サイト内
ウェブ

Netflix映画『シティーハンター』ってなんでこんなにヒットしているの?

  • 2024年5月19日
  • Gizmodo Japan

Netflix映画『シティーハンター』ってなんでこんなにヒットしているの?
Image: Netflix Japan

Netflix映画『シティーハンター』、みなさんはもう視聴しましたか。

私は原作とアニメをこよなく愛し、是非とも自分でも『シティーハンター』を作ってみたいとアニメ業界の門戸を叩き、業界の端っこからレジェンドたち(『シティーハンター』のクリエイターたちのこと)に熱い眼差しを送っていたタイプのファンで、今回の日本初実写ドラマ化を期待半分不安半分で視聴しました。

で、感動しましたね。よくやってくれた、とも思いました。原作に敬意が払われていたし、何より主演の鈴木亮平さんが作品をとても愛しているのが伝わってきました。80年代の作品を蘇らせる上での工夫も十分に施されていたと思います。

でも、この記事で語りたいのは作品の良さや鈴木亮平さんの作り込みではなく(他で語り尽くされていますし)、ヒットの理由です。これが配信作品のスタンダードになったら、日本発の世界に通じるコンテンツをたくさん作っていけると思うんですよね。

「原作が愛されている理由」を熟知した作品

Image: Netflix Japan

『シティーハンター』とは、北条司先生が1985年から1991年まで週刊少年ジャンプ(集英社)で連載していた漫画です。

連載開始当初は、都会に巣食う悪い奴らを人知れず始末するスイーパー(始末屋)の活躍を描いたハードボイルド作品でしたが、途中からギャグ要素が増え、明るく楽しい殺し屋漫画へと方向転換した経緯があります。このため、主役の冴羽獠は、普段はおちゃらけているけれど実は影があって複雑な過去を引きずるヒーローという設定となっています。

作品の魅力は、冴羽獠とパートナーである槇村香のテンポいい掛け合いや、魅力的な脇役キャラ、個性豊かで美しいゲストたちなどなど。それ以外にも、ゲストが引き出す冴羽獠の隠れた才能や博識っぷりもファンを沼らせました。

Image: Netflix Japan

でも、ファンを何十年も熱狂させた最大の理由は、半リアルな世界観にあると思います。冴羽獠は新宿に住んでいて、西新宿や歌舞伎町、ゴールデン街で遊んでいる様子が描かれています。あまりにも新宿の街に溶け込んでいるので「もしかするとシティーハンターのキャラクターたちは新宿のどこかで元気に生きているのかも」と錯覚させたほど。アニメではそれを狙った実写背景合成映像なんかも作られていましたしね。

そして、Netflix映画『シティーハンター』は、元祖2.5次元とも言える設定こそが長期的に愛されてきた秘訣だと理解しているから時代設定を令和にしているのです。

Image: Netflix Japan

オリジナルの漫画には、今の時代にはそぐわないとされる話題や描写も登場します。そういった原作らしさを削ることなく実写化するためにも、Netflix映画『シティーハンター』は時代を連載当時の80年代にするべきでは、といった意見も見られます。

しかし、新たなファンを獲得したり、グローバルに受け入れられたりするためには、現代に甦らせる方がベター。今なお冴羽獠を愛してやまないファンが同じ時代を生きていると感じさせるためにも、令和を時代設定にするのはベストだったと言えるでしょう。

海外ファンにとっても原作リスペクトは重要

Image: Netflix Japan

そんなNetflix映画『シティーハンター』は、日本のみならず、週間グローバルTOP10(非英語映画)」でも初登場1位を獲得しています。

実は『シティーハンター』は海外でも人気で、1993年には香港でジャッキー・チェン主演で実写映画化、2019年にはフランスで『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』が作られています。

このフランス版のフィリップ・ラショー監督は、自らが冴羽獠役を演じるほど『シティーハンター』ファン。フランスが舞台でありながらも、原作やアニメの要素を随所に取り込んだ愛溢れる作品として日本のファンからも支持されているんです。

そして、Netflix映画『シティーハンター』が海外のファンから高く評価されているのは、原作に対するリスペクトが見られることと、現代にキャッチアップさせている一方で、昨今のハリウッド作品に多く見られる政治的思想を盛り込みすぎていない、純粋な娯楽作品に仕上がっていることも理由のようです。

率先して話題を作る宣伝スタイルが大成功

Image: Netflix Japan

ただ、原作リスペクトだけではここまで話題にならないだろうし、配信開始から1カ月が経過しようとしているのに国内視聴1位を取り続けられないと思うのです。やっぱり、宣伝が効いているのでしょう。

中でも、冴羽獠を演じた鈴木亮平さんの宣伝効果は抜群でした。かなり前から『シティーハンター』の大ファンだと公言している鈴木さんは、取材やインタビューを精力的にこなすだけでなく、さりげなく期待度を上げる作り込んだ仕草を披露するショート動画をSNS上にアップしました。

さらに、2回にわたってSNSで同時視聴イベントを開催。演者ではなくファン目線でコメントし、コミュニティを盛り上げました。

https://t.co/Bgvdy8Oi1o

— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) May 4, 2024

Netflixもブルーカーペットイベントを開いたり、期間限定オブジェを置いたり、Xで関連ワードをハッシュタグすると「もっこり」絵文字が現れたりする仕様を展開。イベント当日からSNSの投稿を解禁し、積極的なポストを促すなど、SNSの活用が目立ちました。

海坊主役のマフィア梶田さんをこっそり出演させたり、アニメ『シティーハンター』で冴羽獠の声を担当している神谷明さんのアナウンスを紛れ込ませるなど、ついついSNSに書き込みたくなる小ネタを散らしていたのもうまい。

Photo: 中川真知子

ハリウッド映画は高額な宣伝費で知られています。2023年に大ヒットした『バービー』なんて、1億4500万ドルの製作費に対して、1億5000万ドルのマーケティング予算が投じられました。SNSを重要視していて、バズらせることを見越した仕掛けがたくさんありましたよね。

今回のNetflix映画『シティーハンター』は、主配信だからこそのマーケティング手法が素晴らしかったです。そりゃ、話題にもなるし、今まで『シティーハンター』を知らなかった層も興味を持つでしょう。話題にしてもらうのを待つのではなく、積極的に話題を作っていくスタンスなのが十分に伝わったし、うまく機能していると感じました。ヒットした、というよりちゃんと計算してヒットさせたってことだと思います。

こんなに結果を出したのだから、続編も期待できるかもしれませんね。

Netflix映画「シティハンター」独占配信中

視聴はこちら

©北条司/コアミックス 1985

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
copyright 2024 (C) mediagene, Inc. All Rights Reserved.