結婚21年。妻には殴られ罵られ、2人の子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々──それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!
『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本も担当。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。
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文化放送で『村上信五くんと経済クン』に出させていただく。ほとんど打合せはなかったが、村上さんの突っ込み上手さと聞き上手さで緊張せずに話せて良かった。そのまま虎ノ門に向かい、ネット媒体に取材していただく。
夜、日本シナリオ作家協会のお仲間に誘っていただき、協会近くの『川治』という魚のお店に行く。2年越しの予約の順番が来たとのことで、2年前のメンバーの誰かが来れずに私にお鉢が回ってきたのだ。
いや、すごいお店だった。出てくるものはなんでも美味しいのだが、その量もハンパではない。私はいまだに若いころの食欲が衰えないのだが、それでも途中でギブアップしてしまった。美味しいのにお腹がはち切れそうでもう食べられないという状況を久しぶりに味わった。2年後の予約をしてお店をあとにした。
朝イチで息子の学校のスクールカウンセリング。息子の家の様子、学校の困りごとなどを共有して、息子を上手くサポートする体勢を整える。カウンセラーの先生が、気さくなお兄ちゃんでとても話しやすい。気さく過ぎて、「おいおい!」と突っ込みたくなる瞬間もあるのだが、いつも笑いの絶えない時間となるから、こちらのメンタルもちょっと救われる。
息子は人懐っこく、知らない人間に対してのコミュ力は私から見ていても羨ましい限りなのだが、学校のような場では浮いてしまう。もちろん浮いてしまう要因はある。その要因となるものを、今はなんとなくではあるが、「直す」という方向で私も妻も学校の先生たちも接しているのだが、直すというよりは、やはり良い出会いに期待するしかないだろうと思う。その「要因」が息子の良いところでもあるからだ。
※妻より
最近授業で「自由に班を作ってグループ発表してみよう」と先生に指示を出された時、息子は「めんどくせ、つまらね」みたいな態度を取って教室から出てしまい、その後もその授業の時は何コマも孤立してしまったことがありました。
息子の態度は同級生には「なんだこいつ」と不快な気持ちを与えてしまったことでしょうし、先生も真意は分からずいつものように息子を放置してくれたのかもしれません。でも……多分……息子は死ぬほど誰かのグループに入りたかったのに入り方が分からず、僕が入ってもどうせ断られる……という不安からそういう尊大な態度をとってしまったのだと思うのです。
そういう時は最初のグループ分けの時点でどうか大人の先生に中に入って欲しいとお願いしました。これからは自主性を重んじて児童に行動を委ねる場面が多くあると思います。そのたびに息子は居場所をどう見つけてよいか分からず、孤立してしまいそうで、胸が苦しくなります。ただの心配性なだけなのですが……。
映画学校時代の同級生のMの家に行く。同じく同級生のFと彼の配偶者さん(他人の配偶者のしっくりくる言い方がいまだに分からない。『配偶者』でないことだけは確かなのだが、無難という意味では私の中で、今一番無難な言い方だ)もいらして、数年ぶりに会う気の置けない仲間との他愛のない話がとても楽しかった。みんな子どもの年齢も近くて、そういった悩み事も笑いながら話せる。
※妻より
10年振りくらいに会いましたが皆さんがあまりに変わってないのに、子どもがみんなもういっちょまえの高校生になってて、なんだかおかしかったです。
NHKのスタジオにて『あの日 あのとき あの番組』という番組の収録。テレビに「出てください」とお願いされて出るのは初めてだから(偶然『チコちゃんに叱られる!』に出たことはある)とても緊張した。気の利いたことは話せなかったが、一緒に出演した作曲家・服部隆之さんが終始ニコニコされていて私もその空気になじむことができた。
それにしても今日、いちばん驚いたのは番組のアシスタントディレクターなのかどうなのかは分からないが、私をスタジオまで案内してくださった方が、私の学生時代の大先輩で、面識はないのだが、その方が撮った映画に私はいたく感動したことがある。
しばらくお名前を耳にしないと思っていたが、食いぶちとしてこういう仕事もされているのだろう。素晴らしい作品を残されているだけに、そのアシスタント業務はきっと本意でないと思うのだが、この業界には自作を撮るために食いぶちとして別のことをされている方は多い。私だって42歳までアルバイトをしていた。
周囲からはとっくに映像の世界で食っていくことを諦めていると思われていただろうし、実際諦めていた。今はたまたま食えているがいつまたアルバイトをしながらの状況に戻るかは分からない。バイトは嫌だから専業主夫がいいが、それは妻が許してくれないだろう。バイトやアシスタント業務をこなしながら自作を撮るのは大変なことなのだが、その先輩はご自身の人生を切り取った映画も作られているので、また是非映画を撮ってほしいとなんだか上から目線で誤解を与えそうな物言いになってしまうが、その先輩の作られる映画を私は観たい。
朝から仕事。午後、渋谷のシアター・イメージフォーラムでリム・カーワイ監督の新作『すべて、至るところにある』を鑑賞後、トークイベント。リム監督とは北九州国際映画祭で出会って今回声をかけていただいたのだが、大変楽しい方で、映画祭のときはいつも愉快なお話をされていた。映画のあとのトークショーもそんな雰囲気になったような気がする。主演のアデラさんや、別府ブルーバード劇場の森田さん、田尻さん、それに三坂千絵子さんもいらしていて、近くの喫茶店でお茶をして楽しかった。
朝、10時から打合せ。今年撮影することになっているテレビドラマについて。テレビドラマを初めて演出することになる。企画はずっとやりたかったものだから楽しみでならない。その後、『コット、はじまりの夏』(監督:コルム・バイレッド)を観に行く。
夜、東かがわ市教育委員会のI先生が亀を届けに来てくれた。『ブギウギ』の中で六郎が飼っていたカメだ。劇用に4匹いたのだが、うち2匹が我が家に、もう2匹は東かがわ市に引き取られた。ずっと亀を飼いたいと言っていたウチのリアル六郎(息子のこと)が、六郎1号、2号と名付けた。
劇中で使った生き物を引き取ると、不思議とその作品に幸運をもたらす傾向があるから、私はひそかに『ブギウギ』の亀を狙っていたのだ。などと書くとこのご時世、本気でお怒りになる方もいるのだが、私のような邪な人間に引き取られるのも行き場がないよりはよっぽどましだろうし。我が家の六郎がきっとドラマの六郎のようにかわいがってくれるはずだ。
朝から学校で息子の通級の面談。ようやく実現する。長かった……。何度も何度も申請を出していたのだがなかなか通らなかったのだ。支援クラスの先生方も息子の傾向に理解が有りそうだし、なにより息子が自ら行きたいと言い出したことなので実現してうれしい。学校での居場所が少しでも増えてくれたらと願う。
その後、都道府県会館で鳥取県の平井知事とお会いして、鳥取県フィルムコミッショナーという役割に任命していただいたが、鳥取県のフィルムコミッションの方々とはまだお会いしたことがない。にしても私はいつか故郷鳥取県で映画を撮りたい。鳥取を舞台にしたオリジナル企画もあるのだが、それはホラーなのでなかなか提案しづらいんだよなあ。私の故郷倉吉は偉大な漫画家・谷口ジローさんを輩出しているし、谷口ジローさんが倉吉を舞台に描かれたマンガ『遥かな町へ』をいつか映像化したい。
その後、大阪に移動して高校時代の同級生たちと飲んだ。浅野温子に激似の同級生の綱渡りな人生話がなかなかに楽しく、少し羨ましくもあった。それにしても敷かれたレールを最後まで歩ききれる人生を送れる人はどのくらいいるのだろうか。私なんか、レールを踏み外さないことばかり考えている。
朝から『ブギウギ』の撮影を見学に行く。今日がクランクアップなのだ。去年の3月24日にクランクインしたからかれこれ11か月撮影していたことになる。クランクインのときはまだ6週くらまでしか台本を書いていなかったような記憶がある。
いろいろと長丁場ではあったが、とにかく趣里さんは凄いという感想しかない。普段の朝ドラならばお芝居に集中していればいいのだろうが、今回はそれに加えて歌と踊りがある。その大変さは想像を絶するのだが、まさに全身エネルギーのかたまりのような方だ。
私はテリー・ガーというアメリカの女優さんの大ファンなのだが、趣里さんはそのテリー・ガーのような雰囲気もお持ちだと感じた。演技が素晴らしいのは言うまでもなく、コメディエンヌとしても最高だと思う。私は趣里さんとお仕事ができただけでも、この仕事に携われて良かったと思う。この日は久しぶりに朝まで飲んだ。
朝、大阪からそのまま鳥取まで移動。鳥取駅で打合せがあるため、妻と待ち合わせていたのだが、駅の壁によりかかって突っ立っていたら、黒ずくめの服装に黒マスクの若いおねえちゃんふたりが「あの、ちょっといいすか」と突然話しかけてきた。一瞬カツアゲされるのかとビビってしまい「はい!」とほとんど直立不動で返事をしてしまうと、「自分らが銭払いますんで、そこのコンビニで煙草買ってきてもらえんですか」とのこと。
「え……」
「タバコ」
「あ……や、やめて……」
と震えながら言うと、彼女たちは舌打ちして次の人を探しに行ってしまった。ホッと胸をなでおろしつつ、そうか、今どきの未成年はタバコを買うのも大変なんだなと思った。我々のころは下手したら制服姿でも煙草屋で買えていたからなあ。のどかだった…と思わず口から出てきそうになるが、それをのどかだったと思うのは良くないことなんですよね? 酷い時代だったと思わなければならない。
地元の方と打ち合わせ後、夜は両親と妻と4人で飯を食いに行った。倉吉にこんなお店があったのかと驚くほど美味しいお店だった。妻と母親が互いにジャブを繰り出しながらも、アハハオホホとどう解釈していいのか分からない笑い声の絶えぬ食事だった。
父親の運転する車で鳥取市まで送ってもらう。私の実家のある倉吉から鳥取までは車で一時間弱だ。
そば屋で両親と妻と飯を食っていると「紳さん!」と声。聞き覚えのあるその低い声に振り返ると、『ブギウギ』に出演中の黒田有さんご夫妻が入ってこられてチョー驚いた。
実はこの夜、黒田さん夫妻ともう一組、共通の知り合いのご夫妻と鳥取で合流してカニを食いに行く約束をしていたのだ。
私の母親が「あら、目の前で見るととっても良い男なのね」と今のご時世ではアウトな挨拶をするので焦った。アウトだから焦ったというより、すぐそんなふうに話しかけるので私は母親といると冷や冷やしっぱなしなのだ。(同じような傾向が妻にもある)。それにしてもなんという偶然なのだろうか。
そして夜、黒田さんのお知り合いの方が営んでおられるカニ屋で、向こう3年はカニを食わなくてもいいというくらいたらふくいただいた。めちゃくちゃ美味かった。それ以上の言葉は出てこない。
2軒目に行こうと真っ暗な鳥取の街をフラフラ。一軒だけ空いていてお店に飛び込んで、閉店時間を大幅に過ぎても飲ませていただいた。
東京に戻る。戻った途端、息子のクラスが明日から2月16日まで学級閉鎖の連絡。ああ、仕事が捗らない3日間になることが決定……。
「俺、うれしいよ! だってバレンタインの日に学校行かなくていいんだぜ! 俺、ゼッテーもらえないからさ! 地獄なんだよ!」と息子は言っていた。チョコレートがもらえないことがそんなにショックなのだろうか? これも何か息子の特性が発揮されているのかもしれない。運動会や音楽会と同じくらいこの日を嫌がっている。
夜、麻布台のラジオ日本へ。『真夜中のハーリー&レイス』という番組に呼んでいただいたのだ。早めに着いてしまったので、麻布台ヒルズのソファに座り、読まねばいけない資料を読みながら、妻とともに完全に爆睡していたら「紳さん!?」と声を掛けられて目覚める。ヨダレを拭って起きると15年以上も会っていなかったS君とCちゃんだった。
妻ともども完全に油断、弛緩しきった姿を見られてしまった。S君は私の妹と同じ格闘技雑誌で働いていて、いっとき妹の家でよく一緒に飲んでいたのだ。Cちゃんは当時S君の恋人で東京藝大の大学院で油絵だか日本画だかを学んでいる175センチ超えのモデルのような女性だった。「えー!?」と驚いてしまいその場で30分ほど立ち話をして再会の約束をした。それにしても私はだいぶ禿げて太ったが、ふたりはほとんど変わっていなかった。
その後、ラジオの収録。久しぶりにプロレスの話をたくさんしてとても楽しかった。
ロケーションジャパンの授賞式。『VIVANT』や『どうする家康』、『春が散る』など大型テレビドラマや映画の大作が受賞する中で、とても小さな『雑魚どもよ、大志を抱け!』がベストサポート賞を受賞したのだ。岐阜県飛騨市の皆さまのサポートを超えた並々ならぬ作品への愛情が受賞につながったのではないかと思った。ほんとにもうスタッフの一員というのか、一緒に映画を作った感覚だからだ。久しぶりに飛騨市の都竹市長、観光課の横山さんと再会し喜びを分かち合えてうれしかった。
授賞式には全国各地のフィルムコミッションの方々が美味しい物を持ち込んでくださっていて、私はひたすらに食べていた。
学級閉鎖のため家でずーーーーーっとYouTubeを見ているすこぶる元気なのに何もできない息子を見てられなくて、ホントは外出禁止なのだがズルして銀座へ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(監督:古賀豪)を息子と妻と観に行く。その後、仕事に行く妻と別れ、私と息子は寿司の食べ放題へ。映画を観る前から寿司が食いたい寿司が食いたいとのたまっていたから行ったのだが全然美味しくなかった。けっこういい値段してしまったのだが地元の練馬でよく行く安い寿司屋さんのほうが美味しい……。息子は大喜びで食べていたが。
夕方、娘のこども映画教室の発表会。この2か月、娘は土日に朝から夕方までこども映画教室というところに通っており、平日も学校を休まず、部活も行っていたから実質2か月間休みはなかった。よく頑張っていたなあと思う。
最近は編集がうまくいかないということを言っていたが、なんとか作品が出来上がり、その作品を観に渋谷まで行った。
子どもたちは全員が映画を作ってどうだったかなどをしゃべるのだが、中高生たちがあまりにしっかりしたことを言うのでかなりビビった。娘もしっかりと話していたので大変驚いた。こんなまともな事が言えるのか……。
最後に親からの感想を求められ、親たちは皆さんたじたじなのか誰も何も言わず。すると係の方が「じゃあ、指名します」とのことで何人かの親に無理矢理指名が。こういうときは昔から当てられる率が高いのだが案の定今回も。しどろもどろに小声で何か言った。
帰宅後、娘から「なに、あの小さな声。『えーと……』ばっか言っているし、内容めっちゃ浅いし」とダメだし連発。そうなのだ。私は浅くしか映画を観ることができないからトークイベントなどもとても苦手なのだ。娘はまだ高校生だし私が親だから「浅い」と本当のことを言う。でも、他の人だと「浅い」と思っても「こいつ、浅せぇな」と心の中で思うだけで言ってくれないし、言われても困るが怖くてしょうがないのだ。まあ、私のことはどうでもいい。
娘はこの13日間、これでもか、っていうくらい意見交換、対話を重ねて、作品を作り上げた。途中、険悪になることも何度もあったという。同調圧力、空気を読むことに重きを置いている今の若い子は学校などで自分の意見をとことん言うことも余りないと思う。とても良い経験ができただろうなと思う。
※妻より
上映会後、娘を待って、一緒にご飯を食べてから帰りましたが(夫は息子がお留守番しているのですぐ帰りました)、食事中も帰り道もずーーーっと映画の感想を聞かれました。15分位の作品にこれ以上感想は出ない、と言っても「ほかは? あれは?」などと感想くれくれ攻撃。これ、誰かに似てるなと思ったら、書きたてのシナリオを私に読ませたあとの足立でした。足立の場合は感想言え言えハラスメントですがね。にしても娘の感想くれくれ攻撃もなかなかに激しく、ネタが尽きました。でもこれだけ何かに一生懸命な娘を見たのは久しぶりだったので、うれしかったです。
下北沢で若い監督さんと飲む。一緒に映画を作りませんかと言われてうれしかったが、今の私には彼の作品の脚本を書く余裕がない。だが、若い人から声をかけてもらえたのは、少なくとも彼の視界に私は入ってるということでもあるのでそれがとてもうれしかった。
娘の高校が入学試験のため登校禁止なので、昼に近所の回転寿司に一緒に行く。途中、新しく始めようとしているバイト(まだ面接も受けていないのだが)のことで何やら言い争いになってしまった。バイトに対する姿勢が良くない的な説教を軽くかますと見る見る不機嫌に。言いがかりはやめろと。もう言うことなど聞きゃしない。
険悪な雰囲気で寿司を食い始めるも娘は相変わらず凄まじい食欲。ふたりで行ってこの値段は、娘がほとんど食ったと言っても妻は怒り狂うものになってしまった。その後、『夜明けのすべて』(監督:三宅 唱)を一緒に観に行く。
※妻より
回転寿司で、お酒も飲まないのに何であんな金額になるのか、本当に分かりません……。私が不機嫌になる色の皿を大量に食べたとしか考えられない。
朝6時出発で大分県の豊後大野市にロケハンに行く。豊後大野市は温泉県の大分には珍しく温泉のない街なのだが、そのかわりサウナに力を入れているとのこと。テントサウナから目の前の澄んだ川に直接飛び込める水風呂や鍾乳洞の水風呂など、ロケハンをほったらかして入りたくなる。
そうしたサウナや水風呂も最高なのだが、私が驚いたのは「原尻の滝」だ。滝と言えば何となく山奥とか自然の中にありそうなものだが、この滝は普通の車で道を走っていると突如として現れる感じなのだ。しかも、かなりでかい滝なのだが、滝の水が落下する間際まで行っても構わない。悲しい事故も起きているようだが、この状態にしておくというのが私はなんだかとても良いように感じた。
印象としてとても大きくてきれいな川とその川にかかる石でできた古い眼鏡橋の多い街で、川のほとんどの場所に自由に出入りできる。滝もそうだが、このレベルの川だと立ち入り禁止にして風景だけ見てねとしている場所も多いと思うが、自由度の高い街だなあと個人的にはとてもテンションがあがった。
地方で映画を撮るときは、「観光映画」にならないようにしようなんて思うことがしばしばだが、今回は思い切り楽しい「観光映画」にしたいと思っている。
この日は小学校を改築したという山奥の宿に泊まる。夕飯にジビエの火鍋をいただいたのだがひっくり返るくらい美味しかった。
その後にスタッフの太田さん(映画学校の同級生で『春よ来い、マジで来い』の中で私と同居している多田のモデルとなった人。とサラリと小説の宣伝をするのが私らしい)とサウナに入った。屋外にある大きな水風呂にも入りたかったが、さすがにこの時期で山奥にあるサウナなだけにサウナから出た瞬間の外気浴だけで一瞬にして凍った。
今日も引き続き豊後大野市をロケハン。美しい川を眺めながらの石焼きカレーは絶品だった。ちなみにこの石焼きカレーをいただいたカフェのベランダにもテントサウナがあり、目の前の川にそのまま飛び込むことができる。5月の撮影時には撮影をほったらかしてでもサウナと川の水風呂を慣行したい。
本日は別府をロケハン。撮影で使わせていただく予定のブルーバード劇場にもお邪魔して館主の照さん、娘さんの実紀さんとも久しぶりの再会。相変わらずおふたりともとてもお元気だ。「晃子さんがいないと伸び伸びして見える」と言われた。そのとおりだ。
夕方の特急で別府から小倉に出て新幹線に乗って東京に戻った。小倉駅のホームで食べた立ち食いうどんがとても美味しかった。トッピングの嵐。
夜、駒込で高校時代の同級生と飲む。高校時代に一度も話したことがなく、でも存在は知っていた方も来た。彼は水球でインターハイに出場しており、大学でも水球を続けていたとのこと。一度も話したことのない同級生と年月を経て話をするのはいろんな発見があって楽しい。
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【プロフィール】
1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作『百円の恋』が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品『佐知とマユ』(第4回「市川森一脚本賞」受賞)『嘘八百』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『こどもしょくどう』など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が東京国際映画祭最優秀脚本賞。現在、最新作『雑魚どもよ、大志を抱け!』は2023年3月24日に公開。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『春よ来い、マジで来い』(双葉社・刊)。