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Vol.14 堀下さゆり「fotonote」&「スマイル:)」

  • 2012年7月19日

  先日、福島県相馬市出身で今も相馬と東京を行き来して活動している、シンガーソングライター・堀下さゆりさんのプロデュースをさせてもらいました。6/17の父の日にミニアルバム「fotonote」として発売されています。

 アルバムには「家族写真」という曲があるのですが、これは2年前に亡くなられた堀下さんのお父さんに捧げられた歌です。想いが溢れるあまり当初はとてつもなく長い楽曲でしたが、二人で何度も話し合って、ストレートで力強く、あたたかく響く楽曲に育てることができました。

堀下さゆり「fotonote」&「スマイル:) 

 堀下さんは家族や友人、そして飼っているペットにもたくさんの愛を注ぎ、注いだ分だけのありのままの気持ちを素直に曲に表すことができる音楽家です。そして生まれ育った相馬という街も同じように愛していて、レコーディング中に何度も出てくる街の話からも伝わってきました。それだけにあの震災があった当時の、目の当たりにした相馬の津波の被害は、何よりも辛かったそうです。

堀下さゆり「fotonote」&「スマイル:)」
 その後の堀下さんの活動は、地元に根差したしっかりしたものでした。音楽などはまったく手に付かず、度重なる余震のなかで無力さを感じていた頃、立ち上がった「そうまさいがいFM」のお手伝いをするようになりました。相馬市役所の防災無線室で、おもに朝の放送を担当し、今まで経験しなかったニュース原稿なども読んだりしながら、現地を励まし続けました。

 そのうちに市内やお隣の南相馬市などの、避難所になっている学校で歌を頼まれることが増え、次第に再び音楽と向き合うようになります。「こどもたちが音楽をやりたいと言っている」、そのシンプルな言葉が、堀下さんの背中を押しました。さいがいFMと、福島のこどもたちと一緒に歌を歌うことが、堀下さんの毎日になっていきます。

 それはやがて「福島の子ども達に笑顔をプロジェクト」に繋がります。堀下さん自身が企画を考案し、相馬青年会議所の力を借りながら、福島の子ども達の手によるアルバムを作ることになりました。

 2011年の夏から秋にかけて、何度もいろんな小学校や中学校などに足繁く通い、子供達の歌や演奏を録音しました。最終的に1307人の子ども達が参加した「スマイル:)」というアルバムを完成させ、その子ども達自身や、全国のさいがいFMなどに配布されたそうです(その後、今年になってチャリティ販売も始まっています)。

堀下さゆり「fotonote」&「スマイル:)」
この街に咲く花のように風に揺れながら
今日を精一杯生きて
手のひらからこぼれ落ちた幸せの種を
ここにもう一度まこう

 「スマイル:)」に収録されていた「この街に咲く花のように」という曲を、すべてアレンジ&演奏しなおして「fotonote」にも再録したのですが、福島の当時中学3年生の女の子が吹いているホルンだけは、僕からお願いしてそのまま入れさせてもらいました。どこか凛と響くその音色が印象的で、福島からここまで直接聴こえてくる、そんな気持ちにさせてくれたからです。

 実は僕にとって、こうやってアルバムをまるまるプロデュースするのは初めてで、半分、自分の作品のような気持ちで参加させてもらいました。それはきっと、堀下さんのいろんなことを乗り越えた力強くて優しい声に、自然と引き付けられた結果でもあります。遠くから聴こえてくる歌を頼りにしながら、いつか僕も相馬の街を歩きたいと思います。

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