「#さす九」男女差別が根づく九州を皮肉るスラングが炎上!?脱出するとわかる「あれはひどかった」の声【著者に聞く】

  • 2025年5月23日
  • Walkerplus

X(旧Twitter)で「さす九(さすきゅう)」というワードがトレンド入りし、議論が白熱中だ。「さす九」とは日本のインターネットスラングで、九州男児の亭主関白ぶりを「さすが九州」と略語にしたものだ。今回、イラストレーターのオカン羊(@shimizoon)さんが漫画『我が家のさす九』を投稿すると1.8万の反響があった。今回はオカン羊さんに制作の経緯やさす九についての思いを聞く。


■家事や育児は「男はやらなくていい」と言われて育った!その環境に異議あり
我が家のさす九01
我が家のさす九01 / 画像提供:オカン羊(@shimizoon)

今回のエピソードのネタとなった話は、Xで「九州出身の男性が“俺の父親がきて、妻がテーブルでごはんを食べていることに大激怒。理由は、土間で正座をして食べていないから”と言っていた(以下省略)」と発信したことだった。今どき、土間で正座して食べるのが当たり前といった感覚に驚きを隠せない。

この投稿は炎上。そのほかの九州男児あるある亭主関白エピソードが届き、「さす九」と揶揄されるようになる。しかし今度は、何でも「さす九」と言われるが、それは地域差別ではないか?といった議論展開に発展。すると、「地域差別の前に、たしかに女性差別があるから言われるんでしょうが!」と反論するかのように九州女子たちが自分の経験を投稿。オカン羊さんは「さながら#metoo運動のようだと眺めていました。元熊本女子として、ささやかながら参戦した次第です」と、制作の経緯を話す。

我が家のさす九02
我が家のさす九02 / 画像提供:オカン羊(@shimizoon)

オカン羊さんも九州熊本の出身。今回のさす九エピソードとして、父親のことを描く。産後、父親から電話がきた。「おめでとう!この子は賢くなる」という言葉とともに、「子育ては素晴らしかよ!」と言われてブチッと切れてしまった。産後のせいもあるが、「育児など一切しなかった父親に何がわかる!」と思ったそうだ。それを父に言うと「あぎゃんのは、女の仕事ったい!馬鹿が」と怒鳴り散らされた。あぎゃんとは「ゴミ出しを含む家事育児など」のことを指す。

我が家のさす九03
我が家のさす九03 / 画像提供:オカン羊(@shimizoon)

九州では、「男はそげんことせんでよか=男はそんなことしなくていい」という言葉もよく聞く。お酌やお茶汲みは当たり前、妻は台所に近い場所に座るなどもよく聞くエピソードだ。このような家族との関わり方の一切をどこかに置いてきたような昭和の男性は、九州に限らずどの地域にもいるだろう。「『九州だけじゃない』という指摘は正しいというか、そもそも『九州特有の文化だ』と断定している人は、ほとんどいないのではないでしょうか」と、オカン羊さんも言う。



オカン羊さん:具体的に『だけじゃない』のは何か?それを整理すると、                            

1. 閉ざされた保守的な地域で、古い価値観が固定されて、なんらかの思考停止が起こっている
2. それはだいたい女性の奴隷化だが、優位にいる側はむしろ居心地がいいから問題を認識すること自体を無意識に拒んでいる
3. なので、従属する側には「従うか、逃げるか」の2択を選ばざるを得ないが、奴隷が自主的に従っていると思い込んでいるので
4. 否定をされると、急にとんでもない言いがかりをつけられたように感じて、怒り出す
5. 奴隷構造が続く、または強化される

現象のことじゃないかなと考えてみました。
広義のこの現象の中から、 「九州人」という属性でしぼったものを「さす九」と呼んでいるのだと私は考えています(命名者の意図はわかりませんが、少なくとも私は)。九州には「保守的で、変化を拒む文化が色濃く残っている」と共感する人が一定数いるからこそ「さす九」が“あるある”として通じるのだと思います。

一方で、「さす九」という言葉は、出身者への偏見や差別につながる可能性がある、という意見も理解できます。ですが「さす九」を使う人の多くは、特定の相手との関係性の中で「私はこう扱われたくない、嫌だった」という拒絶の表明をしているのであって、地域全体を攻撃しているわけではないはずです」というのが、オカン羊さんの意見だ。

「私自身、家事育児をしないのに権威性だけ維持しようとする父を『嫌だなぁダサいなぁ』と見て育ちました。親族も父の勤め先も学校も、大人たちは誰も、それを咎めない空気の中で。これは単なる家庭内の出来事ではなく、文化の一部だったと思います。そして、その文化によって父もまた『実の孫との関わり方が分からない祖父』になってしまいました。年に一度しか会えない孫の横でTVを見るしかないのです。哀れなモンスター以外の何者でもありません。男尊女卑は、加害者/被害者という単純な構図ではなく、個人同士の幸せな関係性を奪う側面があるのです。私は、父のことも母のことも、どちらも男尊女卑文化の被害者だと思っています。だからこそなくなって欲しい。『さす九』は、そうした構造的な苦しみが共有されるたびに浮上してくる言葉です」

「私とて、九州に暮らしていた時間も、九州の友人達も、おいしい水も食べ物も愛しておりますので、九州の悪口を言われたらチクっとしちゃう気持ちもわかります。でもそこで「馬鹿!!」と怒鳴って終わらせてしまうのではなく、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。悪口なのは間違いないので、本当は言わずに、言われずに済む九州になってほしいと願っています。」

性別で役割を決めること、それに従わなけらばいけない空気、男は働き、女が家庭を守るという古い価値観のイメージが定着していた地域では、女性はとにかく息がしずらかった。今ならとハッシュタグをつけて声を上られる時代になった。それは直接言えなかった苦い記憶を昇華させたいのかもしれない。


取材協力:オカン羊(@shimizoon)

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