Instagramやライブドアブログ「ゆっぺのゆる漫画ブログ」で、実話をもとにしたエッセイ漫画を描く漫画家のゆっぺさん。ブログは2021年には月間3000万PVを記録し「ライブドアブログ OF THE YEAR2021」最優秀グランプリを受賞。2021年12月から執筆してきた「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」では、戦前から生きる“祖母・キヨさん”の幼少期からの実体験を漫画化し、コメント欄を解放した最終話には500件以上の熱い応援コメントが寄せられた。
理解しがたい養母のいじめ行為、夫の女性蔑視などつらい体験を描くときは、漫画の中のキヨと同じように泣いていたという著者は、描き終えたときに何を思ったのか。今回は作品に対するゆっぺさんの率直な気持ちを伺った。
■「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」は祖母のために描いた
――ゆっぺさんは多くの作品を執筆されておりますが、その中で本作はどんな存在ですか?
たとえ人気がなくても、読者が1人しかいなくても描く意味が絶対ある作品だと思っていました。数字や人気は一切関係なく、おばあちゃんのために描いたものなので。祖母自身、「こんな話、誰も信じてくれない。うそだと思われるかもしれない」と何度も言っていましたが、読まれる方のなかには確かにそう思う方もいるかもしれません。でも、1人でも信じてくださる方がいるだけで、おばあちゃんの気持ちも報われるのではないかと思っています。
――キヨさんが経験された「家庭内いじめ」「男尊女卑」をテーマに漫画を描きながら、どんなことを感じていましたか?
男尊女卑にしても今と時代がだいぶ違いますが、だからといって仕方のないことだとは思いませんし、家庭内いじめにしても“戦時中に寝る場所や食べるものがあるだけで幸せだっただろう”とか、“戦時中だから耐えられたんだ”というものではないと思っています。それに、虐待やいじめは今の時代にもあります。だから、おばあちゃんの漫画を通して、それをどう乗り越えていくかということを感じてもらえたらと思っていました。今のおばあちゃんのように幸せだと思うためには、最後まで生き抜かないといけないと思うんです。途中でやめてはいけない。そういう部分が伝わったら、いいなと思っていました。
■たとえつらい状況にいても、途中でやめない、諦めないことが伝われば…
――キヨさんのかつての経験を通して、現代の方に語りかけているんですね。
はい。たとえば、今、学校などでつらい思いをしている人は、今だけしか見えないから余計につらくなるんだと思うんです。でも、40年も50年もこれが続くか?と言ったら、そうではない。おばあちゃんのように途中でやめない、諦めなければ、道は開けるのではないか?とも思いました。ただ勘違いしてほしくないのですが、決して逃げずに戦えという意味ではありません。逃げてもいいと思います。
――また、養母からのひどい仕打ちを決して他人にしてはいけないと肝に銘じてきたキヨさんは、偉大だなということも感じました。
本当にそう思います。祖母は感謝の気持ちを常に持っているんです。感謝の気持ちを持っていなかったら、いろいろなことを人のせいにしていたのではないかと思うのですが、おばあちゃんは感謝の気持ちがあるから、そうはならなかったのではないかと思います。そして、だからこそ、今の幸せなおばあちゃんになることができたのはないかと思います。
■祖母が喜んでくれたので、漫画化して本当によかったと思っている
――フィナーレを迎えたお気持ちをお聞かせください。
正直、こんなに長くなると思いませんでした。少しずつ話を聞きながら描いたので、だいたいの話数も決まっていませんでしたが、ここまで長くなるとは(笑)。ただ、おばあちゃんはまだ全部を話していないそうで、まだまだエピソードはあるみたいです。おばあちゃんはいつも笑顔のイメージで泣いた姿を見たことがなかったので、昔のことを話しながら泣く姿を見て、本当に驚きました。でも、「今の涙は、幸せだから流す涙だ」と言ったことが忘れられないです。描き終えて、おばあちゃんに「描いてもらってよかった」と言ってもらえたので、漫画化して本当によかったと思っています。
――最終話のアップ後に解放したコメント欄には、すぐさま500件以上の感想が寄せられました。その感想を読まれて感じたこと、そして、皆さまへのメッセージをお聞かせください。
ずっとコメント欄を閉じていたので、どんなメッセージがくるのか正直怖かったのですが、たくさんの温かいメッセージをいただき、うれしくてぼろ泣きしてしまいました。印刷して、おばあちゃんにも読んでもらいました。おばあちゃんも泣いてました(笑)。私が漫画を描き続けられるのは、応援してくださる読者の皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。この漫画を通して、少しでも心が前向きになるきっかけになれば幸いです。共に日本一幸せなおばあちゃん、おじいちゃんを目指しましょう。