海と山に囲まれた風光明媚なリゾートスポットの逗子。西側にひと足のばした小坪漁港の高台にひっそりとたたずむのが「南町テラス」です。眼下には海が広がり、風や木々などの自然が奏でるBGMが最高のおもてなし。丁寧な手仕事から生み出されたおやつを味わい、日常から離れて静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
逗子と鎌倉の境にある小坪漁港から、細い路地を登っていくと「南町テラス」があります。昭和の面影が残る家並みを迷いながらも探す道のりはまるで冒険のようで、辿り着いたときの喜びもひとしお。
もともとは漁師の家だった古屋を再生した空間は、逗子の自然を全身に感じられます。テラスからは小坪漁港や逗子マリーナを見渡せ、天気が良い日は江ノ島や富士山まで一望できるのだとか。海と空が続いているような開放感に、耳をすませば潮騒や鳥のさえずりが聞こえ、思わず深呼吸をしたくなります。気持ちの良い海風が吹く季節だけの営業で予約制と限られた営業スタイルですが、それでも「南町テラス」のこの特等席を目指して県外からも客がやってくるのです。
「カフェとして開業したのは自然の成り行きだった」と、オーナーの日髙直穂子さんは話します。「古屋と偶然めぐり合って移住したのが2010年でした。建築家の主人とともに改装していくうちに、地元の人が立ち寄ってくれるようになって。居心地いいねと、お茶をしにテラスに人が集うようになったから南町テラスと呼ぶようになりました。20代の頃からいつかカフェをやりたいと思っていたのですが、周りの後押しもあって2012年に開業をしたんです」。それから瞬く間に口コミが広まり、一時は行列ができることもあったそう。満席で長時間待つことがないよう現在は予約制となり、非日常的な空間を余すことなく楽しめるスタイルで営業されています。
メニューは全て、日髙さんの丁寧な手仕事から生まれます。安心して口にすることができるものを前提に、季節ごとに生産者から届く無農薬栽培や有機栽培の素材を使用。そして、茶や夏みかんなどは自らの畑で育てて収穫し、養蜂までも行っているというから驚きます。
その素材に対する想いはおいしさにも繋がり、イギリスで開催されたマーマレードの大会「ダルメイン世界マーマレードアワード2022」のプロの部にて「小坪夏みかんマーマレード」「小坪夏みかん&カカオニブマーマレード」が金賞を受賞。素材そのものを感じられる味わいや香りが評価されたといいます。
メニューは日々内容が変わりますが、それも一期一会のご縁のようで特別に感じられますね。
「おやつのプレート」はコース料理のように数回に分けてサーブされます。この日の内容は、自家製黒蜜をかけていただく小坪産の天草を煮込んで作った寒天と、新茶の氷出しからスタート。完熟プラムの焼き込みタルトに、桃とレモンを使った季節のトライフルと、旬のフルーツを堪能できますよ。
「茅ヶ崎オーガニックファーム」の無農薬の落花生を使って丁寧に手作業で作られた「ピーナッツペースト」は薄皮ごとペーストにし、ほんのりと甘くなめらか。ジャムは素材本来の味や香りを大切に短時間で炊き上げ、砂糖の量はできるだけ抑えて甘さ控えめなのでフレッシュな味わいが伝わってきます。漁港のイラストがノスタルジックな気持ちを誘う「小坪の塩」は、小坪沖のきれいな海水を炊き上げて天日干しした自家製。パンチのある塩気は、食材の味を引き立てる調味料として役立ちますよ。
小麦、油、豆乳、甜菜糖、塩とシンプルな材料を使い、自家製酵母の力でじっくり発酵させるスコーン。噛みしめるほどに素朴な風味がじわじわと伝わってきます。金柑ピールをアクセントに有機アールグレイの茶葉が心地よく香ります。
薄く焼き上げた「シナモンクッキー」は、歯ごたえがあってカリカリ。有機シナモンの甘味と香りが広がり、ほっこりと心が和みます。
テイクアウトのみ利用の場合は、予約無しでも商品を購入することができます。なお、7月下旬以降はカフェ営業はしばらくお休みし、再開は秋の心地よい海風が吹く頃を予定。ジャム工房としては営業を続け、通販で季節のジャムの販売をする予定です。
逗子の自然を感じられる空間で、日常を忘れてのんびり過ごしてみて。