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Vol.11 静岡旅行

  • 2012年6月7日

 先日、二日間かけて静岡県を旅行してきました。友人で作家の甲斐みのりさんが「静岡百景」という本を出版したこともあり、それを片手に妻のキンカと旅してみようということになったのです。

 妻は静岡のK-MIXというFMラジオ局で、「キンカ, ウィズ ア ヨォンのカバみみ」というカバー曲をたくさん紹介するレギュラー番組を2年以上続けていて、もっと静岡を知りたいという彼女の意向もありました。僕にとっては(ありがたいことに)あまりにも忙しすぎる今年の、初めての連休。夏が来る前に、めいっぱい春の景色や匂いを感じておきたいと思いました。

 僕らの住む神奈川県から、まずはすぐ近くの三島市へ。いちばん印象的だったのは柿田川湧水群。富士山に降った雨が地下水となり、1日に100万トンの水が柿田川そのものになって、流れていきます。もともと湿原や遊水池を歩くのが、僕はとても好きです。思わず黄泉の国を想像してしまうくらい、どこまでも続く静謐で神秘的な景色に思わず言葉を失ってしまいます。天然の湧き水はほんのり青くて丸い砂まじりの円を描き、人工の大きな井戸もつい先日の金環日食のようなリングを描いていました。ここに住む魚になりたいなぁ。

柿田川湧水群

 そこから沼津を経由して浜松へ。7/28「きこえる・シンポジウム 2012 夏」でのトークに参加してくださる、元ランドスケープデザイナーで建築士の村松正規さんが経営する「ひなたカフェ」にて、同じくトークゲストのOMソーラー・村田昌樹さんも交えて打ち合わせ。ここは週に3日、日中だけオープンしている自宅カフェで、村松さんの奥様、陽子さんが料理を作っています。

写真左から、村田さん、HARCO、Quinka、村松さん
写真左から、村田さん、HARCO、Quinka、村松さん

 吹き抜けにもなっているカフェのスペースで太陽の光や熱を最大限利用し、その空気が自宅スペースの方にもきちんと流れるようにデザインされています。このときはすでに夜だったので、今度は営業しているお昼に、ゆっくりお茶しに来たい(そしてこの連載用にあらためて取材したい!)と思いました。

 翌日は掛川市の「ねむの木こども美術館」に行きました。ここは女優の宮城まり子さんが1968年に設立した養護施設「ねむの木学園」がある場所に併設されています。障害のある子供たちの絵がたくさん飾られているのですが、建築家の藤森照信さんによるこの建物も、一度実際に見てみたいと思っていました。

ねむの木こども美術館

 5年ほど前に東京で藤森さんの展覧会に行ったことがあるのですが、その空間で感じた「仕上げ」に関するこだわりが強く印象に残っています。実際にこの美術館で生かされたのは、手もみ銅板をひとつひとつ積み上げた屋根、ざらつきのある漆喰塗りの壁や、建物を貫通する地元の栗の木など。自然との共生、エコロジカルな思想を藤森さんも持っているのですが、多くの建築家がこだわる環境を意識した「構造」以上に、「見た目」にこだわって人を引き付けなければダメだというところに、音楽というアートに携わっている僕も強く共感します。これからますます注目されていくであろう、エコハウスやスマートハウス。量産すればするほど、デザインをないがしろにしてきたこの国の歴史を、繰り返さないでほしいと思うのです。

 最後は静岡市に寄り、明治時代から続く「大やきいも」というお店でおでんや大学いもをいただいたり、やはり建築見学として古くからあるモダンな市役所本館や県庁舎を見に行きました。これで甲斐みのりさんの「静岡百景」に載っているなかの「六景」くらいはまわれたでしょうか。今でも忘れられないのは、茶畑の真ん中で風が吹いたときに鼻先に訪れたお茶の香り。春の最後に素敵な思い出を、静岡にもらいました。

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