
妻へのお土産にスイーツを買ってくる、気立てのよいエリートの夫。または、無職で「俺の金をどう使おうと自由だろう!」と叫び、ギャンブルにお金をつぎこむ夫。そのどちらを良しとするか?これだけを聞いたら、よっぽど奇特な人でない限りエリートな夫を選ぶだろう。ところが彼には「世間から見えない裏の姿」があるようで…。
エリートサラリーマンのきちんとした家と、夫が無職で荒れ放題な家。両極端な家庭の妻同士が友人となり、それぞれが新しい道を切り拓く過程を描いた横山了一(@yokoyama_bancho)さんの「どちらかの家庭が崩壊する漫画」。2022年年末に「大晦日までにどちらかの家庭が崩壊する漫画」としてSNS上で大ブレイクした本作が、大幅に加筆し、オールカラーで書籍化決定!ウォーカープラスでは発売に先駆けて書籍のカラー版を連載していく。これを記念して、著者の横山了一さんへ本作執筆のきっかけを聞いた。
■家族の細かい設定は描きながら構築。SNS発信ならではのスピーディーな展開を目指した
――対極にある2家庭の様子が上下で分かれて描かれるという画面作りが印象的です。どうしてこの作品を執筆されたんでしょうか?
この漫画の前シリーズで、クラスの人気者と冴えない男の子を登場させた「いつかポジションが入れ替わる二人」という作品を描いて、上下でキャラクターそれぞれの人生を描いていくという手法を試していました。このときの手法をもっと膨らませて、ドロドロした設定の漫画を描けないかな、と思って始めたのが「大晦日にどちらかの家庭が崩壊する漫画」です。「どちらかの家庭が崩壊する漫画」はこの話がベースになっています。
――きれいな家と荒れている家、1ページ目から非常にインパクトがありますね。
「2つの家の設定を極端にする」というのは思いつきで始めたことですが、ギャップがあったほうがおもしろいかなと思い、シンプルにエリートとヤンキーという設定にしました。ヤンキーの家が実はいい家、というのは最初の段階で考えていましたが、細かい部分は描きながら決めていった感じです。SNS発の漫画全般に言えることではないかと思いますが、取りあえず描いてみて、ウケがよければ続きを描いていくということが多いです。計算して描いて外すとダメージが大きいので(笑)
――「どちらかの家庭が崩壊する漫画」の前身である「大晦日にどちらか家庭が崩壊する漫画」はX(旧Twitter)上で毎日更新されていましたが、書き溜めるのではなく、その都度描かれていたんですか?
更新する日の朝10時くらいから描き始めて、1時間半くらいで仕上げて、正午にアップするというのをルーチンにしていました。習慣化すると楽に描けるんです。生活の一部になるので、ストレスを感じなくなるんですね。それと、僕はネーム(コマ割りや構図、ストーリーをページごとに大まかに作っていく作業)を作るのが好きなんです。
Xで毎日更新されていたということもあり、本作はスピーディーな展開も魅力の一つ。インタビュー内で横山さんが「ヤンキーの家が実はいい家」と言っていることから、崩壊する家庭がどちらかは推測できるが、エリート夫・シュウが果たしてどんな闇を抱えているのか、想像しながら読んでみてはどうだろうか?