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Vol.40 きこえる・シンポジウム 2013 夏 その2

  • 2013年8月8日

 今回は「木」をテーマに7/6に行った「きこえる・シンポジウム 2013 夏 in senkiya」のトークの模様をお送りしたいと思います。7/6、時刻は午後5時を回って、暑かった一日も少し涼しくなってきました。トークメンバーはいつもよりぐっと多く、8人。丸く囲むように、senkiyaの家の縁側などに腰掛けて座りました。

写真撮影:budori 秋本翼さん/トークメンバー左から:KiKiさん、宮薗さん、湊さん、KINO松本さん、HARCO、Quinka、高橋さん、きみちゃんさん
写真撮影:budori 秋本翼さん/トークメンバー左から:KiKiさん、宮薗さん、湊さん、KINO松本さん、HARCO、Quinka、高橋さん、きみちゃんさん

HARCO:僕とQuinka以外の皆さんは、木に関わるお仕事をなさっているんですけど、今日はおひとりおひとりに普段のお仕事などについて聞いて行きながら、いろんな木にまつわる話ができたらいいなと思います。まずは高橋さん、このお店は出来て何年くらいなんですか?

高橋さん(senkiya):ここはカフェとしては4年目ですね。父は今も昔も植木屋としてやっていて、僕自身もはじめは植物の仕事をしていました。みなさん車を(あちらの広い)駐車場に停められたと思うんですけど、昔はすべて畑だったんです。でも時代の流れと共に、使いたくても使えない状況になってしまって。植木屋の「千木屋」という名前は父も僕も残したい、お店をやるんだったらこの名前で、ということで今の形に。でも僕も、植物と絡めた何かをこれから始めたいな〜というときにこの話を頂いたので、これをきっかけに展開できたらいいなと思っているんですけどね。

HARCO:でもすでに、植物でいっぱいの豊かなお庭ですけど。

高橋さん:このお庭を造ってるのが、ここにいる友人の彼なんですけどね。このあいだも来て「芝生がこれじゃダメだな(ボソッ)」と、さりげなくお叱りをいただいたところで(笑)。

きみちゃんさん(田中植木):うちはじいさんの代から始めて、僕で三代目になるんですけど、基本は植木の生産をしています。生産、、、といっても皆さんよく分からないですよね。ホームセンターなどで売っているような感じではなくて、地面に苗を植えまして、ある程度まで育ててからそれを「根巻き」という、根っこを布でくるんだ状態にして出荷するということを行っています。それ以外に、個人のお庭の管理もやらせてもらっています。

HARCO:この辺りは植木屋さんが多いですよね。どうしてなのかなぁと思いました。

きみちゃんさん:この界隈は「安行(あんぎょう)地域」と一括りに呼んだりもするんですけど、歴史が古く300年ちょっと続いている植木の街で、日本全国の四大生産地と言われていたこともありました。今でも「関東が一番」ということで、かなり遠方から年に3回も4回も買い付けに来る方もいます。

HARCO:駅からの道でも、ここも植木屋、あそこも植木屋。江戸時代からずっと植木の街として栄えていたんですねぇ。

きみちゃんさん:関東ローム層という昔の火山灰の積もった土地なので、植木の生産には適した土地ではあると思います。生産者、造園業者など、植木を買って一般消費者の方に届けるまでいろんな職種があるんですけど、この界隈は正直数えきれないほど。家を建てたり植木が欲しいなと思ったら、ぜひ安行で買ってください!

HARCO:うまいですね(笑)。ここsenkiyaさんもどんどん増築したり、内装に関しては棚をお風呂屋さんのロッカーからもらって来たりとか、工夫してる感じが好きです。

高橋さん:きみちゃんが切った木を、乾燥させて枝だけにしたものをそのまま展示に使ったり。今回も2階の展示で、ヒノキのスピーカーと上手く組み合わせた枝も、その場で小枝をパシパシと落として、置いて行ってくれたものなんですよ。

写真撮影:budori 秋本翼さん
写真撮影:budori 秋本翼さん

HARCO:さて、作家さん側にも聞きたいと思います。KiKiさんや湊さんの工房に先日遊びに行かせてもらったんですが、僕らの普段使っているスタジオと違って、ひとつひとつの機材がものすごく大きいですよね。

Quinka:男の仕事という気がしましたね。木屑にまみれて働く姿と言うか、背中がかっこよかったです!KiKiさんはもともと、おうちを作ったりとか?

KiKiさん(Postman Foret):そうですね、実家の関係で住宅の仕事をやっていたんですが、趣味で家具を作っていて、それがメインになりました。もともとアンティークが好きなんですが、やっぱり高いじゃないですか。妙に汚れていたりすると、何に使われていたか分からない、それならば自分で作ってしまおうと。古く見せる「エイジング」という技など、いろんな方法を自分なりに試してみて、ようやく最近いい感じになってきました。

写真撮影:budori 秋本翼さん
写真撮影:budori 秋本翼さん

Quinka:愛着がよりわくというか、雰囲気が出るというか。以前も言っていましたが、大事にしていることは心を込めること、と。

KiKiさん:木自体が生き物なので、心を込めて作るとあたたかいものが出来るんじゃないかなぁと、いつも思っています。

HARCO:どういう種類の木をよく使ってるんですか?

KiKiさん:スギが多いですね、密度が低くて軽いので、女性が持ち運びしやすいですし。あとはナラ材。なるべく天然の、無垢が多いです。外資系も含めて、いわゆる大手の家具屋さんで売っている量産的なのって、合板(ごうはん)が多いですね。塗装してるから分からないけれど、切ると無垢ではなく、結構スカスカな状態なんです。

HARCO:合板って薄い板をミルフィーユ状にしてあるんですよね。でも無垢の場合は、木そのままの状態。湊さんもその辺りのこだわりは一緒ですか?

湊さん(ミナトファニチャー):そうですね、同じように合板は使いたくないのと、塗装もできるだけ自然塗料を使うようにしています。注文家具を作っているので、できるだけ時間をかけて、というのはもちろんなんですけど、なるべく金物も使いたくないんです。昔ながらの木組みの方法で作ったりとか。宮大工さんがよくやっているようなイメージですよね。それが好きで家具作りを始めた、というのもあります。

Quinka:今日のワークショップに使った木琴は、どんな木を使っているんですか?

写真撮影:budori 秋本翼さん
写真撮影:budori 秋本翼さん

湊さん:鍵盤の方がヒノキで、土台がスギですね。僕、いつもワークショップをやるときは、その土地の木を使ってやりたいなぁ、と常に思ってまして。senkiyaの高橋さんにお会いした最初のときに、実は埼玉県内に木を買いに来てました。

高橋さん:そのあとに寄ってくれたんですよね。

湊さん:はい。というのも、あるときぼくが友達の結婚式の引き出物を作ることになって、そのときの旦那さんが秋田出身で、奥さんが埼玉出身だったので、そのふたつの産地のスギの木を混ぜて作ろうと。秋田の木はすぐに手配できたんですけど、埼玉につながりがなかったので、探しに来て間伐材を購入した後だったんです。

HARCO:その土地の間伐材、いいですね。スギとヒノキに関しては、僕も今回のサウンドインスタレーションで使ったスピーカーを、最初はスギとヒノキでKINOさんに試作してもらったんですよ。それで、密度が高くて硬いヒノキの方が、音がまっすぐ届いていい音がするね、ということで、そっちで一緒にたくさん作ることになりました。木琴の鍵盤の方をヒノキにした、というのはよく分かります。

Quinka:やっぱりスギやヒノキは日本にたくさん生えているんですか?

湊さん:そうですね、植林されたスギやヒノキの山が日本にはたくさんあります。でも植えた当時は売れていてお金になっていたのが、今だんだん海外の木におされてきて、お金にならないので、山を持っている人たちが管理しなくなっちゃった。本当はそれを間引きして、まわりの木を育てなければいけないのに、放ったらかしなので細い木が密集してるんです。

Quinka:陽がちゃんと当たらないし、風も通らない。

湊さん:そうです。そうすると、木もそうですが、土とかいろんなものが育たなくなっちゃう。水も貯えられなくなっていい水が出来なくなるとか、様々な悪影響があるんですが、それを助けてあげる方法は、まず間伐。間引きしてあげて、木を太らせてあげて、土を良くしてあげる。そこで問題だなと思っているのは、間伐材って細いので売れないんです。一番売れない小径木(しょうけいぼく)って呼ばれるものは、、、。

HARCO:もっと細い木のことですよね。そこに植わっている小さな桜の木くらいかもしれない、眺めるにはいいですが。

湊さん:はい、14センチ以内を小径木と呼んだりします。国の政策もあって、切れと言われたら切れるだけ切るのですが、お金かけて運んでも売れないので、今でも山のなかに放ったらかしにしてある。できればその小径木を使ってなにか商品にしたいなぁと思って、いろいろ作っています。そのひとつが、さきほど話した引き出物用に作って、今回の展示にも飾ってある一輪挿しだったりするんですが。

HARCO:僕のスピーカーも小径木です。KINOさんのオフィス(budori)には、こうやって小径木を活用できるよというモデルがあって、それを見ると、小さな家具やこんなスピーカーはいくらでも作れそうだと思いますよね。

湊さん:小径木をさらに細かいチップにしてバイオ発電に使っているところもありますが、ぼくはやっぱりものづくりをやってる人間なので、燃やさずにできるだけ世の中にずっと残しておきたいと。二酸化炭素も一緒に残って固定化できるんで。今日作った木琴も小径木ですよ。

HARCO:日本中の小径木を木琴にすれば、林業の問題が片付くんじゃないかという錯覚に一瞬陥ってしまったんですけど(笑)。

 トークの続きとイベントの締めくくりは、次回のフィールドスケッチで。

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