〈商店街サンド〉とは、ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、その土地でしか食べられないサンドイッチをつくってみる企画。必ずといっていいほどおいしいものができ、ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
東京の島・新島(にいじま)が舞台!モヤイ像があちこちにある島、新島に来ました!
東京には11もの島がある。伊豆諸島の9島(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島)と小笠原諸島の2島(父島、母島)の計11島だ。
そのなかで今回やってきた新島は、白浜のビーチが美しく、サーフィンの聖地と言われる島だ。海のアクティビティのほかにも、島中にたくさん並ぶモヤイ像や、郷土料理のくさやが有名である。
竹芝から高速船に乗れば2時間20分、もしくは、調布から飛行機に乗ればなんと35分でついてしまう。
品川ナンバーです!
信号機は島にふたつだけで、道はシンプル。
車を走らせると、新島で産出される「コーガ石」でできたモヤイ像や、ギリシャ宮殿を彷彿とさせるモニュメントなどをたくさん見ることができる。
ちなみに渋谷駅前にあるモヤイ像は、ここ新島でつくられたものらしい。
神殿のようなモニュメントもコーガ石でできている。
こちらの神殿のような場所は実は無料で入れる露天風呂!水着で24時間いつでも入ることができるため、満天の星空を眺めながらお風呂につかることができるのだ。
島にはほかにも、羽伏浦海岸という名所の白砂を使った砂風呂が体験できたり、きれいな夕日が一望できる温泉施設もあって、昼間に海で冷えた体を温めることができる。
都心からも気軽に行ける、すばらしい癒しスポットだ。
大人気の島寿司(メダイ、カンパチ、真鯛)。
新島に行ったらぜひ食べてほしいのが島寿司。旬の魚を醤油ベースのタレに漬けてヅケにしたもので、肉厚の魚が口の中でとろけておいしい。上に乗っているのはワサビではなくカラシで、これがものすごく合っていた。
また、「今日、葉を摘んでも明日には芽が出る」と言われるほど生命力が旺盛な明日葉(あしたば)も名物のひとつ。島のマンホールにも描かれるほどだ。
お土産に人気のあしたばせんべいと牛乳せんべい。
つい買っちゃったかわいいお土産たち 左)コーガ石を溶かすとできる美しい緑色のガラス玉。右)くさやのクリップ。
こういったノスタルジーあふれるお土産もあります!
さてそんな新島では、いったいどんなオリジナルサンドができるだろうか?材料を探しにメインの通りを練り歩いた。
サンドイッチづくりスタート!まずはサンドイッチに必須のパン探しだ。新島では、早朝から開いている〈かじやベーカリー〉さんでできたてのパンがいただける。
できたてのパンがベンチですぐ食べられる〈かじやベーカリー〉。
カウンターの壁には、当日出荷のオーダーの紙がたくさん貼られていて、大人気なのが伺えた。お店の方によると、滞在中に毎日通う観光客も多いそうだ。お惣菜パンから菓子パンまで、たくさんの種類が並んでいる。
あふれんばかりのキャベツが食欲をそそる!
なんともいえない表情の「ドラちゃん」。
食パンをゲットしました!
サンドに一番適していそうな食パンをゲット。ほかにもデカいコロッケサンドや、表情が気になった「ドラちゃん」などついついたくさん買ってしまった。
地元スーパーで地元食材さがし!旅先では地元スーパーの品揃えも気になるところ。地元の商品が並んでいるかもしれないからだ。と思ったが、うちの近所のスーパーとほぼ同じ品揃えだった。
ほかにもスーパーをいくつか周ってみたけどやっぱり同じ。離島とはいえ、東京だもんなあと納得してしまう。
好立地にある〈マルマン〉。100均コーナーもある便利な地元スーパー。
店員さんによると、地元のものといえばたまにイカや明日葉、そして「たたき揚げ」が並ぶ程度らしい。イカはサンドに入れられないし、明日葉は残念ながら時期ではなかった。
最後の「たたき揚げ」とはなんなのか。すぐ近くのお店から取り寄せているというので、そのお店に向かってみることに。
〈池太商店〉さん。くさやも販売している!
池太商店さんは、新島の代名詞ともいえる「くさや」を売っているお店だった。くさやは、強烈なにおいと濃厚な旨みを持つ嗜好品で、健康食品としても注目される発酵食品。
主な産地は新島、八丈島、伊豆大島などで、ここ新島を元祖とする説が有力だそうだ。かつては新島だけでくさやのお店が100店以上あったそうだが、いまや6店ほどまで減っている。貴重なのだ。
ちなみに新島には〈東京都新島村本村くさやの里〉というくさやの加工団地もあって、近くを通るとくさやの香りが漂い印象的であった。
食べやすいように小分けもあります!「上干品」は、通常のくさやより乾かしたもの。歯ごたえがあり長く楽しめる上級者向けのようだ。
そしてスーパーにもたまに並ぶという「たたき揚げ」。
たたき揚げも新島の郷土料理のひとつ。味噌などの調味料や野菜を加えて練った魚のすり身とのこと。サンドにピッタリだ!
海苔がうまそうな新島の弁当ところで地元のスーパーを見ていて気になったのが、お弁当のご飯に乗っている海苔。よく見かけるような板海苔ではなく、粗く刻んだ海苔が乗っているのが新島のお弁当の主流のようだ。
からあげ推しの手づくり弁当やさん〈もやいずキッチン〉。
新島のお弁当の海苔はみんなこういう粗い海苔。おいしそう!
こちらでは唐揚げをゲットしました!
農協で意外な〈新島いちごバター〉発見農協もあった。地元の食材をつかったものが欲しいならまずここに来れば揃いそうだ。明日葉や、新島特産の「あめりか芋」のアイスやジュースもある。
平仮名で「のうきょう」がかわいい。
食品のお土産を買うのにいい!
新島産のいちごでつくったバターが意外で気になる。
おかず買うなら〈みかさ〉!そして最後に寄ったのは、おにぎりやおにぎりに合うお惣菜を揃える〈みかさ〉さん。無茶苦茶おいしそうなものが所狭しと並んでる!
2023年にオープンしたばかりの〈みかさ〉さん。イートインも可。
上の段にはぜいたくにおかずが入ってるおにぎり。4日かけてつくる〈卵黄旨漬おにぎり〉なんておいしそうなものも。
下段には新島産の食材を使ったお惣菜。どれもキラキラしてる〜
ついついたくさん買ってしまいました!
ちなみにこのみかさで働くお母さんは、〈かじやベーカリー〉のお母さんと姉妹だそうだ。パンとおにぎり、姉妹で新島の主食を牛耳っているのか、すごい。
そしてサンドのために集まった食材はこちら!
地元スーパーの100均コーナーで買ったシートの主張が強すぎたのは想定外だけど、気にせず海辺でサンドを仕上げよう!
海がとってもきれいです! ちなみに履いているのはギョサンと呼ばれる地元でよく見かけるサンダル。
今回も乗せる食材を多く、買いすぎたが後悔はない。新島産のタケノコや玉子、ゴーヤ、貝を使ったおかずを積み上げていった。
新島ではイシモンと呼ばれるマツバ貝。採るのが大変だそう。
で〜きた〜!
最後のトッピングとして、新島産のピーマンと青唐辛子の佃煮〈カラてっちゃん〉、そして外すことのできないくさやを乗せて完成だ!
いただきます! うーんくさやが強烈ーっ!!
完全にくさやが主役のサンドくさやは塊だと危険な気がしたので、細かくほぐしたものを振りかけた。しかしその存在感はひとかけらでさえ圧倒的。
パンはやわらかくておいしいし、海の味がするたたき揚げや、ジューシーな唐揚げ、やさしい卵焼きなどもおいしい。ただ、くさやをひと口いれたあとはもうくさやの香りがほかの食材を制していた。
パクチーを乗せるとなんでもパクチーが主役になるようなもので、微量であってもくさやを入れればくさやが主役である。
でも、私はこれぞここでしか食べられないサンドだと感動した。今後の人生で、くさやの香りを嗅ぐたびに、くさやの文字を見かけるたびに、このときの楽しかった旅を強烈に思い出すことだろう。
新島のみなさま、ご協力ありがとうございました!
【おまけ】スイーツサンドもつくりましたかじやベーカリーの砂糖たっぷりパン×農協のいちごバター×みかさのコーロー煮(あんことサツマイモで作る郷土料理)。
バターぬりたくってコーロー煮をたっぷり入れて……
うまい!
●新島サンドレシピ
かじやベーカリーの食パン…240円池太商店のくさや小袋…200円池太商店のたたき揚げ…150円もやいずキッチンの唐揚げ…207円新島村農業協同組合のカラてっちゃん…400円みかさのお惣菜(新島産ゴーヤ、新島産たけのこチーズ、イシモン、白いたまご焼き)…各300円で1200円合計……2397円
●新島スイーツサンド
かじやベーカリーの砂糖パン…200円新島村農業協同組合のいちごバター…550円みかさのコーロー煮…300円合計……1050円
writer profile
Maruko Kozakai
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
credit
撮影:地主恵亮