警視庁は2月9日、令和5年度の犯罪統計を発表(参照:警察庁)。重要犯罪の6種のひとつである「不同意性交等」は前年度より63.8%、「不同意わいせつ」は29.5%と大幅な増加となりました。2023年に施行された刑法の一部改正により、性犯罪に関する処罰対象がより具体的に例示されたことで成立要件が広くなったことが、犯罪認知件数の増加につながったと考えられています。
今回テーマにしたいのは「不同意わいせつ」。2024年2月に警視庁が公開した資料(参照:警視庁)によると、強制わいせつ(現・不同意わいせつ)の発生場所で一番多かったのは「道路上」で28%。また、事件の発生時間を見てみると、0時や18時以降が多いことから、女性の夜の一人歩きは危険だということが言えます。なお、強制性行等(現・不同意性交等)では4階建て以上の建物内で発生することが多く、全体の27%を占めています。
しかしながら、女性の防犯グッズや護身アイテムの使用率は6.8%に留まっているとのデータもあります。また同調査によると、犯罪被害を経験した女性の約6割は「何もできなかった」と回答。このことからも、実際に被害に直面した場合は簡単に・かつ効果的な防犯グッズを携帯することが重要です。では、どのような防犯・護衛グッズを選べば良いのでしょうか? 警察官として18年の勤務経験を持ち、現在は販売業を営む佐藤卓也氏に聞いてみました。
「防犯グッズ選びで重要なのは、“自分で扱えるか”と“常に持ち歩けるか”の2点です。せっかく優れた防犯グッズであっても、購入した本人が扱えなかったり、大きすぎて持ち歩けなかったりしたら意味がありません。そのため比較的コンパクトで扱いやすく、しかも効果的なグッズに人気が集まっています」(佐藤氏:以下敬称略)
なかでも催涙スプレーは扱いやすくコンパクトで、警察官も常備しているほど効果的とのこと。実際に佐藤氏も、現職時代に自身よりも体格が大きい人間を逮捕する際に催涙スプレーを活用したと事例を示してくれました。
「トウガラシ成分などが含まれた液体を噴出でき、浴びせられた人は目の痛みや涙が止まらなくなる催涙スプレーですが、扱う上での注意点が2点あります。ひとつは危険が迫ったタイミングで簡単に取り出せるように準備が必要だということ。もうひとつは、実際に使用するときに慌てすぎて自分にもかかってしまう恐れがあることです。そのため、日頃からバッグの中でもすぐ取り出せる定位置を決めて入れておくことが重要でしょう」(佐藤)
また、外見もスプレー缶のように無骨なものだけではなく、ピンクやライトグリーンなどのカラーバリエーションが豊富になり、中にはリップスティックのような型のものも販売されています。サイズは縦10cm、横3cmほどのコンパクトなものが多く、価格も2000円〜4000円ほどで購入できることも魅力です。
「簡単に扱えて持ち運びしやすい防犯グッズといえば、子どもの通学グッズとしても使われている防犯ブザーです。実際に怪しい人から声をかけられたり、突然襲われたりしたタイミングでは、大きな声で助けを呼びたくても、驚きすぎて声が出なくなることが多いです。そんな時に防犯ブザーを身につけていれば、簡単に大きな音が出せるので、目立つことを嫌がる犯人は音が鳴った時点で逃げてくれる可能性があります」(佐藤)
SNS上でも「襲われて危なかった時に声は絶対出ない。娘には絶対に防犯ブザーを持たせている」「知らない人に手首掴まれて怖い思いをしたけど、防犯ブザー鳴らしたら友達が助けてくれた」など、実際に防犯ブザーに助けられた経験が語られています。
子どもから大人まで幅広く使われている防犯ブザー。最近はドーナツ型や羽の型をした可愛らしいものから、パスケースにブザーが仕込まれている実用的なものまで、さまざまなデザインのものが販売されています。大きなブザー音が鳴るものもあれば、なかには「キャー!たすけてー!」と大音量で声がでるブザーも販売されているのも魅力です。価格は1000円から4000円ほどで購入することができます。
「その他、護身用フラッシュライトもかなり有効です。護身用フラッシュライトは懐中電灯とは比べものにならないほどの明るい光が出るため、ライトで顔を照らされた相手は眩しさのあまり、しばらく目が見えなくなります。その光量は夜だけでなく日中に使用しても目眩しになるほどです。かつてバスジャック犯を捕まえるために閃光弾を使った事例もあり、強い光は相手を怯ませるのに有効です。また強い光で怯ませながら防犯ブザーを鳴らすなど、他の防犯グッズと併用するのも効果的です」(佐藤)
護身用フラッシュライトの形状は、懐中電灯をスリムにしたようなものから、縦6cm横3cmほどのコンパクトなものまであり、バッグに入れても邪魔にならず携帯しやすいものが増えてきています。価格は5000円から1万5000円と、他の防犯グッズに比べると高額ではあるものの、地震などの自然災害時には懐中電灯代わりに使えるため、防犯以外の用途としても便利なグッズといえます。
「このような防犯グッズを備えておけば、もしもの時でも被害を最小限に抑えることができます。また被害に遭った際は防犯グッズで難を逃れる以外にも、最寄りの警察署や交番への相談や110番通報などで被害を報告することも大切です」(佐藤)
警察に被害を伝えることで同じような被害を減らす効果や、犯人逮捕につながる可能性もあります。防犯グッズを活用した防犯に加え、帰宅ルートを時々変えるなどの工夫をし、被害に遭わないように対策しましょう。