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伝統を守りつつ、せんべいの可能性を広げる岐阜・大垣の老舗「田中屋せんべい総本家」

  • 2024年5月28日
  • ことりっぷ


良質の地下水に恵まれ、古くからお菓子づくりが盛んな街としても知られる岐阜県・大垣市。この街で江戸時代から営む老舗「田中屋せんべい総本家」は伝統を大切に、定番のみそ入大垣せんべいを作り続けています。また、その一方で素材や味を見直したり、新たな商品を送り出したりと、時代に合わせた改革にも取り組んでいます。時代を超えて愛され続ける老舗の味と魅力、大垣の街を訪れて確かめてみませんか。
岐阜県の南西部に位置する大垣市。戦国時代に築城された大垣城の城下町として栄え、地下水に恵まれていることから、“水の都”とも称されてきました。JR大垣駅から10分、大垣城から7分ほどの静かな通りに建つ重厚な建物が、「田中屋せんべい総本家」の本店です。
創業は1859(安政6)年。大阪で修業した初代がみそ入大垣せんべいを考案し、大垣に店を開きました。創業から160年以上、看板商品のみそ入大垣せんべいをはじめとした、さまざまなせんべいが愛され続けています。
本店を含めて大垣市内に現在2店舗を構えるほか、全国のデパートの諸国銘菓コーナーなどでも販売されている「田中屋せんべい総本家」の商品。地元の大垣市ではもちろん、各地で幅広く親しまれています。現在、老舗を受け継ぐのは6代目の田中裕介さん。奥さまの亜希子さんも子育ての経験を生かした商品開発などで携わり、ともに家業をもり立てています。
みそ入大垣せんべいは、小麦粉、砂糖、味噌、ゴマ、水だけを原料に使った素朴な味付け。卵を使っていないため独特の歯ごたえがあり、噛むほどに素材の滋味が感じられます。シンプルな材料にはそれぞれにこだわりがあり、岐阜県産の小麦粉は、生地にしたとき滑らかな食感にするため半年ほど倉庫で寝かせてから使用。要となる麹味噌は、麹から手作りしています。
自家製の麴味噌に切り替えたのは、裕介さんの代から。伝統をそのまま引き継ぐだけでなく必要に応じた見直しも行うことで、より味噌の香りが感じられるようになりました。
みそ入大垣せんべいは焼き方にも特徴が。今も昔も、職人が一枚一枚手焼きしています。生地の状態を見ながら火の当て方や焼き時間を調整。微調整をしながら進める作業はリズムが大切で、経験を重ねたから上達するものではないそう。店主の裕介さんでも難しいという手焼きを職人さんが巧みな技で担っています。
本店の一角でも手焼きを実演しています。作業場はガラス張りになっているので、お店を訪れた際は職人さんの技をぜひ覗いてみましょう。また、焼きたてを1枚から販売しているので、ほんのり温かいみそ入大垣せんべいを味わってみてくださいね。
キャラメルのほろ苦さがみそせんべいにマッチした「まつほ」は、6代目が考案した新商品。みそ入大垣せんべいにキャラメルペーストを塗って、ゲラントの粗塩をひとふり、その上から粉糖をふってオーブンでキャラメリゼしています。深みとコクを出すために、蜂蜜を加えて完成したキャラメルペースト。ペーストの適度な量や焼き時間、温度などを細やかに調節して出来上がった一品です。2024年1月に行われた「ことりっぷファンミーティング」でのイベント、おみやげ品評会では、全国から集められたお菓子のなかで第1位に選ばれました。
「来ぬ人をまつほの浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ」 という藤原定家の和歌にちなんだ趣のあるネーミングや、洗練されたパッケージデザインも魅力的。必要以上の包装をしなくても、そのままで手渡せるようにイメージして仕上げられたそうです。
「地元の人に長く愛されるとともに、若い人にも興味を持ってもらい、お店に足を運んでもらいたい」と願う田中さん夫妻。従来のせんべいの枠にとらわれない画期的な商品も次々と送り出しています。
缶入りクッキーのようにおしゃれな缶におせんべいを詰めたシリーズは、“NOT COOKIE” 、“YES! SENBEI CAN”、 “ARE YOU SENBEI?”の3種類がラインナップ。ユニークなネーミングと、さまざまな形やデザインのおせんべいに思わず笑みがこぼれます。なかでも、鮎に見立てた二ッ折のみそ入大垣せんべいが入った「ARE YOU SENBEI?」は、せんべいや缶に鵜飼のイラストも描かれていて、岐阜のおみやげとしてもおすすめです。
ふんわりやさしい食感と小さめのサイズで食べやすい「玉穂堂」は、ごまやピーナツをはじめ、ココナツやミントなどの変わり種もそろう多彩なラインナップ。この中から、コーヒーやゆず、ミントなどをセレクトして、かわいいイラストの袋に詰めたのが「せんべいびー」。“ベイビー”も楽しめる安心安全な“せんべい”にぴったりのかわいい商品名で親しまれています。
子どもたちや若い世代もせんべいの魅力にふれて親しみを持ってもらえるよう、商品やお店づくりに趣向を凝らす「田中屋せんべい総本家」。定番の味にほっとしながら、これからどんな新しい味に出会えるかも楽しみです。
せんべいだけではない異なるアプローチとして、2023年夏には大垣市郊外の上石津町でカフェ「田の中屋」もオープンされたそう。自然が豊かな里山でみそやキャラメルなどの素材を生かした料理やスイーツを味わえるので、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。

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