中川紅葉のエッセイ連載!学生時代、すれ違ってしまった旧友との邂逅/ココロすっぴん#38

  • 2024年10月31日
  • Walkerplus

現役女子大生タレント・中川紅葉のエッセイ連載「ココロすっぴん」
現役女子大生タレント・中川紅葉のエッセイ連載「ココロすっぴん」 /  撮影=千葉タイチ/スタイリスト=稲葉有理奈(KIND)/ヘア&メーク=加藤志穂

青山学院大学に在学する現役女子大生で、演技やバラエティなどマルチに活躍している中川紅葉さんによるエッセイ連載「ココロすっぴん」。かなりの読書家で、大学生・タレント・インフルエンサーなどのさまざまな顔を持つ彼女が日々感じたことを、忖度なく書き綴ります。
【写真】約2年連載したエッセイが最終回!“ココロすっぴん”な中川紅葉
【写真】約2年連載したエッセイが最終回!“ココロすっぴん”な中川紅葉 /  撮影=千葉タイチ/スタイリスト=稲葉有理奈(KIND)/ヘア&メーク=加藤志穂

■#38「あの頃のまま、私だけが子供だった 〜最終回〜」

突然の発表になってしまいましたが、2年連載を続けていたこの「ココロすっぴん」が今回で最終回となります。告知をしていなかったので、驚かれた方もたくさんいるかもしれません。最後までゆるりとお読みください!

書籍「ココロすっぴん」の読者さんにとって、あの話に続きができたのです。最終回にぴったりの。

10月28日。感傷に浸っていた。2日後はエッセイ連載最後の更新。いくら前向きな決断だとはいえ、どうしても寂しい。最終回まで提出はギリギリだし、そもそも他と違った意見を求められて始めたこの連載で、どれだけの面白いことが書けたのだろう。たいして守るものも、大きなキャリアもないけれど、顔を出して仕事をしているところからスタートの連載になると、見られ方の意識もしつつ、更にギリギリ許してもらえるパンチラインを攻めなくてはいけない。で、結局守りに入ってたよなーと今更思う。

そんな気持ちで渋谷駅を歩いていると、すごく見覚えのある顔の女の子が手を振って近づいてきていた。

高校生の頃、軽音楽部に所属していた。今だから言えるが、本気でこのバンドでMステに出ようと思っていた。私だけが突っ走りすぎて周りが見えておらず、2年ほどで解散。と言っても、たかが中高生の、部活の、ただのバンドだ。それでも私以外の3人をずっと許せなかったし、そんなに熱量が違ったなら早く言ってよとずっと不貞腐れていた。
 撮影=千葉タイチ/スタイリスト=稲葉有理奈(KIND)/ヘア&メーク=加藤志穂

のちに学外でバンド活動をし出したのも、軽音部の有名な大学に入ろうと目指したのも、数年後本気でバンドを組んだのも、全部彼女たちを見返したかったからだった。特に、卒業まで一度も話すことのなかったKちゃんを。夢への動機と活力をくれていたのはずっと彼女だったのかもしれない。

去年の年始、中高の同窓会があった。私の代の軽音部の同期は8人。2バンドのみだった。顧問の先生に呼ばれ部活全体の集合写真を撮る。Kちゃんと話したのは約7年ぶりだった。久しぶりだねと声をかけてくれたのにも関わらず、私は愛想笑いしかできなかった。変な汗もかくし、目を見れない。それでも何事もなかったかのように話せたのは、Kちゃんが大人になっていたからだった。意地っ張りで素直じゃない私だけが子供のままだった。

そして今月、そのKちゃんに渋谷駅でばったり会うことになる。お互いを認識した時にはハグをしていて、あまりにも私たちが大人になっていて拍子抜けした。Kちゃんは「ねぇ本買ったんだよ、もうやだ〜思い出しても泣く」と言いながら、“自立していて強くてかっこいい女の子”な見た目とは裏腹に涙目になっていて、こちらも堪えるのに必死だった。どこまでも彼女には勝てないなと思った。私はというと写真を撮って、送るからとLINEを交換するのがやっとだった。

相変わらず、お互い住んでいるところがどの友達よりも近いねという話で盛り上がり、来月ご飯に誘った。解散した後、LINEの名前をKちゃんと登録し直して、本当に来月ご飯誘っても迷惑じゃないかなと心配してみたりする。2ショットを送ると「えぐい、高1の夏フェスぶりの2ショ」と返信が来る。そうだ、はじめて自分のお金で行った5月のフェスは、Kちゃんとの思い出に溢れていた。
 撮影=千葉タイチ/スタイリスト=稲葉有理奈(KIND)/ヘア&メーク=加藤志穂

連載をしてから2年。何でもかんでも書けるようになるのが密かな夢だった。そんなことが最後までできなかった。一般論、正論、大多数論をさも自論のように書いていたことだってあった。なんて良い考えをするんだと言われても、心に響いたと言われても、どこかしっくりこなかった。

それでも、本を出させてもらって夢も叶った嬉しさも勿論あったし、自分の本を眺めに何度も書店に通ったりなんかしていた。先日熱海に遊びに行った際、撮影地の喫茶ボンネットに行くと本が置いてあった。それを角度を変えて何度も写真に収める私を見て、友達は微笑んでいた。

この連載や本を100点と認められなかったのも、誰よりも楽しんでいたのも、私だったのかもしれない。今日まで連載における正解とはを見つけられずにいたけれど、自分の心が揺れることを書けばよかったんだと、今なら分かる。

連載、書籍を楽しみにしていて下さった皆さん、編集チームの皆さん、最後までありがとうございました!またいつか、どこかでお会いしたいです。
 撮影=千葉タイチ/スタイリスト=稲葉有理奈(KIND)/ヘア&メーク=加藤志穂

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