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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第28回 容器包装リサイクルの進化へのカギ

  • 2006年5月11日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

京都大学環境保全センター 酒井伸一

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容器包装リサイクルの10年の実績と意義

 廃棄物の減量・リサイクルを処理処分より優先する考え方が日本に登場したのは、1991年の改正廃棄物処理法においてであった。より明確に、法の名称を含めて明示的にこの考え方を示したのは2000年の「循環型社会形成推進基本法」で、同法では循環型社会形成に向けての基本原則を定め、廃棄物の対策優先順位を発生抑制、再使用、再生利用、熱回収、処分とした。このうち、上位三つの対策である発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)を、その頭文字を取って3Rと呼ぶ。2004年の主要国首脳会議で日本が3Rイニシアティブを提唱、より3Rに力を入れる流れとなっている。
 さまざまな種類の廃棄物のなかで容量比で一般廃棄物の約6割を占める容器包装廃棄物に焦点を当ててリサイクル促進を図ったのが、1995年に制定された「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容リ法)」で、97年から施行された。同法では、消費者は使用済み容器包装の分別、地方行政は分別物の収集選別の役割を担い、製造事業者が再商品化の義務を負い、関係者が責任を分担するシステムとなっており、日本の容器包装リサイクル制度の特徴とも言える。ガラスびん、ペットボトル、プラスチック製容器包装、紙製容器包装の4品目について、再商品化が行われている。そして、施行10年後の2006年に必要な改正を行うことが定められており、その検討がヤマ場を迎えている。
 容リ法の実績として、容器包装の回収量は、日本容器包装リサイクル協会によれば2003年度に全品目で91万3,000tであった。このうち、72万8,000tがリサイクル事業者により再商品化された。では、この効果として一般廃棄物の排出量は減ってきているのであろうか? 1997年度の一般廃棄物排出量は5,120万t、99年度で5,145万t、2002年度で5,161万t(いずれも環境省調べ)とほぼ横ばいである。容器包装廃棄物が一般廃棄物全体に占める割合も容量比でほとんど変わっていない。つまり、一定の容器包装類は回収されているもののゴミ減量には効果が表れていないという現状なのである。

発生回避対策としての容器包装

 そもそもゴミを出さない、製品を再使用するという行動が廃棄物対策の基本であることは言うまでもない。発生回避や再使用の便益としては(1)資源保全の可能性(2)省エネルギーの可能性(3)取り扱うべき廃棄物の減量(4)廃棄物処分場の延命化(5)産業効率向上の可能性——などが考えられる。一方、発生回避・再使用の限界としては(1)廃棄物発生回避型設計で完全に発生回避することはできない(2)再使用によっても資源を消費することもある(3)再使用に向けた輸送距離の問題(4)何回も使用を重ねることによる公衆衛生上の問題(5)すべての廃棄物の発生量からみて効果が乏しいことがある——といった点が挙げられる。これらの便益と限界を、まず認識しておく必要がある。
 容器包装をまず発生回避の対象として考えることは、今回の容リ法改正の重要な論点の一つとなっている。発生回避方策として、不要な包装を避けるとか、過剰包装は慎む、といった対応は非常に重要である。包装量を増やさない原則(stand-still principle)に即し、包装材の消費量そのものを回避する目標を策定している国のオランダ、フィンランド、スペインなどでは、基準年次に対する包装量の削減目標を定めている。例えばスペインでは、2001年までに1997年比で10%減量を目標とし、1990年から2002年で14%減を達成したと報告されている。ベルギーのように各企業に包装回避計画を定めるよう要請を出している国もある。こうした取り組みは炭酸ガス削減とも深く関連する。オランダ・ユトレヒト大のHekkertらの研究では、西欧の一次包装に関わる炭酸ガス排出は約3%を占め、1995年のデータに基づいて、包装軽量化、材料変更、リターナブル包装への転換を行えば、2010年には51%の削減が可能であると試算している。そして、これらの対策はライフサイクルを通して費用効果的に実施可能であるとしている。
 しかし、包装をすべて回避できるかというと、そうではないことも自明である。そもそも容器包装には、新鮮さや衛生性を保つこと、輸送過程の保護などの機能に加えて、内容物や賞味方法、賞味期限といった情報伝達媒体としての機能も期待されている。となれば、不要包装を控えるといった対策に加えて、発生回避方策としては、強度や衛生機能を保ちつつ、容器包装の軽量化を図る方策も重要となってくる。容器包装が、より重く、かさ張るものであれば、輸送過程の環境負荷が大きくなることは言うまでもなく、この10年間に軽量化が格段に進展してきたことも事実である。より広範な製品の包装をこうした視点で見直す動きは、ますます重要となろう。

レジ袋有料化やリユース促進システム

 買い物時に無料で配布されることの多いレジ袋自体が、リサイクルや減量の対象として注目を浴びている。年間約300億枚(1人あたり年間約250枚)という量が少なくないこと、プラスチック製容器包装全体に占める割合も大きいこと、買い物袋持参という代替手段があり、その実施は比較的容易であることなどから減量対象と考えるべきであろう。ただし、レジ袋の無料配布禁止を法的に定めるべきとするチェーンストア協会の主張と、そうした措置が営業の自由に抵触する可能性など、具体的対応策を詰めていく必要がある。
 また、リターナブルボトル容器の使用が減っていることの問題点が指摘されることが多い。これまでは、主に酒販店が空になったリターナブルボトルの回収を担ってきたが、量販店との競争で衰退の方向であることから、リターナブル容器の使用を支える物流システムが崩壊しつつあるとみなければならない。その一方、消費者自身がリターナブルボトルを繰り返し使用して飲料を購入し、かつその購入価格が容器込みの価格より安価であるという方式がある。この方式で、宝酒造が焼酎の量り売りを1998年から開始し、2004年度には160万リットルに達したと報告している。食材の宅配事業でもリユース容器の使用は経済合理性をもち、徐々に使用が増えているという。
 容器包装リサイクルの制度上は、独自ルートでの容器回収・再使用を行う場合、費用は事業者負担となるため、自治体の分別収集に委ねるより不利となるシステムとなっていることは否めず、前途は容易ではないが、量り売りや宅配でのリユースボトルの使用は有望なシステムとなっていくことは間違いなかろう。今後、消費者がリデュース・リユースの努力をすることが、経済的便益を生むような制度に発展していくことが望ましく、レジ袋有料化やゴミ処理有料化はその流れの中にあると理解できる。消費者に限らず、製造事業者や流通事業者などにおいても、結果として減量となる方向に努力する人が経済的にも報われる制度への展開が望ましい。

資源・エネルギー・廃棄物の総合管理へ

 この他にも、より素材を重視したリサイクルへの展開、リサイクルコストの安い海外への容器包装類の流れを制御すること、量としては家庭用容器包装より圧倒的に多い、産業を中心とした輸送用包装への取り組みなど、多くの論点がある。容器包装リサイクルは環境政策への国の姿勢が強く表れるシンボルとも言われ、この取り組みは、他の製品群の循環方策の展開、大きな目で見たときの資源・エネルギー・廃棄物の統合管理への展開へのさきがけとなっていこう。

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