大阪・河内長野の森と共生する! 地域のスターバックスと森林組合が店舗で育てた苗を植林へ

  • 2023年4月28日
  • Walkerplus

23年3月上旬、キラキラと輝く木漏れ日のなか、スターバックス コーヒー河内長野高向店のパートナー(従業員)と大阪府森林組合南河内支店の職員が、河内長野市内の森林でスギやヒノキの植林を行った。苗木は、「森林循環の一助に」という思いを胸に両者が協働し、たい肥作りから手掛け育てたもの。参加者たちの充実した笑顔の理由を追った。

■コーヒー豆かすと木材チップのたい肥を作り、苗木を育てて植林へ[/HEAD]
大阪府南東部にある河内長野市は、70%を森林が占める自然豊かな場所。この街にスターバックス コーヒー 河内長野高向店がオープンしたのは21年9月のこと。だが、スターバックスと大阪府森林組合南河内支店(以下、森林組合)との出合いは、19年11月に大阪・梅田に誕生したスターバックス コーヒー LINKS UMEDA 2階店の出店時にさかのぼる。内装に地元の木材を使用することから、森林組合とかかわりが生まれ、河内長野高向店の出店へとつながった。同店では地元のブランド材「おおさか河内材」がふんだんに使用されている。

以来、「地域のつながりのきっかけとなる場所であるためにできることを」と森林組合と協働で始めたのが、河内長野高向店で出るコーヒー豆かすと森林組合で出る木材チップを材料にした、たい肥作りだ。

完成したたい肥を地域の中で活用し、河内長野に貢献していきたいという想いから、「コーヒー豆かすと木材チップのたい肥で苗木を育て、市内の森に植林をしよう」と、さらにプロジェクトは動き出した。

21年6月、店の敷地内にたい肥を作る木製コンポストを設置し、毎月1回、森林組合の職員にレクチャーを受け、一緒にたい肥作りを実施。配合を変えながら実験して最適なレシピを見つけ出し、22年4月にたい肥の成分検査をクリアした。そのたい肥を使ってまずはどんぐりを育てて生育障害がないかを確認し、同年10月からスギとヒノキの苗木を育て始め、今年3月の植林へとつながった。

「たい肥の成分検査がクリアした時はとても達成感があり、パートナーと喜びを分かち合いました」と、同店ストアマネージャー(店長)の趙 珠希さん。
「どんぐりは小さいながらも秋には紅葉して落葉もして、成長がうれしかったです。現在は30センチ弱まで育ってプランターから店の苗床に植え替えたのですが、根がしっかり張っていて、たい肥で元気に育っていることを実感しました」
苦労したことは?という問いには笑顔で「思い返しても思いつかない。毎月楽しくやっていることが未来につながりました」と、活動の充実ぶりうかがえる。

[HEAD]森を大切にすることは、まず知ることから[/HEAD]
植林にはパートナーや森林組合の職員ら20人以上が参加し、河内長野高向店で育てたスギとヒノキの苗木10本に加え、山主が用意した苗木100本を植えた。山の空気を吸い、鍬を使って土を掘って植え、香りや感触を体感。山主や森林組合の職員から森に関するさまざまな話も吸収した。趙さんは、「これまで教えていただいた森林循環の話への理解が深まったと感じました」と言う。

森林循環とは、木材を切り出して使うだけでなく、植林して若い木々を育て、世代交代させながら自然環境を維持保全するという考え方のこと。森林が健全に保たれているからこそ、おいしい水が飲め、空気が浄化され、立派な木材も入手できる。森は私たちの生活にかかわる多くの資源をはぐくんでいる。

しかし「蛇口をひねれば水が出るこの環境が当たり前すぎて、その恩恵に気づかないでいる。気づかない、知らないということは、必要なものだと思われていない可能性がある」と、危機感を語るのは、活動を共にする森林組合の倉橋陽子さん。
地域で植林が進まない現状についても、「森林循環には植林とても大切ですが、この地域では大規模な植林は20年ほど行われていませんでした。今回は間伐でできた空間に植林をすることができましたが、ほかの森林でもできるようつなげていくことが森林組合の課題かなと思います」と語った。

そうした思いは、河内長野高向店のパートナーたちもしっかりと受け取っているようだ。
趙さんは「河内長野市の水源は山の水ですが、木の根が浅いと水が保てないそうです。生活の中で受けている恩恵を、いかに意識せずに暮らしてきたのかということに驚きました。子育て世代のパートナーは自分の子世代に思いをはせるなど、自分事としてとてもリアルに考えられる時間になりました」と振り返った。

[HEAD]“たい肥ケーション”で培ってきたつながりはこの先の未来へ
スターバックスと森林組合という異業種の協働は、たい肥作りから始まって約1年半。毎月顔を合わせ、たい肥を混ぜるなど共同作業をしたことは、両社のつながりを深めたという。たい肥作りの疑問点からプロジェクトの方向性、森林が抱える課題まで、多くの事を話し合ってきた。

「たい肥の土を混ぜながら、雑談しながら…というのが良かったんだと思います。“たい肥ケーション”です(笑)」と倉橋さんが言うと、趙さんも「土を触っていると、心の壁がとっばらわれるような不思議なパワーを感じるんです。カジュアルにいろいろなことを質問できる関係性ができました」と同意する。

そして今回の植林はゴールではなく、これから先の未来に向け共に活動を続ける。目標は、コーヒー豆かすと木材チップのたい肥を、地域に循環させること。例えば地域の農家の畑で使ってもらうなど、地域での循環といった未来図を描いている。
「1回のたい肥作りに、店舗で出るコーヒー2.5日分の豆かすを利用しています。いろいろなところで使っていただけるような出口を作っていきたいですし、ほかの店舗にも広げていきたい」(趙さん)

しかしハードルもある。コーヒー豆かすは廃棄物であるため、無断でたい肥を店舗外に持ち出すことができない。現在はたい肥を継続して作りながら、そうしたハードルを乗り越えるための準備中だ。20年後、30年後、そしてもっと先の未来を守るため、活動は地域に大きく根を広げて成長を続けていく。

もうすぐ5月4日(祝)「みどりの日」。みどりの日は、自然に親しむことや感謝することが目的で、豊かな心をはぐくむという意味合いもある祝日だ。まずは私たちの身近にある自然に目を向けてみよう。

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