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満月に向かって飛ぶ?人生を失って初めて気づく自分の価値「読めば読むほど味が出る」漫画【著者インタビュー】

  • 2023年6月15日
  • Walkerplus

空を見上げて、鳥のように飛べたら自由になれる気がした。自分の人生に何の価値もないと思っていた中年男性が「空を飛べる」力をもらう代わりに自らの人生を売った勝見ふうたろー(@mangaka_tsumi)さんの「飛ぶ男」を紹介しよう。本作は、5月に投稿された読み切り漫画で、4000を超えるいいねがついている。


■「空を自由に飛べたら」人生が楽しくなると思った
43歳サラリーマン独身、長島夢彦。ブラック企業で日々心をすりらしながら生きている。「いっそのこと誰もいない場所に行きたい」そんなふうに願う自分は、とても疲れていると感じた。

帰宅すると、突然「そらとぶひとびと」という怪しい名刺を持った人物に「空を飛んでみたくないですか?」と言われる。

無料体験版で空を飛ぶ体験をする夢彦。体験の後、「自分の力で自由に飛びたいなら、『製品版』を購入していただく必要がある…」と言われる。その対価は、夢彦の人生だった。

「これまでとこれからの全ての人生を僕に明け渡してください」、男はそう言った。自分の人生に何の価値もないと思っていた夢彦は、「いいよ」と人生を対価に飛ぶ力を手に入れた。

■失って初めて気づく本当の価値。そして最後に与えられた「幸せ」なラスト
――まずは、勝見さんが漫画を描き始めたきっかけを教えてください。

中学生のときに松本大洋さんの「鉄コン筋クリート」を読んで、絵だけで感情や物語を描いている奥深さに圧倒され、こんな味わいのある作品を描きたいと思い、描き始めました。

――次に「飛ぶ男」を描いたきっかけを教えてください。

絵として「背広のおじさんが空を飛んでいる」のが、非常におもしろいと思ったのが始まりです。漫画は絵が面白いのが、まず最初に大事なことだと思っています。

――タイトルにもなっている「飛ぶ男」。安部公房氏の著作と同じですが、作品に関連していますか?

非常に影響を受けました。安部公房先生の発想や考え方には、かなり影響されていると思います。

――空を飛んでみたいという多くの人が憧れるテーマ。序盤は楽しそうに見えて、中盤からラストにかけて、すごく深いテーマに変化していきますね。

カルト宗教に飲み込まれていくような、不気味な怖さを伝えたいと思いました。ただ最初からそれを全面に出すと人を選びそうな気がしたので、初めのシーンは楽しそうにしておいて、少しずつ本来のテーマに誘導していきました。

――月を目指すことにしたのは、なぜですか?

月というものが、僕にとっては「欲しいけれど、実際に手にしてはいけないもの」の象徴だからです。綺麗で魅惑的には見えるけど、実際には過酷な環境なわけですから。パンドラの箱のようなイメージが強くあります。

――その他にどのような作品を描いていますか?

今回の「飛ぶ男」のような奇妙なお話も多く描いていますが、ヒューマンドラマやエッセイも好きでよく描きます。漫画という形で、興味のあることは何でも描いてみようというスタンスでいます。


満月の日、「幸せ」を求めて月を目指した夢彦。そこで見たものは――。同じ思いを持った人間がほかにもたくさんいたことに救われ、満面の笑みを浮かべる。それが果たして幸せなのか、読者の捉え方でそれぞれ受け止め方が変わる結末に「こういうの好き」「大変おもしろい」などの声が届く。

取材協力:勝見ふうたろー(@mangaka_tsumi)

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