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セーヌ河の上に住むペニッシュ族たち

  • 2002年8月25日
  • 緑のgoo編集部

セーヌ河の上に住むペニッシュ族たち

エコ・マインドな水上生活
“ペニッシュ”とは、フランスで運搬用に使われている平底船のこと。廃船になったペニッシュを改造して住居にするのが、ここ数年、ヨーロッパで大人気だ。
水に囲まれ、都会にいながらにして自然と密接できるボートハウス暮らしは、古くて新しいライフスタイル。エコ・マインドなヨーロピアンたちを魅了している。悠々自適なセーヌ河の住民──ペニッシュ族──の暮らしを覗いてみよう。




放浪画家、エティエンヌさんのアトリエ船


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 まずは、画家のエティエンヌさんの船にお邪魔してみた。エティエンヌさんの船は、普段はブローニュの森のすぐそばに停められているが、夏になると南仏に家ごとクルージングする。「船の家」というと、狭いキッチュなハウスボートを想像しがちだが、ペニッシュ船は、一般のパリジャンのアパルトマンよりずっと広く、200平米もある。船内は水の反射で驚くぐらい明るい。「もう、セーヌの光なしでは絵はかけないよ」とエティエンヌさんは満足気に語ってくれた。
「水上に住むようになって、心にゆとりができたね。なんといっても都会にいながらにして、自然と接した生活ができるのがいい。水の周りというのは、さまざまな生態があるから楽しいんだ。例えば、朝は、河岸の木にとまっている鳥たちの声で目覚め、コーヒーを飲みながら水鳥にパンをあげるのが日課になっている。デッキがテラスになるから、トマトやきゅうりなどの野菜を植えて自家栽培しているよ。釣りも楽しむようにもなったし」。
作家のアナイス・ニン、歌手のジルベール・ベコー、俳優のジャン・マレもかつてはセーヌ河の住人だったが、水上にいると、随分とインスピレーションが湧くという。アーティストたちに、ぴったりのライフスタイルなのだろう。



アンヌ=リーズさんのヒーリング船


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写真  アンヌ=リーズさんは、パリの郊外の船に住みはじめて3年目のパリジェンヌ。2年前に隣の船に住んでいた青年と結婚し、今では1児の母。
「船に住んでから一番変わったことは、良く眠れるようになったことです。波は、まるで地球の揺りかごですね。まさか、都会にいながらにして、星空を見ながらぐっすり眠りに落ちることができるなんて思ってもいませんでした。デッキでは日光浴をしながら寝転んで本を読んだり、ガーデニングをしたり。みんなから『随分と健康的になったね』と言われます。最近は、船の免許を取得したので、家ごと散歩もできるようになりました。ただ、ちょっと不便なのは、なんでもDIYをしなければいけないことです。日曜大工が好きな人には天国ですが……。お水だって、ガスだって、タンクやボンベだから限りがあります。スイッチをひねるだけで無制限に使えるわけではありません。ずいぶん省エネ・モードが身につきましたね」。
日本での水上生活者たちは、水天宮様を船内に祭っていたそうだが、アンヌ=リーズさんの船の数隻先には、船の神様・聖オノリーヌが祭られた「教会船」がある。アンヌ=リーズさんは、この船で結婚式を挙げたそうだ。



フランスの水上ライフを体験したい人のために


 エティエンヌさんやアンヌ=リーズさんの暮らしぶりは、うらやましい限り。でも、残念なことに、誰でもこうした水上生活ができるわけではない。セーヌ河に停留できる船の数は制限があるので、順番待ちなのだ。駐車代と同じく、停船料もというのも存在する。例えば、ノートルダムの近くならば、月々10万円ほどの停船料を払わねばならないが、郊外ならば1万円程度で住む。また、住居専門船のブローカーもパリには数人いる。
是非、ペニッシュ暮らしを体験したかったら、フランスのキオスクで『Fluviale(フリュヴィアル)』という住居船専門誌を購入し、「伝言板」のページで「貸出」、「短期貸出し」という物件を探してみよう。
また、「住むまでは至らないが、どんなものか体験したい」という方は、セーヌに浮かんでいる数々の娯楽船を訪ねてみよう。
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パリのナイト・シーンは、船の中で作られる


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 セーヌ河沿いには数えきれないほどの娯楽船があるが、現在、最もパリジャンたちに注目されているのが、セーヌ左岸、新国立図書館(フランソワ・ミッテラン図書館)前のフランソワ・モーリヤック河岸(Quai Francoise Mauriac)だ。ここ一帯のセーヌ河岸に留められている船は、音楽船や、レストラン船や、喫茶店船、チョコレート屋さん船など、ユニークな船ばかり。
中でもひときわ目立っているのが、真っ赤な灯台船「バトファー」。60年代まで漁師たちを守る灯台船としてアイルランドで活躍していたこの船は、廃船となった後、船を愛するフランス人のNGO団体に引き取られた。2年間かかってアイルランドから引っ張っぱられてパリへと連れてきた後は、クラブ船となって活躍している。
船酔いなのか、ワインに酔っているのかわからないフワフワとした浮遊感を是非楽しんでいただきたい。

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