただきたいです。」

HARQUA(HARCO+Quinka,with a Yawn)の演奏

 そして僕らHARQUA(HARCO+Quinka,with a Yawn)の演奏が始まりました。聴いている皆さんはどんな気持ちだったのでしょうか。このときグランドピアノを弾きながら歌っていた僕も、とても良い心地だったのを覚えています。ふわふわ〜と浮かんでしまうようで、けれどもしっかりと足は地に着いていて。手足の動きや声のひとつひとつに、強い必然性のようなものを感じました。

砂川中学校吹奏楽部の皆さんと、社会人による吹奏楽チーム「砂川ブラススタイル」、かねあいバンドの皆さん、ドラムにGOING UNDER GROUNDの河野丈洋くん、そして僕たちHARQUA&サポートのフタキダイスケくん、総勢約50人の演奏

 この日は最後に、砂川中学校吹奏楽部の皆さんと、社会人による吹奏楽チーム「砂川ブラススタイル」、かねあいバンドの皆さん、ドラムにGOING UNDER GROUNDの河野丈洋くん、そして僕たちHARQUA&サポートのフタキダイスケくん、総勢約50人の演奏で、フィナーレを迎えました。曲は、僕の「世界でいちばん頑張ってる君に」、そしてTHE BEATLESの「All you need is love」を。東京と北海道という距離を隔てているにも関わらず、こうやって一緒に演奏できたことは、お互いに貴重な体験だったのではと思います。そして僕らにとっては砂川にまたひとつ、大きな思い出が出来ました。

 こうして19回目の「きこえる・シンポジウム」は幕を閉じました。ご協力いただいた、砂川市をはじめ北海道在住の皆さん、ありがとうございました。次の20回目の「きこえる・シンポジウム」もお楽しみに〜。

 


 

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