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Vol.50 日記をつける、日記をよむ

  • 2013年12月26日

 今年もあとわずかですね。僕は今この1年を振り返る前に、その材料がたくさんありすぎて少々困っています。というのも、今年の春くらいから日記を付け始めたのですが、1日当たりA4サイズ1ページ、それぞれみっちり書いてあって、すべて読み返そうと思うと大量の時間がかかるのです。

 どうやら僕の「メモ魔」ぶりにも拍車がかかってきたようです。その日の天気、起床&就寝時刻はもちろん、すべてのご飯メニューから出会った人の名前、その日に起きたこと、音楽についての考察、目標から反省まで、毎日たくさん書いてきました。自分以外は誰も読まないので、その文章の雑なことといったら、、、本当にひどいです。

 それでもあとでピックアップして読めるように、印象的なことは色鉛筆で印を付けるなど、たったひとりの読者への心配りをしています(笑)。ときにはイラストや似顔絵を書いたり、空いたスペースに短い詩を書いたり。お酒が好きなのですが、都内で出会ったいろんなビオワインの特徴から、ツアー先で教えてもらった各地の日本酒の感想・ウンチクも端々に綴っています。

 「ほぼ日手帳」に代表されるように、ここ数年、日記感覚でたくさん書き込める手帳が流行っていますよね。僕も昨年はそういったものに綴っていたのですが、ライブの遠征による地方滞在も多くなり、分厚い手帳を持ち歩くのが苦になってしまいました。そこで思い付いたのが、1枚ずつルーズリーフに綴って、あとでファイルにストックしていくというもの。これなら旅先でも軽くて便利です。

 スマートホンやタブレット端末のように、移動中やカフェなどでさらっと書き加えたりは出来ないのですが、毎日寝る前に腰を据えて、例えば15分、その日のことを振り返る。この時間が僕にはかけがえのないものになりました。でもたまに日記を数日さぼってしまって、まとめて振り返って書いていたらすっかり夜更かし、なんてこともあります。日記の達人がもしいたら、どんな風に日記を付けているのでしょうか。

 というわけで、以前から好きな本を1冊紹介します。その名もずばり「日記をつける」。作者は詩人・エッセイストの荒川洋治さんです。自分の日記の付け方から始まり、日記のさまざまスタイルについての考察、昔の人々の日記からひも解く当時の生活についてなど。名を成した作家の死後、赤裸々な日記が手に汗握る作品に生まれ変わることもあります。遠い国の名も無き少年が残した1日3行の日記も、不思議と読みごたえがありました。でも荒川さんは、あくまで「日記はつけるもの」と念を押します。日記が本来、読むよりも書くためにあるとしたら、もはや書物ではなく行為をさすのかもしれません。

 さらにもう1冊紹介させてください。その本のタイトルは「役立たず、」。作家・石田千さんの2009年から数年間のエッセイをまとめたものです。東京で震災を経験し、その後の節電生活の様子なども綴られています。石田さんの文章は、どこかひねくれながらも穏やかさ・懐かしさがあり、隣人とのちょっとしたやり取りがいつの間にか豊かな人情劇になっていたり、ひとりごちる時間に感じたことがユニークに書かれてあったりと、とても面白いです。例えが変わっているかもしれませんが、読んでいると粘り気のある饂飩(うどん)に自分がからまっていくような、不思議な心地よさを感じます。内田百けん(けん=門構えの中に月)の読後感にも近いかもしれません。

 毎日、自分や誰かの役に立つことばかりがすべてではなく、むしろ何の役にも立たないことが、人生のなかで大きな意味を持っていたりすることは、しばしばあります。それなのについ、もっと何かの役に立ちたい、意義のある作品を残したいと渇望し、空回りしたり、肩肘はって力んで疲れたり。そんなときにこの本を読んでいると、すーっと楽になる自分がいます。いつかの自分の日記にあった、余計に注文した1杯のハイボールでさえ、とても意味のあることのように思えてくるのです。

 ところで、今年最後のこの回で、フィールドスケッチ・シェアリングは連載50回目を迎えました! いつも読んでくださっている皆さん、どうもありがとうございます。ここで初めて、僕の連載に関するアンケートを実施したいと思います。下の2つの項目に、もしよろしければ、ご意見・ご感想をお書きください。ソーシャルネットワークも盛んな昨今、やっぱり皆さんからの声がいただけると、僕も書きたいことのヒントがいろいろと見つかって、とても励みになります。お返事、楽しみにしています。それでは、来年もこの「緑のgoo」でお会いしましょう。

HARCOさんへの50回記念アンケートは、2014年2月末をもって募集を締め切らせていただきました。
たくさんのコメントを有難うございました。

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