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タザキの投資本案内「株式投資の未来」/通称“赤本”。インデックス、成長株、割安株…すべての投資家必見

  • 2023年4月5日
  • Walkerplus

こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。

その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。本日はジェレミー・シーゲル博士の「株式投資の未来」(日経BP)をご紹介していきたいと思います。その表紙の色から「赤本」とも呼ばれています。

大学受験の「赤本」と言えば、志望大学の過去問を大量に掲載した必読書として知られていますが、この「株式投資の未来」は「投資の赤本」と言ってもいいくらいの必読書だと思っています。

どんな投資スタイルであろうとも、株式投資をする方なら必見の内容が詰め込まれており、ボリュームも満点。今回の記事では、成長株投資の罠、配当の本質、ポートフォリオ戦略などをご紹介していきます。

■成長株投資に潜む「成長の罠」とは
投資で利益を得るには、成長国や成長産業だけに投資すれば儲かるのでしょうか?そう単純な話ではありません。そこには「成長の罠」があります。

1990年台から2000年台初頭にかけての中国とブラジルのGDP成長率と、それぞれの株式リターンの比較は驚くべきものです。

この時代の中国は高い成長を期待されており、その期待は正しいものでした。中国経済は11年間の累積ベースで166%の成長をしました。

一方、その間のブラジルは同じ11年間でわずか22%しか成長していません。1994年にいたってはインフレ率が5000%を超え、実質GDP成長率はマイナスでした。誰が見ても中国経済の未来の方が明るいのは明白で、あらゆる経済指標で中国がブラジルを上回りました。

しかし、株式投資のリターンは全く逆の結果になりました。1992年末に中国市場に投資した1000ドルは、2003年末には320ドルに減っている計算になります。

一方、1992年末にブラジル市場に投資された1000ドルは、2003年には4781ドルに育っていたました。中国市場はもちろん、米国市場をもはるかに上回る成績です。

なぜ、このような結果になったのか。ブラジル株は、元々低かった株価と、高い配当利回りが高いリターンをもたらしたと言われます。

一方の中国株は、過剰なまでの期待値が株価を押し上げており、すでにバブルを発生させていたのです。その後のリターンは、前述の通りです。

株式投資のリターンは、単純に業績の成長率だけでは決まらないという、良い例ですね。それは、一国の株価だけではなく、個別株にも当然当てはまります。ハイテクバブルの5つの教訓は、非常に重要です。

1…バリュエーションはいつも重要
2…買った銘柄に惚れ込んではいけない
3…時価総額が大きく、知名度の低い銘柄は要注意
4…三桁のPER(株価収益率)は避ける
5…バブルで空売りは禁物

マスコミが盛んに取り上げ、誰もが株に興味を持っている時は、関わってはいけません。バリュエーションはどんな時でも重要なのです。

■配当を出すのは非効率なのか
効率性だけを追い求めるなら、配当なんかなくていいのです。

ウォールストリート・ジャーナル誌のコラムの一文では、こう述べられています。

“配当は投資家の目をくらませ、借金漬けで伸び悩む会社、あるいは伸びきった会社の株を買わせる。こうした銘柄はやがて減配となり、下手をすると、投資銀行マンを兼任した調査アナリスト以上に、投資家に火傷をおわせかねない。”

さらに、ウォーレン・バフェットの投資会社、バークシャー・ハサウェイは無配で有名です。バークシャーが配当を支払わない最大の理由は、税金です。あるニュース番組でバフェット氏はこう語りました。

“税金を取られないなら、配当を支払うのも(会社の株主にとって)いいだろう。”

彼のいう通り、配当は受け取ると同時に課税されます。一方、キャピタルゲインは、株式を売却しない限り、課税対象となりません。

再投資による複利運用を考えても、配当で税金を支払った後で再投資するのか、企業が事業に再投資してキャピタルゲインを伸ばすのでは、後者の方が「課税を先延ばし」できるので有利です。

これは単に、税金を支払う「順番の違い」だけの問題ではありません。計算すると分かりますが、税金の支払いは先延ばしする方が、最終的に残る、あなたの資産額は増えるのです。

よって、バークシャー・ハサウェイが無配を貫き、キャピタルゲインで報いようとすることは、非常に合理的なのです。

■配当という信頼の証
配当として外にお金を出さず、事業に再投資した方が効率的とはいえ、完全に合理的なことばかりではないのが経営です。

「エージェンシーコスト(代理人費用)」とは、キャッシュが有り余る企業が特別手当として散財したり、豪華な本社ビルを建てたりするような意味のないコストのことです。

企業が配当を控えることで、キャッシュを貯め込むと、このような無駄なコストに使われる危険性があるのです。ウォーレン・バフェットは、このような落とし穴を避けてきた名経営者と言われます。

また、配当というキャッシュの払い出しは、決算に嘘がないことの証明にもなります。配当が払い出されている限り、事業が決算書通りの黒字であることを、目に見える形で証明できます。

企業が常に合理的に、利益のために行動できると保証できるのならば、配当は重要ではありません。しかし、世の中には会計を誤魔化したり、“クリエイティブな”会計手法を巧みに操る一部の企業が存在します。

その点、「キャッシュ」は嘘をつけません。配当の支払いは、投資家からの信頼の印になるのです。

また配当には下落相場のプロテクター機能、上昇相場のアクセル機能の役割もあります。

下落相場だとしても、配当を再投資し続けていれば、保有株数を増やすことができ、株価が回復する時に一気にリターンを上げるアクセルになります。

また下落相場のインカムゲインは精神的な支えにもなることは、想像に難くありません。

配当の強みは、効率性などではなく、「安心感」や投資家への「信頼の証」であることなのです。

■インデックス投資を上回るD-I-V指針とは
同書の第5部「ポートフォリオ戦略」では、インデックス運用を上回るための戦略がまとめられています。

同書の長期的な調査によれば、インデックス運用を投資のコアにした上で、補完戦略を組み合わせれば、さらに高いリターンを狙えるとされています。

各戦略の頭文字をとって「D-I-V指針」と呼ばれます。

D dividend(配当)
個別銘柄の選定にあたっては、持続可能なペースでキャッシュフローを生成し、それを配当として株主に還元する銘柄を選ぶ。

I international(国際)
世界のトレンドを認識する。このままいけば、世界経済の均衡が崩れ、中心は、米国、欧州、日本から、中国、インドをはじめ途上国。

V valuation(バリュエーション)
成長見通しに対してバリュエーションが適正な株を買い続ける。IPOや人気銘柄は避ける。個別銘柄であれ業界であれ、市場の大勢が「絶対に買い」とみているうちは、買わない。

これに加え、「セクター戦略」も個別銘柄投資の戦略です。

セクターの分類には、「GICS(世界産業分類基準)」を用います。世界の産業を11のセクターに分類しており、世界中で標準化されています。

その中でも長期的にリターンが高いとされているのが、石油(エネルギー)、生活必需品、ヘルスケアです。

石油セクターは、他のセクターとの相関性が際立って低い点が魅力です。その傾向は近年でも見られます。2022年、S&P500の年間リターンが約マイナス20%だったのに対し、バンガード社のセクターETF「バンガード・エナジーETF」は年間で約50%もの上昇を見せました。

国際的な株式市場の相関性が高まっている時代において、このように他の市場と相関性の高いセクターは分散投資をしたい人にとって貴重だと思います。

また、石油というと、ESG投資やSDGsが重視されるような時代の流れに逆行していると思われるかもしれません。

同書が発行された当時でも、再生可能エネルギーの開発が大きく進んでおり、石油の需要は減っていくのではと予測されており、そうだとしても、途上国の経済発展を支えるために石油に頼らざるを得ない状況は変わらないと考えられています。それは今でも変わらないでしょう。

過去半世紀で、特に高い運用成績を示したのが、生活必需品と、ヘルスケアセクターです。生活必需品セクターは、景気に左右されにくいディフェンシブセクターの代表と言えます。

ヘルスケアセクターも、先進国の高齢化を考えれば、今後も需要が減るとは考えにくいです。個別銘柄で保有するリスク(創薬失敗、訴訟、特許切れ)が不安であれば、ETFで保有すると手軽に分散ができます。

最後に、著者の株式ポートフォリオ配分例を載せます。最適な配分は、市場の状態と、投資家それぞれのリスク選好度によっても変わります。

・ワールドインデックス:50%
 ┗米国株 30%
 ┗非米国株 20%
・リターン補完戦略:50%(各10-15%)
 ┗高配当戦略
 ┗グローバル戦略
 ┗高配当戦略
 ┗高配当戦略

■株式投資のバイブル本になる骨太な1冊
インデックス投資を学び、さらに高度な投資に挑戦したいと思ったら、まずおすすめしたいのがこの1冊です。インデックス投資をベースにしつつも、そこにどのような戦略を加えていけば良いのか、さまざまな戦略を豊富なデータを元に解説しています。

ジェレミー・シーゲル氏の本では、この赤本の他に「緑本」と呼ばれる「株式投資 第四版」も有名ですが、どちらかと言えば、そちらの方がより基本的な内容かと思います。もし赤本が難しいと感じたら、緑本から読み進めても良いでしょう。

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