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Vol.28 きこえる・シンポジウム 2012 冬 その2

  • 2013年2月14日

 前回に続き、昨年12/24に行われた「きこえる・シンポジウム 2012 冬」についてお送りします。トークゲストはwarmerwarmerの高橋一也さんとエディターの山村光春さん。トークの途中で、高橋さんの用意してくれた種を皆さんにお配りしたり、スライドでいろんな古来種野菜やその種の写真を流しながら、全国の古来種野菜のリストを紹介していただいたりしました。リストは会場の皆さんにもお配りしています。

写真撮影:フタキダイスケ
写真撮影:フタキダイスケ

高橋さん:「これが古来種っていう代々何百年何千年と続いている、その土地に残っている野菜の数々なんです。地元の方はもっとあるよ、と言います。このリストのように実はおもしろい名前で、おもしろい色で、おもしろい形のおもしろい野菜がたくさんあるのに、なかなか市場に出て来ていなくて。」

HARCO:「行きつけのスーパーなら夕食の買物でそこにある野菜はだいたい一通り買っているから、未知のレコードを探すのと一緒で、もっといろんな野菜を直接触ったりして買いたいなぁって、日頃から感じていたんですけど。」

山村さん:「ところで、古来種野菜というのは、栽培する日数に関してはどうですか?」

高橋さん:「それぞれの風土と天候に適応するので決まっていないですね。(多く流通している一代交配種の)『F1種』はだいたい日数が決まっているんですよ。本来なら45日で出来るものが30日で作れたりとか、コントロールできて、一気に作れる。古来種は分からないんです。人間と同じなんです。自分の人生の先が分からないのと同じで、古来種の生育も先がわからない。これが普通。一方、先が分かっているのが『F1種』、、、。」

Quinka:「陽にあたる時間が長いから光合成もたくさんしているし、栄養が詰まってそうだなぁなんて率直に思います。土や風や太陽、気温の影響で、栄養素の多さだったり、実の付き方が変わるんでしょうね。」

高橋さん:「土地の環境で大いに変化していきます。長野の小芋を東京に持ってきたら別な芋になったりとか。我々野菜を扱う人間は、その土地に行くと風と土を見ているんですね。それによって野菜自体が大きく違ってくるので。ほんとうに人間と同じなんですよ。北海道の土と九州の土が違うように、それぞれ違ったところでできると、違った形になる。」

山村さん:「そうですね、田舎にいたときにはすごくいい人だったのに、東京に出て来たら変わってしまう人とかいますもんね(笑)。風と土、、、あ、『風土』だ! これこそが風土と呼ばれるゆえんなんですね。」

高橋さん:「ひたちなか市など、茨城の干し芋って美味しいじゃないですか。これは海風で芋を干すから美味しい。自分たちで千葉で作ったことがあるんですけど、いまいち美味しくないんですよ。やはりどうしても土地が平坦だから。ひたちなか市に流れている風が無いので美味しくし上がらない。で、千葉県で栽培した何の野菜が美味しいかっていうと、人参とか、里芋とか、落花生とか、土のものが美味しいんですね。千葉でほうれん草、小松菜を作っている方もいますけど、やはり群馬などの高原の方に行くとさらに美味しかったりとか。適地適作ていうんですけど。また、古来種の野菜というのは、その土地の風土にあってるから農薬や化学肥料を使わなくていいんですよね。無理して、その土地の風土にあわせる必要はないから。」

山村さん:「品種改良って遺伝子組み換えとはまた違うんですか?」

高橋さん:「遺伝子をいじるっていうわけではないんですよね。子供ができないようにして、規格をしっかりと揃えて我々が食べ物を選べるようにするのが『F1種』の一代交配種。」

HARCO:「子供ができないようにするのが、本来の目的ではないですもんね?」

山村さん:「だけど、その背景には種と苗の会社が関係するんじゃないですか? 毎年買わなくちゃいけないじゃないですか、古来種だったら自家採種することで成立するはずです。その会社の陰謀じゃないですけど、TPP参加になるとアメリカの種苗会社が入って来て、アメリカの種で日本は牛耳られてしまうと言われています。」

HARCO:「世界シェアトップの種苗会社『モンサント』の映画を僕はつい先日見たんですが、いろいろと考えさせられましたね。」

写真撮影:道明利友さん
写真撮影:道明利友さん

高橋さん:「よく春先にゲリラファーミングというのをやるんです。渋谷の街や、空き地とか公園に種をまくんです。そうすると、野菜というのは本能として種を残そうとします。新しい土地ほど、子供を残そうとするので種ができます。人間は何もしなくていいんですよ。自然とその土地の環境に適用しようとして、花を咲かせて種をつくって。よく多摩川の河川敷でも、野菜の種をまいて収穫してますよ。」

会場の皆さんから質問も募集しました。

質問:「種を作り続けなければいけないっておっしゃたんですけど、種って放置しておいてはダメなんですか?」

高橋さん:「命があるので、だいたい2年でダメになるんですって。人間と同じで、必ず寿命がある。5年、10年冷凍保存された人が突然蘇って、まわりを見てiPhoneがあったりしたらビックリしますよね。毎年毎年、種というのは環境に適応させなくちゃいけないので。いきなり別世界に行ってしまったら、それはやっぱり発芽しなかったり、環境に適応できなくておかしくなってしまいますね。」

質問:「あえてお聞きしたいのですが、高橋さんはどうして日本の古来種を未来に残していきたいと思ったのですか?」

高橋さん:「6年前に雲仙の岩崎さんに会って、種が大事だと思ったことがひとつ。それと、311の原発事故。そのあとすぐに福島の生産者から電話がありました、『種がなくなった』と。原発の影響で、まず畑と種がなくなった、代々自分が親から受け継いで守ってきたのに、一瞬でなくなった、って言われました。賠償してくれって東電に言ったら、笑われたって。『たかが種だ』って。もう、電話で二人で涙。これまでずっと親から受け継いだものを一瞬でなくしてしまったって。
 そのときに、これはまずいなと。誰もこの『種』について大事だっていう意識がない。何かまた震災や災害があったりしたら、種がなくなったら、子供たちへの責任を我々は果たせないんじゃないかって。誰がどの種を守っているのか、把握しなきゃいけないな、と。
 それともう1つは、レストランでコックをやっているときに無農薬野菜などを扱っていて、代々続く古来種の野菜を食べたときに、体がゾクゾクッとして、、、。『美味しい!』って、体が喜んだんですよ。そういったいろんな体験から、今の活動をはじめました。」

写真撮影:池田恵さん
写真撮影:池田恵さん

山村さん:「それぞれの土地らしさを愛する気持ちって本当は僕たち、持っているんですよね。だからこういった食だけでなくいろんなものが画一化していこうとしている状況に対して、潜在的に危機感は抱いていると思うんですよ。そんな中で自分が古来種の野菜を食べるということが、それを助ける、守るきっかけに繋がるんだっていうことが、今日は知ることができました。」

Quinka:「飼料用としてだけど、日本でも承認された遺伝子組み換えとうもろこしのニュースなど最近よく聞くんですが、食べ物についてもっと真面目に考えて選択していかなきゃいけないなと、思いました。」

HARCO:「例えばいろんな音楽を楽しむように、名前や形、味を楽しむっていうところから、古来種野菜がもっと広がれば。今は始まりの瞬間、まさに種まきの時期なんじゃないかなって本当に思います。」

写真撮影:池田恵さん
写真撮影:池田恵さん

写真撮影:池田恵さん
写真撮影:池田恵さん

 kaonnさんの古来種野菜ランチをいただきながらのトークコーナーが終了して、休憩をはさみ、後半はいつものようにHARQUA(HARCO+Quinka,with a Yawn)のライブ。サポートギターはフタキダイスケくん。Quinkaとフタキくんはギター、僕はスネアドラムと鍵盤を曲によって行き来していました。

 カバーも幾つか歌ったのですが、その中ではっぴいえんどの「風をあつめて」を「種をあつめて」と歌詞を替えて歌ってみました。もともとは都会の風景に幻想を重ねるようにして作られた歌なのですが、そんな都会であえて種を探し、『あつめる』。それは、食料自給率が1%の東京、2%の神奈川など、大きな消費地に暮らす都市生活者の責任のひとつとも言えるのではないでしょうか。

 前回と今回、古来種野菜についてたっぷりお届けしましたが、皆さんもぜひ探して、食べてみてください。ほかに在来種、固定種などの呼び方もあります。自家菜園で古来種を育てることも、もちろんできます。そのあとに出来た種を次に受け継ぐことができたら、完璧です。僕もチャレンジしてみます。




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