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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第141回 NPOの役割と課題~信頼されるNPOになるために必要なこと

  • 2015年10月15日

NPOの役割と課題~信頼されるNPOになるために必要なこと NPO法人日本NPOセンター顧問 山岡 義典さん

広がるNPOの概念

 市民の思いが議員立法という形で特定非営利活動促進法(以下、NPO法)として成立したのは1998年3月、施行は同年12月で、以後17年半が過ぎた。この間、多くの特定非営利活動法人(以下、NPO法人)が誕生し、現在に至っている。この3月31日現在では、50,094のNPO法人が存在する(これまでの認証数から解散数を差し引いた数。内閣府のWebより)。

 現在のNPO法人は20の分野を活動対象としており、この分野の一つに「環境の保全を図る活動」がある。この分野を対象とする法人は、全法人のうち13,866(27.6%)にのぼる。多くのNPO法人は複数分野を対象とするから、これらがすべて環境の保全を専門とする団体とは限らない。しかし何らかの点で環境の保全に関わる団体は、4分の1以上を占めることになる。これはNPO法人という法人格を持った団体についての話だ。

 NPO法施行からちょうど10年後、2008年12月には一般法人法が施行になり、登記のみで(所轄庁の認証という手続きを必要とすることなく)社団法人や財団法人を設立できるようになった。財団法人は300万円の基本財産を必要とするからややハードルが高いが、社団法人なら、極端にいえば2人寄って一晩で作ることもできる。そこで最近では、市民活動を行う団体を一般法人(とくに社団法人)として設立するところも増えている。その動きは統計的に明らかではないが、身近な経験からも、これらの中には環境分野の団体も多数含まれている。また環境活動を行う団体には、法人格を持たない(必要としない)小さな地域に根差した任意団体も多い。数としては、むしろその方がはるかに多いであろう。

 これら、NPO法人に限らず、一般法人も任意団体も含めてNPOと呼ぶことができる。日本社会で「NPOが元気になる」ということは、これらすべてのNPOが元気になるということで、その中でも環境分野のNPO(以下、環境NPO)が元気になることが、日本のNPOが元気になる上でも重要な役割を担っているように私は思う。

NPOの信頼性とは

 日本社会にNPOが普及し、元気に活躍するようになるには、その信頼性を高めることが欠かせない。残念ながら、それはまだ途上にあって、十分な信頼は得られていない。今後のわれわれの努力が必要だ。ではNPOの信頼性とは何か。私はこれを、誰からの信頼かという視点で、三つの信頼性として考えてきた。一つは受益者からの信頼、一つは支援者からの信頼、そして一つは広く市民からの信頼である。これを概念的に示したのが、次の図だ。

NPOの信頼性とは?

(1)受益者からの信頼

 受益者からの信頼は、対人サービスを行う福祉分野や教育分野のNPOにおいてはわかりやすい。福祉や教育のサービスを必要としている人が、適切なサービスを受けることができるかどうかということで決まってくる。

 環境NPOの場合、この受益者がわかりやすいものもあれば、わかりにくいものもある。その環境の中で生活する人にはわかりやすいが、受益するのは未来の子どもたちである場合もあるし、遠く離れた地球の裏側の人であるかもしれない。時には、鳥や魚や動物自身が受益者という発想もある。そのような受益者は、そのサービスを直接的には評価できないから、評価は代弁者がすることになる。代弁者からの信頼ということになり、どうしても間接的で抽象的だ。同じ環境NPOでも、受益者が誰かわかりやすい活動とわかりにくい活動があるということだ。

(2)支援者からの信頼

 支援者からの信頼は、その活動を寄付者やボランティアとして支える人びとからの信頼だが、時に助成財団や企業のような支援組織による信頼もある。政府や地方自治体のような行政組織の信頼もある。その場合、誰でも体験可能な、見たり聞いたり触ったりできる身近な活動は共感を生みやすく信頼性も高くなるが、五感で捉えにくい思想や考え方のようなもの、あるいは計測数値や未来予測に基づく活動は、一筋縄では幅広い信頼は得られない。このように、支援者からの信頼という点でも、環境NPOには二つの種類がある。

 なお環境NPOの場合、受益者やその代弁者がそのまま支援者になることも多い。受益者からの信頼=支援者からの信頼となるわけで緊密な関係は築けるが、緊密になりすぎると閉鎖的な仲間内の会になって社会的な広がりは生まれにくい。すると、次に示す広く市民からの信頼が得にくくなる。

(3)広く市民からの信頼

 広く市民からの信頼というのは、受益者の立場からでもなく、支援者の立場でもないが、間接的な情報によってその活動を知り、何らかの共感をする人たちからの信頼である。さまざまな形の情報発信や広報活動が基礎になる。このような広く関心をもつ人びとは、その関心が強まれば受益者にもなるし支援者にもなる。そのような意味からは、潜在的な受益者や支援者ともいえる。

 この広く市民からの信頼が広がれば広がるほど、個々のNPOへの信頼だけでなく、NPOセクター全体への信頼につながってくる。私たちの目標は、そこにあるともいえる。時にこの市民の信頼を裏切るようなNPOが出現すると、NPOセクター全体が信頼を損なうことになる。注意が必要だ。

信頼されるNPOの七つの条件

 では、どのようなNPOなら信頼されるのか。もう12年も前のことになるが、各地のNPO支援センターの現場の責任者が30人ほど札幌市内に集まり、信頼されるNPOには何が必要かを2日にわたって議論した。その議論を再整理したのが「信頼されるNPOの条件」で、これは今でも基本的な条件として色あせないと私は思っている。その七つの条件とは下記の通りだ。(『知っておきたいNPOのこと』日本NPOセンター編集・発行2004.8に所収)

  1. 明確なミッションを持って、継続的な事業展開をしていること
  2. 特定の経営資源のみに依存せず、財政面で自立していること
  3. 事業計画・予算の意思決定において、自律性を堅持していること
  4. 事業報告・会計報告などの情報を積極的に公開していること
  5. 組織が市民に開かれており、その支持と参加を集めていること
  6. 最低限の事務局体制が整備されていること
  7. 新しい仕組みや社会的な価値を生み出すメッセージを発信していること

 言ってみればどれも当たり前のことばかりだが、実際にNPOの運営に関わると結構難しいことも多い。小規模な組織であるが故に難しい条件もあれば、大きくなり過ぎて一定の規模になったが故に難しい条件もあろう。どの活動分野においても、このすべてで満点のNPOは、そうあるわけではない。環境NPOにおいても然りだ。しかしこの条件を目指して何とか7割程度を実現していれば、それは信頼されるNPOに十分値すると私は考えている。

グローバルネット:2015年6月号より


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