こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる 〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
福岡県糸島市の古民家に暮らし、11回目の冬が訪れようとしています。
夏のわが家は涼しく快適でとても過ごしやすいのですが、冬になると大変です。
美しい縁側や、天井吹き抜けの土間は外気温とほぼ同じ。室内には隙間風が通り抜け、床下からは冷気が上がってきます。通気性のよさが仇となり、部屋を温めても熱は外へ逃げる一方。冬の寒さは、古民家暮らしの人たちの大きな悩みといえると思います。
美しい縁側も、寒さの原因のひとつ。
近年、ますます注目されている「断熱」。壁や床に断熱材などを入れ、外気温の影響を減らすことで「夏は涼しく、冬は暖かい」住環境をつくる技術です。
私が断熱に関するノウハウを知ったのは8年以上前ですが、正直なところ、古民家には向かないんじゃないかと感じていました。
そもそも古民家は通気性を重視して設計されており、気密・断熱と正反対の特性を持っています。土壁に漆喰といった“呼吸する素材”でつくられた家の特性を壊すことをしたくありませんでしたし、環境負荷の観点から、石油由来の断熱材を大量に使うことにも抵抗がありました。
昔の人たちは、この家で夏も冬も過ごしてきたのだし、この家で紡がれてきたカルチャーを守りたい、そんな信念もありました。
広くて開放的なリビング。冬は仕切りが必須です。
でも、その気持ちが揺らいだのが一昨年の冬。暖房をつけても外からの冷気を防ぎきれず、寒くて何度も体調を崩しました。最終的には寝込むことになってしまい、古民家の寒さが体に大きな負担をかけていることを身をもって体感しました。
その経験から、ついに断熱DIYを決意。「いきなり大きなリノベーションは難しいけれど、自分たちのできる範囲から始めてみよう」と思い、本やネットで得た情報をもとに“プチ断熱”を始めてみました。
みなさんのお家では冬の寒さに困ったりしていませんか? 今回はホームセンターなどで買える素材で簡単にできる5つの断熱アイデアをご紹介します!
(1)内窓を設置まず、断熱で一番メジャーな「内窓」DIYから。今ある窓の内側にもう一枚窓をとりつけていきます。
日本の住宅の多くで使用されているアルミサッシですが、熱が伝わりやすい素材のため、夏は外から約74%の熱が家に入り込み、冬は約50%の熱が家から出てしまっているというデータが出ています(YKK APによる算出データ)。
つまり、熱の出入り口をしっかり遮断すれば、夏の暑さも、冬の寒さも、だいぶ和らぐはず。
ポリカはカッターで切って簡単に加工できるので、特別な道具が必要ないのもメリットのひとつ。
内窓の材料は「中空ポリカーボネート(通称ポリカ)」と、「溝付角材」という木枠。ポリカの中には空気の層があるため、断熱効果が高い素材です。畳1枚分くらいのものがホームセンターで3000円前後。木枠も800円ほどで売っています。
つくり方は、窓のサイズを測り、ポリカをカットして木枠に入れ込み、完成した内窓を窓にはめ込むだけ。
普段開け閉めしない小窓などに内窓をはめるだけならビスで壁に打ちつけたりしなくてもいいので、賃貸でも気兼ねなくできるのもいいところ。
よく開閉する窓であれば、レールなどを設置する必要があります。その場合、強度だったりサイズ調整がシビアになってくるので、ちょっと大変かもしれません。
はめ込み型の内窓。最初はコスト重視でプラスチックの枠を試してみましたが、強度が弱く使っているうちに外れたり壊れたりしてしまいました。少し高くても木枠をおすすめします。
部屋すべての窓に内窓をとりつけると、しんしんと底冷えする感じが減りました。部屋の3面が窓だったので、体感はかなり変わったと思います。
おまけ的なメリットとして、隣のお家から丸見えだった窓にポリカがついたので、部屋の中が見えにくくなり快適になりました。
体感は変わりましたが、実際の気温はどうでしょうか。
内窓ありの室内の気温。
内窓なしの室内の気温。6度以上の差が出ました。
まず、内窓をつけた状態の室内温度は21.0度。そのあとに内窓を外し、温度の下降が止まったのが14.7度。この日の場合、内窓ありの室内温度が6度以上高いという結果になりました!
(2)隙間風対策パーツを設置ドア下や建具の間に「隙間風対策パーツ」を設置しました。古民家は建てつけが悪かったり、そもそも家が歪んでいたりして、建具の間に隙間が空いてしまうことが多いです。その際は、こういったパーツやスポンジなどで隙間を埋めて気密性を高めます。
障子にとりつけた隙間風防止のラバーテープ。
作業は、テープを「貼りつける」だけ。特別な道具はいらないので、今すぐにでも試せる断熱DIYです。
地味な作業ですが、あなどるなかれ。これだけで体感温度はだいぶ変わりました! どのパーツも、ホームセンターやECサイトなどで手頃に購入できます。
一方で、気密性が上がると一酸化炭素中毒のリスクも上がるので、ストーブなどを使用する際は意識的に換気することをおすすめします。
ふすまの端っこに、スポンジをとりつけ。これで隙間風が入ってこなくなります。スポンジは消耗品なので、数年ごとに換える必要はあるかも。
(3)建具のガラス部分にもポリカ貼りポリカは外の明るさをとり込みながら断熱してくれるので、部屋が暗くならないところがうれしい。
部屋を仕切っていた障子のガラス部分。本当に寒い夜は、ここからひや〜と冷気が入ってくるのを感じていました。
窓ガラスのサイズに合わせてポリカをカット、窓枠の木の部分に両面テープで貼りました。簡単ですが見栄えもそこまで悪くなく、なかなか気に入っています。
でも文房具用の両面テープだと、ちょっと強度が弱いかもしれません。一昨年ポリカを貼りつけた障子を今シーズンに出してみたところ、ポリカがぽろっと剥がれてしまいました。木工にも使える強力なテープを使うか、細い木などを打ちつけて補強したほうがいいかもしれません。
(4)スタイロフォームを入れて床下断熱断熱材「スタイロフォーム」を大きさに合わせてカット。
米蔵を改修してつくった女子部屋。過去に床張りリノベーションをしていたのですが、かつて土間だった部分から冷気が上がってくるため、床下に「スタイロフォーム」という断熱材を入れました。
リノベのあとに断熱材を入れたので、床下に潜り込まなければならず、なかなか大変でした。「断熱の知識はリノベ前にあったほうがいいな……!」と強く思った瞬間でした。
都会っ子だったシェアメイトが泥だらけになって床下に潜る姿に「たくましくなって!」と感動しました。
(5)断熱ブラインドを設置冷たい空気の入ってくる土間にブラインドをつけました。色が白いので空間も明るくなった気がします!
断熱に取り組む人たちから「これいいよー!」とおすすめされたのが「断熱ブラインド」。ブラインド内に空気の層があることで、窓からの冷気や熱気がやわらぐ仕組みです。
土間からの冷気はこれである程度防げたような気がしますが、縁側のところは風が入ってきてしまい、少し微妙な効果でした。ただ、マンションなど気密性のしっかりしている場所ではもっと効果を感じられるかなと思います。
空気層がポイント。
断熱ブラインドを設置した縁側。見た目もすっきりして縁側も明るくなったので、これはこれでよし!
番外編:窓にプチプチを貼る断熱効果あり、と有名な「梱包材のプチプチ」。窓に貼ってみて実際に効果は感じられましたが、耐久性がなくひと冬でボロボロになってしまいました。
見た目もあまりよくなく、結局ゴミになってしまうのでおすすめはできませんが、一時的に寒さを凌ぐ場合はいいかもしれません。
プロをお呼びした「断熱ワークショップ」を開催します!いろいろな“プチ断熱”のDIYを試してきましたが、この冬は断熱のプロをお招きしたワークショップを企画することになりました。
本格的な断熱DIYはもちろん、マンションや賃貸でも使える簡単断熱グッズも制作予定。オンラインからも参加できます。
そして「いとしま断熱DIYプロジェクト」というコミュニティを立ち上げ、ノウハウの共有、参考文献、断熱DIYに関する補助金などを紹介し、参加者が交流できる場をつくります。
断熱ワークショップとオンラインコミュニティのためのクラウドファンディングを始めます!
さらに今回は、夏に涼しく、冬は暖かい、人・環境・お財布にやさしい家づくりを広めるべく初めての「クラウドファンディング」に挑戦することとなりました!
募集期間は2023年11月30日(木)まで。支援やシェアしてもらえるとすごくうれしいです。
断熱のプロによる“古民家断熱の秘訣”も書かれているので、よかったら読んでみてくださいね。
▶︎クラウドファンディングページはこちら
断熱ワークショップの大工募集!「大工・イン・レジデンス」また、これを機に大工さんが滞在費無料になる「大工・イン・レジデンス」も再募集! プロから断熱技術を学べる実践の場として活用してもらえたらうれしいです。
▶︎断熱ワークショップの大工募集!
断熱DIYを始めて思ったのが、「リノベする前に、断熱の知識があったらよかった……!」ということ。リノベしたところをまた剥がして断熱材を入れるとなると、時間も手間も倍かかります。
そして、ちょっとした手間や資材を入れるだけで快適さが圧倒的に変わります。これからリノベを考えている人にはぜひ知ってもらいたい技術です。
冬の寒さに困っているのは自分たちだけじゃないはず。この記事や、断熱ワークショップがきっかけとなり、誰かの家が少しでも快適になればうれしいです。
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森