銀座や日本橋、八重洲の周辺には、全国各地のアンテナショップが密集している。東京にいながら、ちょっとした旅行気分を味わえるのが魅力だが、商品を買うことが、被災地の復興につながることもあるようだ。
今年3月9日には、〈いしかわ百万石物語・江戸本店〉が銀座から場所を移して〈八重洲いしかわテラス〉として再出発。また5月(予定)には〈銀座・新潟情報館 THE NIIGATA〉がオープンを控えるなど、今、注目度が高まる北陸地方のアンテナショップを紹介する。
石川県と人をつなぐ総合発信拠点 アンテナショップが「復興の象徴」に2014年10月、東京・銀座にオープンした石川県のアンテナショップ〈いしかわ百万石物語・江戸本店〉。出店から10年を迎える節目の年に、東京駅からほど近い八重洲エリアへの移転した。
石川県 商工労働部 産業政策課の寺西洋毅さんに、新たにオープンした〈八重洲いしかわテラス〉について、また、年明けに発生した能登半島地震への率直な思いを聞いた。
継続的に石川の情報を発信し続ける― はじめに、〈八重洲いしかわテラス〉の特徴を教えてください。
単に石川県の物産を販売するだけではなく、観光コンシェルジュのコーナーなども設けています。石川県内の事業者による首都圏での販路拡大や観光案内など、情報発信の拠点となるアンテナショップを目指しています。
銀座にあった頃は地下1階、地上2階の3フロアでしたが、今回はワンフロアにすべてが集まっているため、お客様にとっても買い物しやすく、広く、明るい店舗になっています。東京駅から徒歩で約4分と立地がよく、アクセスしやすいのもアピールポイントです。
― 飲食スペースもあるのですね。
新たに飲食スペースも設け、「加賀棒茶」をお召し上がりいただけるほか、日本酒の飲み比べやSNS映えする金箔ソフトなどもご用意しています。
情報の発信拠点ということで、イベントスペースでは文化的な体験も。九谷焼の絵付けや金箔貼りなどの企画を通して、にぎわいを創出していきたいですね。
― 移転の準備段階で「能登半島地震」が発生しましたが……。
以前の店舗を10月に閉めて、約半年空きました。2024年の年明けくらいからPRのための物産展を企画していたのですが、そのタイミングで地震が発生しました。物産展は予定通り開催しましたが、「石川県を応援したい」とのことで、足を止めていただいたり、カゴいっぱいの商品を買ってくださったり、みなさまの「何かできないか」という気持ちがとてもありがたかったです。
― お店に並ぶ商品はすべて「地元のもの」ですよね。地震の影響は何かありましたか?
被害状況は県内でも地域によって差がありますが、やはり能登のほうは被害が深刻で、主に日本酒など、入荷を予定していた商品がまだそろっていません。ただ、それは能登の復興がどれだけ進んだのかを可視化するバロメーターでもあるんです。前はなかった商品が次に来店したときに並んでいたら、その事業者が再開した証になりますから。そうした観点からも、一度と言わず、何度も足を運んでほしいです。
― いよいよオープンとなりましたが、これからの展望を教えてください。
過去の震災で被害に遭った福島や熊本のアンテナショップでも、1年くらいはたくさんのお客さんが来てくれたそうです。一方で、時間が経てば経つほど、客足が遠のいていくとも聞きました。そうした状況を避け、いかに持続していくかが課題だと感じています。
現在、復興応援ブースや新幹線県内全線開業ブースなどを計画していますが、開始時だけではなく、継続して随時情報を発信していく。首都圏にお住まいの方々に、少しでも石川県の現状や魅力を知ってもらいたいです。きっかけは、「何かおいしいものないかな」でもいいので、ぜひ一度足を運んでいただきたいです。
information
八重洲いしかわテラス
住所:東京都中央区八重洲2-1-8 八重洲Kビル1F
営業時間:10:30〜20:00
Web:八重洲いしかわテラス
ここからは、富山、福井、新潟の3県のアンテナショップを見ていこう。銀座や日本橋など首都圏にいながらも、さまざまな体験を通し、まるで北陸へ旅行したような気分になれるのが特徴だ。
富山の魅力を知ってもらう「体験テーマパーク」東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前」駅(B5出口)より、出てすぐの場所にある〈日本橋とやま館〉。食品や工芸品が約1200点も並ぶショップフロアのほか、和食レストラン「富山はま作」やバーラウンジ「トヤマバー」、観光交流サロンなどがワンフロアに集う。入口すぐのイベントスペースでは、企画展示やワークショップが開催されている。
〈日本橋とやま館〉が目指すのは、ただ買い物できるアンテナショップではなく、いろいろな角度から五感をフルに使って富山の魅力を感じてもらう首都圏と富山をつなぐ情報発信拠点。おいしいものを食べ、文化に触れ、いずれは実際に富山に行ってもらう。子どもから大人まで幅広い世代に体験の機会を提供し、富山の上質を見て、味わい、『人とモノ』『人と人』を、体験を通してつなげる役割も担っている。
総括館長の田崎 博勝さんは、「地震は大きな被害をもたらしましたが、長い目で見たときに追い風にできるよう富山の魅力を知ってもらう機会にしたい」と前を向く。また「富山のものを買ってもらうことは大きな力になる」と加えた。
information
日本橋とやま館
住所:東京都中央区日本橋室町1-2-6 日本橋大栄ビル1F
TEL:
ショップフロア(物販) 03-3516-3020
和食レストラン「富山はま作」 03-3516-3011
バーラウンジ(トヤマバー)03-6262-2723
その他(イベント等) 03-6262-2723
営業時間:
ショップフロア 10:30〜19:30
和食レストラン 11:30〜14:30 17:00〜22:30(日・祝〜21:00)
バーラウンジ 11:00〜21:00
観光交流サロン 10:30〜19:30
Web:日本橋とやま館
〈ふくい食の國291〉は、「福井を買って、味わい、旅する」がコンセプトの複合施設。ショップエリアには県内各地から厳選した海の幸やご当地グルメのほか、職人の技が光る工芸品などが並ぶ。
施設内の〈越前若狭 食と酒 福とほまれ〉では、現地直送の新鮮な食材を使った料理を堪能できる。観光移住情報コーナーでは福井への旅の計画のサポートや、移住を検討している人にも現地のリアルな暮らしの情報を提供している。
東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」駅の5番出口から徒歩1分、JR山手線・京浜東北線「有楽町」駅京橋口改札から徒歩5分とアクセスも良好。福井の歴史や風土に光を当て、都心から“MADE IN FUKUI”の魅力を発信している。
information
ふくい食の國291
住所:東京都中央区銀座1-5-8
Ginza Willow Avenue BLDG 1F・B1F
TEL:03-5159-4291
営業時間:
ショップ10:30-19:00
イートイン 福とほまれ
平日 11:00〜15:00 (L.O.14:30)、17:00〜21:00 (L.O.20:00)
土日祝 11:00〜20:00 (L.O.19:00)
定休日:不定休(年末年始を除く)
Web:ふくい食の國291
1997年のオープン以来、多くの人々に愛されてきた〈表参道・新潟館ネスパス〉。ビルの老朽化に伴い、2023年12月25日に閉館した。その後継として2024年5月(予定)にオープンするのが、銀座に建設中のビルの5つのフロアを使った〈銀座・新潟情報館 THE NIIGATA〉だ。「新潟の魅力を伝える場所があることをストレートに伝えたい」という思いを込め、この名が付いた。
1・2階は物産販売エリアで、軽飲食販売や日本酒の試飲も可能。また、地下1階は移住相談窓口となっている。3階のイベントスペースでは文化体験の機会も設けられ、8階には飲食店が入る予定で、“食”を通して新潟県の魅力を堪能できる。
information
銀座・新潟情報館 THE NIIGATA
住所:東京都中央区銀座 5-6-7
本特集「復興のバトンをつなごう。」のトップにも採用した震災前の石川県輪島の白米千枚田。(c) 輪島市
手軽にできる復興支援として「買い物」を紹介したが、寄付や義援金のほかにも、クラウドファンディングという選択肢もある。
「津波の被害に遭った旅館を再建したい」「江戸時代から続く輪島塗の工房を再建したい」「水族館の生き物を守りたい」被災地からは、さまざまな理由から支援を募る声が届いている。
たとえば能登半島地震で甚大な被害を受けた輪島市の「白米千枚田」は、棚田に亀裂が入り、地下水は地上にあふれ出し、壊滅的な状態に。放置しておくと修復不可能になるとのことで、対応が急がれるなか、立ち上がったのが「白米千枚田愛耕会」のみなさん。
「400年間守りつないできた能登の財産をここで絶やすわけにはいかない」そんな思いで、クラウドファンディングに挑戦したという。
愛耕会のメンバーのなかには、自宅が全壊した人もいる。避難生活を強いられながらも「白米千枚田」を守ろうとする姿に、心を動かされた人は多いようだ。自宅からでも、何かできることを。クラウドファンディングで応援するというのも、復興支援のひとつの形だ。
information
能登半島地震|白米千枚田を修復し、再び米作りを。
Web:能登半島地震|白米千枚田を修復し、再び米作りを。(READYFOR)
writer profile
Haruki Nukui
明日陽樹
ぬくい・はるき●エディター/ライター。1990年生まれ、宮城県石巻市出身。大学卒業後、カフェやステーキ屋でのアルバイト生活を経てライターに転身し、2019年に独立。「TOMOLO」を設立した。ビジネスからグルメ、子育てまで、ジャンルを問わず幅広く寄稿する。