「マシュマロ・テスト(Marshmallow Test)」をご存知ですか。子どもの自制心(セルフコントロール)や我慢する力を測る心理実験として有名なものです。
1970年代にスタンフォード大学の心理学者・Walter Mischel氏によって行われた「マシュマロ・テスト」は、実験者が子どもの目の前にマシュマロを1つ置き、「これを食べずに待てたら、あとでもう1つあげる」と伝えて退室するというシンプルな実験です。後の追跡調査では、待てた子どもは将来より成功する傾向があるとされました。
しかしその後の研究では、早く食べてしまう子どもたちは、しばしば困難な家庭環境に置かれており、大人や社会に対しての信頼感がそもそも低い傾向があることが指摘されました。つまり、将来の成功は「我慢できたか」ではなく、「どんな環境で育ったか」に強く関係している可能性があるというわけです。
この有名なマシュマロテストが新しい形で再注目されています。最新の研究によると、仲間のサポートがあることで、子どもたちは誘惑に打ち勝ち、大きなご褒美を得るために待つ可能性が高くなることがわかりました。
人との関係や約束は、私たちの行動に大きな影響を与えます。それは子どもたちにとっても例外ではなく、今回の研究では、仲間の存在が子どもの自制心を支える助けになることが示されました。
2024年5月7日、Royal Society Open Scienceに掲載されたこの研究では、一緒に頑張る「バディ(相棒)」がいる子どもは、1人でいるときよりも我慢強くなることが明らかになりました。これは、「バディ制度」が依存症のリハビリに有効であるという他分野の研究とも一致しており、約束や協力関係が人の行動に与える強力な影響力を改めて示したものです。
ただし、今回の実験の参加者は主にイングランド北部の健康な子どもに限られていたため、文化や環境によって結果が異なる可能性がある点には注意が必要です。
今回の新しい研究では、マンチェスター大学の心理学者Owen Waddington氏らが、他者との関わりが子どもの行動にどう影響するかを調べました。研究チームは、5〜6歳の子どもとその親を対象に、オンラインで実験を行いました。
親が子どもに「もう1人の子も我慢できたら、ごほうびがもっと良くなるよ」と伝え、2人の子どもがお互いをZoom越しに映像で見る仕組みを用意しました(ただし会話は不可)。相手の子が「我慢する」と約束する映像を見た場合、子どもはより長く待つ傾向がありました。逆に、相手が「我慢できるかわからない」と言った場合は、待つ時間が短くなったそうです。
また、年少の子どもほど待ち続ける傾向がありましたが、統計的にそれほど差はありませんでした。研究者たちは、年齢が上がるにつれて「約束が守られないこともある」と学び、信頼しづらくなる可能性を指摘しています。うーむ、世知辛い…。
相手が大人でも自分自身であっても約束は守るべきですが、小さな子どもとの約束は絶対に破っちゃいけないと痛感します。