
季節ごとに色を使って彩られていたり、その寺院にゆかりのある歴史上の人物が描かれていたりと、さまざまな柄が展開されている御朱印。そんな御朱印を書いてもらったり、書き置きの紙を張り付けたりと、御朱印のコレクションにぴったりな御朱印帳も、全国各地の神社・寺院でさまざまな柄のものが販売されている。神社や寺院ごとにこだわりが詰まっていることもあり、参拝の証・記念品としてだけではなく、絵柄の美しさや、ご当地ゆかりのデザインだからこそと、旅行のお土産にコレクションしている人も多い。
そんな御朱印と似ている「御書印(ごしょいん)」・「御船印(ごせんいん)」があることを知っているだろうか?御朱印が人と神社・寺院をつなぐように、御書印は人と書店を、御船印は人と船をつなぐ特別なイラストの「印」だ。
■書店員が選んだ本のタイトルや一節も楽しめる!人と書店をつなぐ「御書印」
御朱印が神社や寺院で入手できるのと同様、御書印は実際に書店を訪れることで入手できる印。訪問した日付と、書店員が選んだ本のタイトルや一節などを手書きで書いてもらったあと、書店のオリジナル印含む3種類の印を押してもらえる。オリジナル印は各書店ごとにデザインが異なり、書店にゆかりのある人物や地域のシンボルなど、書店ごとに個性が表れている。その場で書店員にイチオシの書籍のタイトルや一節を書いてもらえるのも、本好きにとってはたまらない交流の機会だ。
御書印は書店員が一枚ずつ本のタイトルや一文を書き入れてくれる / 御書印プロジェクト公式サイトより
オリジナル印はどれも違うデザインで個性が溢れている / 御書印プロジェクト公式サイトより
御朱印帳のように、御書印を集めるための「御書印帖」も存在している。参加店では御書印帖を無料で配布しているので、初めて御書印をもらう際にも安心だ。もちろん専用の御書印帖ではなく、お気に入りの御朱印帳やノートを御書印帖として使うこともできる。ノートや御朱印帳に旅の記録を付けている人も、ぜひ旅先の書店に入ってみて御書印を集めてみよう。
シックなデザインの御書印帖は、御書印の料金だけで手に入る / 御書印プロジェクト公式サイトより
来店日も記された御書印は旅行の思い出にも! / 御書印プロジェクト公式サイトより
※書店によっては御書印が記された御書印紙の提供の場合もあります。
※御書印は有料です。価格は書店により異なりますが、300円程度で販売されています。
■書店でも「御書印」を配布する理由とは?担当者にインタビューしてみた
――御書印の発行・販売の狙いやターゲットを教えてください。
御書印プロジェクトは、御書印を通じて、書店とお客様との間に自然な形でのコミュニケーションを生み、お客様・書店・本の新たな出合いをもたらそうというプロジェクトです。店にとっては、御書印を通して文化の発信地である書店という「場」の魅力を再認識し、お客様にとっては、今まで行ったことがない書店を訪れることで、新しい本や本屋と出合い、人生が少しでも豊かになってほしいという願いを込めました。
――御書印が通常のスタンプラリーと異なる点を教えてください。
印にはスタンプだけでなく、「お店の一筆」ということで、お店でひいきにしている本のタイトルや本の一節、お店のスローガンなどが必ず書かれています。この一筆が季節や店員によって変わることがあるほか、お客様に選んでいただける書店もあります。
――全国各地で御書印を配布するというアイデアは、どのようにして実現にいたったのですか?
とある独立系書店に伺ったのに、店主とも話したり交流したりできず、すごすごと帰ってきた際、御朱印の書店版を作れないかと考えました。書店といっても千差万別で、チェーン店から街の本屋、独立系書店、専門書店などいろいろな個性があります。「御書印」というものがあれば、ユーザーがいつもの行きつけの書店以外のあちこちの書店に出かけるモチベーションになり、そこにある本や店員さんとのコミュニケーションのきっかけになると思いました。
最初はピンとこない書店さんもあり、直接お店に足を運んで説明し、12都道府県46店が参加して2020年3月1日にスタートしました。その後は、ダイレクトメールでの案内や書店さんからの紹介で参加店の輪が広がり、47都道府県と台湾の計564店(うち既に閉店や受付停止したお店は64店)が参加しています。
――御朱印のような形で有料で配布を行っている理由を教えてください。
御書印プロジェクトを永続的に行うには、参加される書店様に頼るところが大きいです。その負担などを鑑みて、有料とすることで、些少ですが参加していただける書店様が収益を得られる仕組みにしようと思いました。
――御書印を集めることで得られる特典などあれば教えてください。
現在店頭で配布している御書印帖は、御書印代はいただきますが、御書印帖代は無料です。店頭で手に入れた御書印帖に、50カ所の異なる御書印を集めた方を「巡了者」と認定しています。「巡了者」の証としては、50カ所の異なる御書印が集まった御書印帖を送っていただき、「巡了印」を事務局が押印して返送するサービスを実施しています。巡了者の人数は、現在300人を超えています。
――おすすめのオリジナルグッズなどあれば教えてください。
新たな御書印グッズとして、御書印帖カバーと御書印ポーチの2つを2025年5月下旬に発売予定です。御書印のプロジェクト開始から5周年という節目に合わせて、事前に御書印店の意見を聞きながら、要望の高かったものを商品化しました。デザインや価格など御書印店と相談しながら生まれたこだわりの商品なので、ぜひ公式サイトなどで新情報をチェックしてみてください。
――最後に一言お願いします!
御書印は、御朱印などのように気軽に始められ、本好きの方には新たな発見をもたらしてくれるものだと思っています。御書印帖自体は無料で手に入りますので、まずは身近な御書印店でスタートしてみてください。
■ゆっくりと船を満喫する旅のお供にぴったり!人と船をつなぐ「御船印」
御書印が書店巡りで集められる印であるように、御船印は船を巡ることで集められる印だ。日本旅客船協会の公認事業としてスタートした「御船印めぐりプロジェクト」では、参加する各社が印を発行し、港や船内の窓口などで御船印を販売している。
港や船内の窓口などで御船印をゲット!旅先の記念に御船印を集めていこう / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
印のデザインは、各社の特徴を表現したものであり、航路や船体、観光地のシンボルなどが描かれていて、作り方もプリント版、スタンプ版、手書きなどさまざまだ。なかには飛び出す仕掛け付きのものや、公式の「船印帳」やノート等に直にスタンプ数種類を押して完成させるものもある。また、船によっては船長がサインや一言を書き入れてくれる場合もあるそうなので、気になる人はぜひ窓口で聞いてみよう。
御船印には、個性豊かに航路や船体、観光地のシンボルなどが描かれている / 御船印めぐりプロジェクト公式サイトより
御船印を発行しているのは、フェリーを運航している船会社が多いが、海や湖・河川の観光地を周遊する遊覧船や、神戸海洋博物館や船の科学館といった海にまつわる博物館でもオリジナル印が販売されていることも。フェリーを使った船旅でも、水辺の観光地でも、気軽に手に入れることができる御船印をぜひ集めてみよう!
福井県の一大観光地・東尋坊の絶景を海上から楽しめる観光船の御船印も2種類発行されている / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
神奈川県の横須賀港と福岡県の新門司港を結ぶ東京九州フェリーのはまゆう・それいゆの御船印 / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
隣接する博物館の「神戸海洋博物館」と「カワサキワールド」で配布されている御船印は2枚つなげて一つのイラストに! / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
※御船印は有料です。価格は参加会社により異なりますが、300~500円ほどのものが多いです。
■船でも「御船印」を配布する理由とは?担当者にインタビューしてみた
――御船印の発行・販売の狙いやターゲットを教えてください。
船や船旅の楽しさを知っていただくための一つの「きっかけ」になることを意図しています。近年、御朱印や御城印、ダムカードやマンホールカードといった収集企画を通して、新しい旅の形が普及してきたように思います。その流れにあやかり、御船印もみなさんの旅の「きっかけ」や「テーマ」になったらいいなと思い、御船印を発行しております。
年齢や性別に関わらず、御船印はどんな人にも楽しんでいただける内容です。たくさん集めても楽しいですし、乗った船でたまたま知って購入した1枚だけでも旅の記念として成立します。あらゆる人たちに御船印を通して「船」、そして「船旅」の楽しさを知っていただくことが私たちの願いです。
――御船印が通常のスタンプラリーと異なる点を教えてください。
御船印が通常のスタンプラリーと異なるのは、「一度集めたら終わりではない」という点と「期間限定ではない」という点です。発行されている御船印は、必ずしも1社につき1種類ではありません。同時に複数枚出していることもありますし、周年記念の御船印を出しているところもあります。また、乗らなければ入手できない御船印から欠航時しか入手できないものまであります。デザインもいろいろで御朱印風のものもありますし、飛び出す絵本風とか切り絵とか、紙ではない御船印もあります。どんな御船印を作るか、各社が工夫を凝らしているところもスタンプラリーとは違うところです。
――全国各地で御船印を配布するというアイデアは、どのようにして実現にいたったのですか?
「御船印」は、旅作家の小林希さんが船で旅するなかで思いついたアイデアと聞いております。2020年ちょうどコロナの時期に各社へのお声がけを始め、オンライン中心で説明会を積み重ねてきました。コロナで観光業が苦しい時期だったからこそ、みんなで力を合わせて現状を跳ね返そうと一致団結したように思います。
2021年4月に46社から企画をスタートして5年、「御船印」も少しずつ名前が知られるようになり、最近では「御船印を利用して何かできないか」という船会社や自治体から問い合わせや相談を受けるようになってきました。これからも「船に乗って御船印を集める」だけではない御船印の可能性について、新しいアイデアを考え続けていきたいと思っています。
参加社の集中するエリアで購入可能な御船印「地域御船印(地域印)」は、ポストカードとしても使えるデザイン! / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
日本の海運史に大きな影響を与えた北前船がテーマの「北前船テーマ印」も発行!歴史を学びながら楽しく旅行しよう / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
――御朱印のような形で有料で配布を行っている理由を教えてください。
たくさんの会社に御船印を少しでも長く続けていただくために、有料であることが大事だと考えています。船会社は大きい会社ばかりではありません。家族経営に近い小規模な会社もたくさんあります。有料での配布であれば、そのような小さな会社であっても、御船印を配布した収入で新しい御船印を作成し続けることができる点が一つの理由です。また、ユーザーにとっては有料で入手したということで、旅の思い出、お土産として大事にしていただけるのでは、と考えています。
――御朱印帳と同様に御船印を集める「船印帳」のこだわりを教えてください。
舶来物、唐物という言葉でもわかる通り、かつて新しいものやモダンなものは、海を越えて船が運んできました。「船印帳」は、船が本来持っている新しいものをもたらす力、私たちが感じるノスタルジックな海への憧れ、という気持ちを込めたデザインにしています。
公式船印帳は参加社の御船印発行窓口で購入することができるほか、一部の参加社ではオリジナルの船印帳を制作しているところもあります。各社工夫を凝らした個性豊かなデザインとなっていますので、旅の思い出にぜひお買い求めください。
※一部、公式船印帳の取り扱いのない参加社もあります。公式サイトの参加社リストページからご確認ください。
「ウルトラマリン(海を越えた色)」という別名を持つ瑠璃色がベースカラーの公式船印帳「瑠璃(るり)」 / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
日本最大級の船員教育機関である海技教育機構とのコラボで誕生した公式船印帳「日本丸・海王丸」 / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
――御船印を集めることで得られる称号について詳しく教えてください。
「御船印マスター制度」は、定められた条件の印を集めることにより認定される称号制度です。20社で「一等航海士」、さらに40社で「船長」、そしてさらに88社で「レジェンド船長」に認定されます。認定されるとシリアルナンバー付きの認定証が授与されます。また、神戸市内で集められる御船印を対象12社中、10社分集めると認定される「神戸ポートエキスパート」という称号もあります。
ここでポイントなのは、集める印の条件は20社、40社、88社であり、枚数ではなく社数でカウントする点です。たとえば、A社の印を3枚、B社の印を2枚集めた場合でも、カウントは2社になります。そして、20社分の印を集めて「一等航海士」の称号を得たあと、次の称号である「船長」になるには、あらためて40社分を集める必要があります。「船長」や「レジェンド船長」の称号に到達するのは、かなりハードルが高いですが、さらに新しい称号を設定してほしいという要望などもいただいております。長く楽しんでいただけるよう、現在新しい称号やテーマについても検討をしています。
御船印マスター制度の称号を手に入れると、シリアルナンバー付きの認定証が授与される / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
――おすすめのオリジナルグッズなどあれば教えてください。
たくさんの御船印をモザイク状に集めたデザインのグッズがおすすめです。Tシャツ、トートバッグ、手ぬぐいなど、さまざまなグッズを展開しており、多くの人に全国の御船印を身にまとっていただきたいと思っています。このデザインは、のぼりやポスターにも使用しており、目にした人が「これ何?」と興味を持ってくださることが多いデザインなので、「船旅」が好きな人に特におすすめです。
御船印をタイルのように敷き詰めたデザインが特徴的なオリジナルトートバック / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
船旅の船内でゆったりと着るのにもぴったりなオリジナルTシャツも! / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
全国の参加社が発行する印を96枚も並べた、壮大なデザインのオリジナル手ぬぐいも発売中 / (c)御船印めぐりプロジェクト事務局
――最後に一言お願いします!
旅のきっかけはいろいろです。美しい風景やおいしい食事、めずらしい文化や体験を求めて旅の可能性は広がっていきます。そこに「船」や「船旅」そして「御船印」を旅のチョイスの一つとして追加していただきたいと思っています。今まで以上に旅の可能性が広がるのではないでしょうか?おでかけする際のテーマとして、そして旅の魅力の一つとして、御船印を大いに利用してください!
神社や寺院に行った記念にもらう御朱印や、マンホールカードなどの収集カードのように、御書印・御船印は、その場に行かないともらえないので旅行先の記念にぴったり。書店や船など、その場所の暮らしに根付いてきたスポットにも注目しつつ、旅の楽しみの一つとして、こだわったデザインの御書印・御船印集めを始めてみてはいかがだろうか。
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※「御書印」、「御船印」、「船印帳」は登録商標です。
文=平岡大和