
毎年9月1日は防災の日。今年は、1923年9月1日に起こった関東大震災から100年という節目の年でもある。地震だけでなく、最近は大雨による浸水、停電被害も増加していて、改めて“備える”ことの重要さが認識されてきているのではないだろうか。
“防災”と聞くと「した方がいいもの」「必要なもの」ということはどこかで認識しつつもめんどくささが勝ってしまい「自分には関係ない」となかなか行動にはうつせないもの。「なんだかいろいろ準備が大変そう…」というイメージが先行してしまっているが、とりあえず超簡単にできることだけでもやってみるのはどうだろう?
「マーガレット」(集英社)で「さすがにムリだよ亜門くん」を連載中の漫画家、竹内文香さんと、竹内さんの夫で現在プレッパー(災害や人災などに備えて、食料や生活用品などを備蓄する人)としてInstagram(@yasao_bousai)やブログ「ヤサオのゼロから防災テクニック」で防災情報を発信するヤサオさんに話を聞いた。
ヤサオさんは以前カタログギフトでもらった防災バッグの中から、保存期限がとっくにきれた備蓄用ペットボトル水を発見!(後に飲んだが大丈夫だったよう)。それを機に「本当に何かあったとき大丈夫なのか…?」と考えるようになり、一家の防災準備を見直し。すると「こりゃやばい!」ということが出るわ出るわで危機感を覚えて防災に力を入れ始め、実際に家族全員で「水なし、電気なしで24時間過ごす」というガチすぎる防災訓練まで実施したのだ!
そんなヤサオさんに聞いたところ、まずやるべきことはケガなどをしないように建物の中を安全に保つことだそう。
・断捨離
・家具の固定
・水の備蓄
をするだけでも、生存率はグッとあがるのだという。
そして今回は、“防災リュックの中身”についてフューチャー。皆さんの家には防災リュックはあるだろうか?注目すべきポイントについてチェックしよう!
――防災リュックを準備する際、大事なことは何ですか?
【ヤサオ】まず第一に「市販の防災バッグを買えばおしまい!」って思っている人は、要注意です!かつてのうちがそうだったように、買ってそのまま玄関にポンッて置いておくのはおすすめしません(笑)。もちろん、プロがセレクトしているものですし、ベースとしてはバッチリです。うちにかつて常備されていた防災リュックの中身はアップデートしていないのもあって、実際に何かあったときに使えないものばかりでした。賞味期限切れの水やFOMA用の充電器に、電池の入っていない懐中電灯など…。そうならないために、一定の期間で中身を確認して入れ替えたり、追加したりすることが大事ですね。
あと、“持ち出し”と“備蓄”がごっちゃになりがちの人が多いのですが、いざというときに何十キロものリュックをしょって、子供を抱えて走って逃げるのは困難です。準備したものすべてを持って逃げられるわけではないので、最低限“持ち出すもの”と家に備えておく”備蓄”は切り離して用意する必要があります。
自宅で安全に過ごせる状態の場合は避難所に行く必要はありません。ただ、水や電気などライフラインはストップしてしまう可能性がある。その場合に必要なのが“備蓄”です。逆に、避難所や家以外の場所で過ごすことを余儀なくされた場合に“持って出られる”範囲で必要なもの。それが“持ち出し”です。防災リュックの中には“持ち出し”すべきアイテムを入れておくことが必要です。
海が近いのか山が近いのか、街中なのか田舎なのか、土地の高度が高いのか低いのか、避難所に行く必要性が高いのか自宅避難がいいのか…環境によって準備したほうがいいものは全然違います。なので、自分は何を“持ち出し”て何を“備蓄”すべきなのか、どちらに重きを置くのがいいのかなって考えてみてください。
できることなら一度中身を使ってみると、いざというときに安心ですね。「使いにくいから違うタイプにしよう」「ライトが暗すぎるかも」とか気付けることがあるかもしれないし。
【竹内】持って出られるものって、限られているじゃないですか。だから、その人にとって本当に必要なものを取捨選択する必要がある。赤ちゃんにはオムツが必要だし、持病がある人にとっては薬、小さい子供にとっては心のよりどころになるいつも一緒にいるぬいぐるみだったり…。ヤサオさんに「化粧品を入れておくといい」と言われたのは意外でしたね。大変なときなのに化粧していいんだ!って。
【ヤサオ】普段と同じ生活ができない非常時だからこそ、少しでも普段に近い生活をすることがとても大切なんですよね。精神面を健康に保ち続けるためにも“自分らしさ”を我慢したり諦めないでください。文香(竹内さん)は毎日化粧をするから、しても大丈夫なように僕の方にメイク落としシートを入れてあります。
【竹内】妹から聞いたのですが、被災地で化粧水を配ったら喜ばれたというエピソードがテレビで放送されていたそうです。メイクというのは一例ですが、気分をあげることって非常時だからこそ大切なのかもしれないなって思いました。
――竹内家の防災リュックの中身を教えてください。
【ヤサオ】まず第一に持ち出す防災リュックのポイントとして、“走って逃げられるか”が挙げられます。あれもこれもと入れても重くて逃げ遅れたのでは意味がないので、どれだけ軽くできるかが重要です。
【竹内】幅広い人にも該当しそうなのは、このあたりですかね。
・食糧
・口腔ケアセット
・衛生用品(マスク、アルコール、除菌ウェットティッシュ)
・ウォーターバッグ
・水
・サバイバルシート
・タオル
・ラップ
・トイレットペーパー
・軍手/防刃手袋
・懐中電灯
・笛(救助が必要なときに吹く用)
・サバイバルナイフ
・携帯トイレ
・薬
・着替え
・靴下
・カイロ(冬)/冷却タオル(夏)
【ヤサオ】食糧は、さっと食べられて栄養価の高いものがいいです。水を使うものはできるだけ避けて、水分も一緒に摂れるゼリー飲料なんかがおすすめですね。
【竹内】わが家で人気で買い足したのは「えいようかん」。押し出してもなかなか出てこなかったりと若干の食べづらさがあったものの、味がおいしすぎて…!普通におやつとして食べてたよね(笑)。
【ヤサオ】あと重要なのはライト(懐中電灯)。わが家では日常的にも使っている必須アイテムです。
【竹内】防災訓練してみて、ライトの偉大さを感じました。暗いとメンタルがやられるんですよ…。それまではライトの重要さがわからなくて「別に光ればケータイの電気でもいいんじゃない」と思っていたんですけど、ずっとヤサオさんが力説していた通り「壊れない」「ルーメン(光)の強さ」は本当に大切だなと感じました。いざずっと暗い中で過ごしていると、光が強い安心感というか…。何というか…心の支え!?
【ヤサオ】ものによっては100均とかで買ってもいいかもしれないですが、ライトに関しては「丈夫さ」「光の強さ」を重視して選ぶことをお勧めします。それでいうと、サバイバルシートもいろいろ比べた結果、100均でないものの方が機能を考えるとおすすめです。音とか、保温機能とかね。
【竹内】家族構成や年齢、性別、それから季節によってもいるものは変わってくるので、そのあたりも考慮してカスタマイズしてみてください。
【ヤサオ】何度も繰り返しになってしまいますが、まず行動に移してみてください。僕はほかの誰でもなく、自分の大切な家族のためだけに防災しています。自分と、自分の家族や大切な人が困らないように準備しましょう!
できるところからでOKなので、まず一歩を踏み出してみませんか?それだけでも、きっと心の余裕が持てるはず。
取材協力:竹内文香(@ayyyyyaka.t)、ヤサオ(@yasao_bousai)