風情を感じる町並みが広がり、多くの文学作品の舞台としても知られている城崎温泉。そんな温泉街の中心にある「城崎文芸館」では、城崎にまつわる歴史や文学について、わかりやすく楽しく知ることができます。数年前にリニューアルして、文豪志賀直哉が書いた『城の崎にて』の一部をデジタルサイネージしたインスタレーション、現代の作家によって書き下ろされた城崎ならではのオリジナル本を販売するショップもあり、城崎温泉の新たな魅力を発見できるスポットです。
JR城崎温泉駅から歩いて5分ほど。温泉めぐりの人々でにぎわうメインストリートから少し外れた場所に「城崎文芸館」があります。
城崎温泉が開湯したのは720年。平安時代から現代まで、和歌や小説などさまざまな作品に登場し、多くの文人墨客に愛されてきました。「城崎文芸館」では長い歴史を持つ城崎の歩みと、ゆかりのある文学を中心に紹介しています。
城崎とゆかりの深い文人の1人が志賀直哉。彼が初めて城崎を訪れたのは1913年、事故で負った怪我の療養のためだったといいます。滞在中に執筆した『城の崎にて』は、自身の体験をもとにした短編小説で、志賀作品の代表作のひとつです。
この滞在の後にも10回以上訪れたといわれており、志賀直哉が愛した町としても知られています。
2階の常設展では志賀直哉をはじめ、彼を中心に近代文学を担った流派・白樺派の作家にまつわる展示がされています。本や原稿、手紙など充実した内容で、彼らと城崎の地とのかかわりを深く知ることができます。
また、富岡鉄斎の『中孝之図』や桂小五郎の書、山下清の下絵など、城崎とつながりのある所蔵作品も多く展示。さまざまな人を魅了してきた歴史を感じる空間です。
1階では1300年以上の歴史を持つ城崎の歩みにまつわる資料を展示。城崎温泉の起源ともいわれるコウノトリ伝説や昔の入浴券、北但大震災からの復興など、さまざまな資料を見ることができます。歴史や文化を知っておくと、温泉めぐりがさらに充実したものになりそうです。
また、常設展に加えて企画展示も開催。現在の城崎と作家のつながりにスポットを当てた展示を中心に行っています。
1階には土・日曜、祝日限定で楽しめる足湯と手湯が併設。また、「城崎文芸館」のロゴが入ったトートバッグやガーゼマップタオルといったオリジナルグッズや城崎ゆかりの作家による本などが販売されているショップもあり、さまざまな楽しみ方ができます。
城崎限定で販売されている「本と温泉レーベル」の書籍もショップでの購入が可能。
温泉街で聞こえるさまざまな音をオノマトペで表現した絵本『城崎ユノマトぺ』2200円や、お風呂でも読める撥水加工が施され、タオル生地の表紙がかわいらしい万城目学さんの小説『城崎裁判』1900円など、城崎温泉ならではの遊び心あふれる作品ばかり。貴重な読書体験ができます。
城崎の歴史と文学を発信する「城崎文芸館」。温泉めぐりの合間に立ち寄って、さらなる魅力に触れてみてはいかがでしょうか。