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バツイチ50代の男性の部屋に「虫が出る!」幻覚は統合失調症!?孤独を抱えて生きてきた人を楽にさせる手立てとは?【作者に聞いた】

  • 2023年3月9日
  • Walkerplus

心の病を抱える人や医療従事者に取材を重ね、病に至るまでの原因や背景を含め実体験をもとに制作された水谷緑(@mizutanimidori)さんの『こころのナース夜野さん』(小学館)。家庭内で暴力を振るう男性の心理を描いた「暴力をする男たち」や、人を言い負かしたくなる衝動を描いた「パワハラの背景」、育児に参加した男性がなってしまう「男の育児うつ」など、現代社会で起こる心の病はいずれもTwitterで万バズを記録し、話題を集めた。今回は、ナースの夜野さんが初めて精神科に勤務した「虫が来る」を紹介する。



■孤独や生きづらさを心に抱える患者さんの「不安」を少しでも楽にしてあげられたら
虫歯ができたら歯医者に行き、骨折したら整形外科に行くように、心の病気にかかった人のために精神科がある。心の病気について知りたいと精神科勤務になった夜野さんの最初の相談者は、「虫が見える」と言う男性だった。

相談内容は「虫が家に入ってくる」と言う電話。男性のカルテを見ると、統合失調症でクリニックを転々としているという。

彼の不安を取り除くために先輩看護師が考えついたのは、訪問看護。虫に困っているという相談から、夜野さんと先輩看護師は、駆除業者の格好をして男性の自宅を訪れることにした。

統合失調症の症状として挙げられるのが、幻覚や幻聴。虫が見えるのは一例で、体の中を虫が這っているような感覚がすることもある。

著者の水谷さんに話を聞いたところ「本作はほぼ実話です。虫駆除業者に扮するというのは演劇っぽいですが、演劇って大事だと思いました」と答えてくれた。今回の男性は、子供のころからイジメられ、自分の居場所が見出せなかった。

虫が見えることで不安や不調を訴えるのであれば、駆除することで原因を一時的には見えなくしてみようという作戦。虫を駆除することで男性の信頼を得られた夜野さんは、少しずつ彼の過去について話を聞くことができるようになる。

虫が見えると幻覚を患っているように思えたが、共に過ごすことで実は男性はいろいろなことが「わかってるんだ」と夜野さんは思う。もちろん、ケアの方法はその人によって対処が違う。「事実かどうかよりも本人の主観が大事なので、相手に乗っかってみるという方法をとった作品です」と水谷さんは語る。

精神科の先生や看護師は、生きづらさを抱えている患者さんが少しでも楽になるような手伝いをする。その人の話を聞いてあげることで、本人も気づくことができなかった本当のことが見えてくるかもしれない。水谷さんは長きに渡り取材を続けたことについて「当事者のその人だけの言葉をきけた時が一番良かった」と、本作について振り返る。





画像提供:「こころのナース夜野さん」(C)水谷緑/小学館

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